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女子会に苦無を忍ばせ

 とは言ったけどどうしようかな……。


 同期の前なので大見得を切って楽屋を出ていったが、現状運営に報告するぐらいしかやることが無い。想像以上に私が出来ることは限られていてもどかしい。


 そうこう考えている内に私はスマホで瀧川さんに通話をかけることにする。瀧川さんは数コールの内に出てくれた。




『もしもし? 何かありましたか?』


「瀧川さん。結構深刻な話があるのですが……」


『そうですか……、確か秋津さん今本社で収録終わってますよね? 今仕事の都合で本社に居ないので近くのカフェで話しましょうか。LINEで場所送りますので』


 瀧川さんは私の考えを見通すように対応してくれた。


「ありがとうございます」


 通話を切り、瀧川さんから送られてきた場所に足を運ぶ。




 カフェの場所は本社から徒歩約十分ぐらいのところにあるのだが、近場にこんなにオシャレなカフェがあったのかと驚いた。そのカフェは建物単体だけでもインスタ映えしそうなオシャレな装飾が施されていた。


 店内に入り店員に後一名来る旨を伝え先に席に座る。


 店内は壁掛けの観葉植物や木張りの床でコンクリートジャングルの東京にあるオアシスのようだ。店内にかかっているジャズがシックな内装とマッチし不思議と落ち着ける。昼頃の利用客は少ないのか店内には私と数名の利用客しか居なかった。


 私はロイヤルミルクティーを頼みスマホをいじりながら時間を潰していた。




「すみません……。ちょっと仕事が長引いてしまいました」


 カップを一杯飲み終えたあたりで瀧川さんが来てくれた。


「いえいえ! 私から呼びましたし謝ること無いですよ!」


 急いで来てくれたのか少し呼吸が乱れていた。


「何か頼みますよ。ここのカフェ今の時間帯は人が少なくて休憩にはもってこいなんです。おまけにここのケーキはどれも絶品なんですよ!」


 普段見せないような目の輝かせ方をさせて瀧川さんの乙女な部分が垣間見えた気がする。


 さっきドリンクを頼んだ時に少しメニューを見たが、どのケーキも本当に美味しそうだが目が飛び出る程の値段なのだ。


「でもこのケーキものすごく高いですよ……?」


「大丈夫です。経費で落とします」


「したたかですね……」


 多分というか絶対この好きな物のためなら何でもするタイプの人だ……。


「それじゃあ……、このショートケーキで」


 とは言ってもこんなに高いケーキなんて私の人生でそう多く食べられないので頼んでおいとく。






「それじゃあ電話で言ってた話に入りましょうか」


 頼んだケーキも運ばれ、瀧川さんも仕事モードの顔つきになった。


「あの……、その話より先に言っておきたいことがあるのですが……」


「何でしょうか?」


「気づかないふりしてましたけど……、どうして新実さんが居るのですか?」


 私が目を向ける先にはケーキを三つも頼んだ新実さんが美味しそうにケーキを食べている姿があった。


「ん? どうぞどうぞ、私はケーキを食べる事に集中したいから居ない者として扱ってどうぞ」


「いやいやそう言われて『分かりました〜』って言う人の方が少ないからね!」


「ナイスツッコミ!」


「やかましいわ!」


 あまりにも自然に居たのでスルーしていたが何故かこの場に新実さんが居るのだ。


「あ、ごめんなさい秋津さんに言ってなかったですね。ちょっと新実さんの歌ってみたの収録に同行してました。彼女のマネージャーが熱を出して今日来れなくなってしまったので、一人スタジオに残すのもなんですので連れてきてしまいましたが大丈夫ですか?」


「そういう事ですか……。まあ同期にも話しておきたかったので丁度いいですけど……」


「ん〜? 何々〜?」


 ケーキを食べる手を止め、新実さんも私の話に耳を傾ける。


 それから私は今日起こった出来事を二人に話した。




「そうですか……」


「ふーん……」


 一人は深刻そうに、もう一人は怒りを滲ませていた。  


「とまあこれが私が話したかった事です……」


「申し訳ございません。我社の社員がそのような事を……」


 瀧川さんはすぐに謝った。


「取り敢えずこの件を警察に通報しませんか?」


「はい……、しかし……」


 瀧川さんは何か言いたそうにしている。


「しかし?」


「実はその社員なんですけど……。所謂コネ入社なんです……」


「コネ入社? どういう事ですか?」


「はい……。あの社員は我社の株を一部持っている、俗に言うお得意様の息子なんです……」


「ふーん……。この会社はタレントより株主の肩を持つんだ」


 新実さんから鋭い指摘が飛ぶ。


「そんなことはありません! しかし、私の立場では裁量不足ですので我社としてはこの件は一旦上に相談する形になります……」


「相談? どうして? こんなの普通の会社だったら速攻警察に突き出すと思うんだけど? タレントよりそのマネージャーの方が大事なんですね?」


 新実さんが瀧川さんを糾弾していく。


「ちょっと! そんなに言わなくてもいいじゃん!」


「申し訳ございません……」


 瀧川さんはただひたすらに謝っている。


「ちょっと新実さん! 瀧川さん困ってるじゃん。一旦落ち着こう?」


「落ち着けるわけ無いじゃん! それじゃあ沙羅はどうなのさ? 同期が犯罪行為にあってるのに見て見ぬ振りをするの?」

 

 新実さんが感情的に反論する。


「そっそんな事一言も言って無いじゃない!」


 新実さんの言葉におもわず声を荒らげてしまった。


「取り敢えずね……」


「何よ……」


 私たち二人の間に険悪な空気が流れ始めた。


「あの……、ちょっと意見いいですか?」


「どうぞ」


 今の空気に臆せず瀧川さんが切り出した。




「私個人の意見としましては彼の態度には辟易しております。コネ入社ですので能力も低く横暴で、今回百合草さんのマネージャーになれたのも彼が入りたいと言っていたので特別にマネージャー職になったのですがまさかタレント目当てだったとは思いませんでした……。彼の親は我社の株を多く所有している株主です。現状彼をリストラすることは我社の生命線が切れることを意味します。これは我社の存続に関わることですのでご理解お願いします……」


「まあ理解は出来るよ? でも野放しにするのは許せない。分かるよね?」


「承知しております」


「つまり会社としてはあいつをリストラしたくない、でも私はあいつを会社から追い出したい。そういう事だよね?」


「はい……」


「だったらさ……。一つ提案があるんだけどいいかな?」


 自信に満ち溢れた策士の顔で言い放った。


 私はこの時の新実さんの言葉を一言一句覚えている。この件で私は新実さんの事を真の意味で理解したのであった。

最近サブタトルが適当になっている気がする……。。こんにちは490です。


どうやら四章は三部構成になりそうです。次話の解決編は来週ぐらいにあげられたら良いな……。


最後にこの物語を読んでくれている読者様に最大限の感謝を。

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