M二五 もう一つの心
「やさしいのね…」
麻梨子は柊に言った。
その瞬間、麻梨子自身も知らなかった“もう一人の朝倉麻梨子”が麻梨子の心に現われた!
それはこの素晴らしい男性を他の人に渡したくない!という強い気持ち。
次の瞬間もう一人の麻梨子がとんでもない事を言った。
「名前も知らない…告白もしてないっていう事は、その人とはまだ恋人関係じゃないって事よね?」
(何を言ってるの私!!)
麻梨子自身も驚く事を言ってしまった!
「え!?…うん」
あからさまに『何言ってるんだコイツ!?』という表情で柊は答えた。
すかさず麻梨子は、
「じゃあ、その人と恋人同士になるまで私を恋人にして!」
もう一人の麻梨子はまたとんでもない事を言った!
決して麻梨子は多重人格ではなく、“もう一人の麻梨子”は柊了希を好きという抑え切れない想いの表現。
麻梨子はその気持ちを抑え込み、ようやく自我を取り戻した。
そして麻梨子は先の自分の発言を受け止め言った。
「こんな事を言うとおかしな女だと思うでしょ?そう思われても良い…自分でもおかしいと思うもの…でも、もう自分でも抑える事が出来ないほどあなたが好き!…愛してる」
麻梨子はその言葉にこれまでの自分の想い総てを集約させた。
それを理解し、朝倉麻梨子という女性を知った柊は。
「あ、朝倉は…それで良いのか?」
訊いた。
柊の言葉に麻梨子は、
「うん…」
言って、柊の胸に抱きついた。
ずっとこうしたかった…。拒否されてもいい。そう覚悟し麻梨子は柊に抱きついた。
すると、柊はそっと麻梨子を包んだ。
(うれしい…ありがとう、柊君…)
麻梨子は例えこれが思いやりや、仕方なく自分を受け入れてくれたのだとしても嬉しさと感謝の気持ちでいっぱいだった。
「わかった…それで後悔しないね?」
柊はそのままで麻梨子に確認した。
「うん…」
麻梨子は嬉しさを目一杯顕わせて言った。そして、
「もう少し…このままで…」
麻梨子のリクエストした。
そんな麻梨子の我儘に柊は無言で応え、優しく、そして強く、麻梨子を抱きしめた。
(ずっと、こうしていたい)
麻梨子は心地良さの中で強く思った。