M二六 勢いと冷静さ
『ピリ~ピー、ピッピ~ピリ~…』
突然麻梨子の携帯が鳴った!二人は我に返り体勢を崩した。
麻梨子は慌てて携帯を手に取った。舞衣からだった。
「ごめん!!」
電話に出ると開口一番麻梨子は謝った!
『お姉ちゃん何してるの?夕飯先に食べてるよ』
「うん、友達とカラオケ」
傍に居る柊と電話の向うの舞衣を気にしながら嘘を吐いた。
柊は電話の相手が麻梨子の親からだと思っているので、麻梨子の心配に反して柊は電話の会話は気にしていなかった。
『まだ帰らないの?』
「うん、あと少しで帰るから」
『そうなの?分かった。』
「ハイ、じゃあ」
おどおどと電話を切る麻梨子。
それを見ていた柊は、
「遅くなったな…家まで送るよ」
もっと柊と一緒に居たかった麻梨子だったが、
「ありがとっ」
明るく言った。
そして、麻梨子の家の前に着いた。
「今日は本当にありがとう」
笑顔で麻梨子は言った。でもまだまだ柊と一緒に居たい!そう思う麻梨子は続けて、
「…良かったら上がっていかない?一緒に夕食でも…」
言った後で、これはいくらなんでも!と悟った麻梨子。
「いっいや、今日はもう遅いし…帰るよ」
動揺しながら断るも悪い気はしていない柊。
案の定断られた麻梨子。しかしその反面ほっとした部分もあった。勢いで誘ってしまったとはいえ、冷静に考えればいざ柊を家に上げてからの事はまったく考えていなかったから。
「そう…また明日ね」
断られた事による残念な気持ちと、失言だったか?という後悔の念で少し沈む。
「ああ…」
そう言って柊は麻梨子の家を後にした。