M一 プロローグ
前日は花冷えの一日で咲きかけていた桜の花も凍えていたが、今日は一転して暖かい春の陽気に包まれている。
「あ~、何か緊張する~。また一緒のクラスだと良いのに…ね、麻梨子!」
「うん、そうね…」
学校の玄関前に張り出された三年生のクラス割り表の前で二人の女子が話している。
「あっ!あったわよ麻梨子」
「え!?」
「ほらっG組に朝倉麻梨子って」
「本当だわ、それに美夏!一緒のクラスよ」
互いに互いの名前を見付け合う。
「良かった~。麻梨子、また一年間よろしくね」
「うん、こちらこそよろしくね、美夏」
手を取り合って喜び合う朝倉麻梨子と水野美夏の二人。
(そうだ!)
急に思い出したように麻梨子はG組の男子の欄を見た。
(あった!ウソみたい…一緒のクラスに…)
麻梨子は三年G組の男子の欄である名前を見付けた。
“柊 了希”
麻梨子が中学二年の時から片想いをしている男の名前。
(あ!)
もしかしたら傍に居るかも!と思い周囲を見渡してみたが、柊の姿は見えなかった。
「どうしたの?」
その麻梨子の動作を水野が不思議そうに問う。
「え!あっ誰か知り合いが居ないかなぁって」
「ふ~ん」
麻梨子の返答にあまり納得していない水野。
(柊君と同じクラスになれた…)
その日の夜。麻梨子は三年前、中学二年の時の集合写真を手に取りその当時を思い起こし始めた・・・。