三不思議目 プールの怪
「この五目ごはん、食パンの味するンゴw」
そう叫んだのは5年2組の被呪 輝夫だ。給食に出た五目ごはんをひと口食べてこの言葉を発したのだ。
「は?」
金髪ギャルの田比丘 美久が不思議そうな顔をして言った。この子は先生のお気に入りなので金髪でも怒られないらしい。
「食べてみてクレメンス! ズズ⋯⋯あっ! 味噌汁も食パンの味ぃいい!」
「は?」
もはや呆れて「は?」以外の言葉が出なくなったようだ。そう言いながらも美久は言われた通り五目ごはんを口へ運んだ。まあ給食なので言われなくても食べるのだが。順番の問題よ。2ちゃんねらーが私の食べる順番を決めるなんぞ100年早ぇわ、といったところだろう。
「普通の五目ごはんじゃねーか。あと、次変な喋り方したら殺すからな」
「分かったンゴwww」
というわけで、本人の合意により輝夫は殺されることとなった。美久は着替えるため、更衣室へ向かった。
「それにしても、牛乳も食パンの味なんやが⋯⋯」
これがクラスの皆が聞いた輝夫の最後の言葉だった。
「先生、0組の鍵ください」
「また殺すのか」
「いかにも」
この学校には各学年ごとに拷問部屋が用意されており、生徒同士の拷問が許可されている。しかし美久にとっては拷問部屋とは名ばかりで、実質殺人部屋である。
美久は5年0組の教室へ輝夫を連れて入っていった。
「う、うぎゃぁぁぁぁああああ、ああんっ」
輝夫の断末魔が世界中に響き渡った。教室から出てきた美久の後ろを、真っ白なマネキンが歩いている。このマネキンには1%の輝夫の魂と、99%の清い魂が入っている。
「さて、貴重なランチタイムを2分も無駄にしちゃったわ。早く食べましょ」
「はい、かしこまりました」
何事も無かったかのように席に座る2人。今日のメインのおかずは輝夫の大好物のハマグリだ。他のものは食パンの味しかしなかったので、ハマグリに全てを賭けるとのことだ。
「パクリ⋯⋯これも食パンの味がします。非常に残念です」
やはりハマグリも食パンの味のようだ。
「もしかしてあんた、夜にプール行った?」
美久が輝夫に訊ねた。
「ええ、昨日の夜行きましたけど」
「やっぱりそうなのね。夜のプールの水を50リットル以上飲むと、何を食べても食パンの味しかしなくなるのよ。そして、その呪いはもう解けない」
そう、昨日の夜輝夫はプールに忍び込み、約1410リットルの水を飲んだのだ。ずっと食パンの味しかしなかったのは、夜のプールにて暴飲をはたらいた罰を受けていたからなのだ。
「なぁんだ」
輝夫は安心したように呟いた。
「理由が分からないと不安になりますが、昨日の晩酌が原因だと分かって安心しました」
それから2日が経った。今日もまた、美久と輝夫は同じ班で給食を食べている。
「やっぱ食パンの味しかしないンゴwww呪われてるおw」
そう言う輝夫にマネキンの面影は1ミリもなく、99%の清い魂を取り込んだ100%の輝夫になっていた。