六不思議目 廃校のパイ
この瓦礫の山と化した廃校の元校長『七宝』は、あるビジネスを始めようとしていた。彼の計画は校長に就任した当時から始まっており、それから学校が無くなるまではただの準備期間に過ぎなかった。
彼は校長室の真下に温泉が眠っていることを知っていた。独自に調査した結果だ。
彼は学校を取り壊し、ここを温泉地にすることを考えた。しかし、ただの温泉では儲からない。そこで彼は考えた。その結果、良い効力のある温泉にしようということになった。
さていつから始めようか、と彼は悩んだ。悩んだ末に、08年に1度発生する『おっぱい豪雨』の日に学校を爆破して壊すという結論に至った。
そして先週、彼が校長に就任して5年。ついにおっぱい豪雨が発生したのだ。その日のうちに学校を爆破した七宝は、温泉地計画に向けていろんな業者と話し合いをしている。
七宝小学校跡地には、たくさんの肝試し小僧が訪れる。先週556人が亡くなった廃校だ、出るに違いない、と思った全国の小僧がこぞって駆けつけたのだ。
普通なら遺体の捜索などで数週間にわたり立ち入り禁止されるはずだが、ここの生徒は全員体育館で亡くなっていたため捜索する必要がなく、立ち入り禁止にもなっていなかったのだ。
「お前が1番な!」
「ひぃ、僕こわいよぅ」
「ガタガタ抜かすな! 早く行ってこい!」
黄色い服にまん丸メガネの小僧が、オレンジ色の服のガキ大将らしき大小僧にいじめられている。
彼らもここへ肝試しに来たようだ。まあ肝試しと言っても、ただの瓦礫の山なのでどこにいてもお互い見えるのだが。
ぐにゅ
小僧がなにか柔らかい物を踏んだ。
「暗くてよく見えないよぉ〜! でもいつものように犬のフンを踏んだんだろうなぁ〜!」
そう言った瞬間、ドカン! という音を立てて足もとの地面が爆発した。そう、彼が踏んだものはおっぱいだったのだ。
「のび太ぁー!!」
ガキ大将が叫んだ頃にはすでに彼の姿はなくなっていた。いや、彼の姿はある。ただ、彼だったものという表現になるだろう⋯⋯いわゆる元カレだ。
「のび太の仇ー!」
そう言って瓦礫の山に突っ込んで行くガキ大将。当然ドカンだ。今週だけで肝試死者690人。先日のおっぱい豪雨と合わせると実に1246人だ。
「ふふふふふふふ」
斜向かいのコンビニから出てきた猫のような見た目の生き物が笑っている。この学校の元校長だ。
「いっぱい死んでくれたねぇ。そろそろ始めるかねぇ」