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俺の個性

 三分程館内を歩くと最初に赤と青の暖簾が見えた。歩みを止めて周りを見ると昔ながらの温泉宿で木製の壁と床、脇を見ると卓球台や牛乳の自動販売機が置いてあり、どこか懐かしさを感じる作りだ。


 青い方の暖簾をくぐりスリッパを靴置きに入れ、脱衣所手早く服を脱ぎようやく温泉とのご対面だ。湯けむりの先には宿泊者が二・三人いるのみだ。大きな内風呂が見え薄いエメラルドグリーン色の温泉に今すぐ入るのぐっとこらえ、まずかけ湯と体を洗い改めて温泉に入っていく。


 


 「あぁ〜」


 


 思わず声も出るくらい気持ち良いお湯だ。


 温泉などは久々に入ったが普通のお湯とは一線を画する。まず体が温まり方がぜんぜん違う体の表面では無く体の芯から温められているかのように体がポカポカしてきた。肌を擦ると肌がすべすべになっている。


 今度近所の温泉銭湯にでも行こうかな・・・・・・。


 そう思う程にこの温泉は気持ちいぃ。


 次に外風呂にくり出していく。外風呂には俺以外の宿泊者はおらず、ひんやりとした外気に肌を刺激されながら石の床を歩くと左手には内風呂とは違い周りが岩で覆われ、床は少し荒く研磨された石がはめられていた。そして何よりも目を引くのは四本の柱で支えられた屋根が大きな存在感を醸し出している。奥の方を見ると成人男性でも余裕をもって入れる程の直径を有する三つ壺風呂が鎮座している。


まずは最初に目についた屋根付きの風呂に入っていく。


 お湯自体は内風呂と大きな違いは無いのだが、柱から香ってくるヒノキの匂いに鼻孔をくすぐられる。さらに壁に背を預けるとゴツゴツとした岩肌が背中に当たり、まるでマッサージのように背中を刺激してくる。吹いてきた風に火照った顔があたり頭だけサウナに入った後のように整った錯覚させ起こさせ、内風呂とはひと味もふた味も違う体験をさせてくれる。


 (後五分・・・・・・)


 少しのぼせ気味になっているがもう少しだけ温泉に入ろうとしていると、隣の女風呂から聞き知った声が聞こえてきた。


 


 「アリス!結局あの人とはどんな関係なの?彼氏?彼氏なんでしょ!」


 「ちっ違うし!あき君はいわゆるパートナーだから!決してそんな関係じゃなから!」


 湯けむり漂う温泉浴場。竹の壁一枚挟んだ向こうで、秋津さんが俺の事を話しているらしい。


 あいつも大変そうだな・・・・・・。


 どうやら茜に俺たち二人の関係を問われているようだ。


 「嘘つけ〜。新幹線とか動物園でアリスとあきを見てたけどすっごく仲良かったじゃん!普段私達にしか見せない顔だってしてたし。火夜ねえに聞いても詳しい事全然話してくれないし。そこんとこ詳しくオナシャス!」


 壁を一枚挟んでいるのにも関わらず隣の男風呂にまで聞こえてくる辺り、相当俺たちの関係が気になるようだ。


「いや〜・・・・・・でもね。話すのに少し時間かかるよ?」


「それでもいいからさ!」


  「それじゃあ話すよ?まあ話と言っても一昨日のにあった出来事なんだけどね・・・・・・」


 それ以降は声を潜めて話しているのだろうか、こちらがいくら耳を澄ましても二人の話し声が聞こえることは無かった。すでに長い時間温泉に入っているので俺は少しのぼせ気味の体を引きずりながら脱衣所へ向かった。




 ポンと音をたてながら瓶から蓋を取り、キンキンに冷えた中身を風呂上がりで乾いた喉に流し込む。甘い牛乳を舌で感じ後追いでほんのり苦いコーヒーの風味が口の中に広がっていく。冷たいコーヒー牛乳が火照った体に染み渡る。


 やっぱり風呂上がりはこの一杯に限る。俺は銭湯や温泉で牛乳の自動販売機を見つけると風呂上がりには必ず飲む程には大好きだ。それで親が連れて行ってくれた時にはよく牛乳を買ってくれとねだったものだ。


 幼少期の頃を思い出し自分の成長に少し嬉しさを感じつつ、あの頃はもう戻ってこないことを実感しやけにコーヒーの苦い後味が長く口の中に残った。




温泉で一息ついたところで、マネージャーさんが言っていた通り夕食会場の新春の間へ足を運んでいる。夕食の時間の三十分前にはついたがどうやら先客がいるようだ。


 「明さんこんばんは」


 「あ・・・・・・、こんばんわ・・・・・・」


  靴を脱ぎ、襖を開けると淡い黄色の浴衣を着ている鹿野さんと百合草さんがいた。


百合草さんは駅で茜と一緒にいたり、配信上でも一緒にのことが多いのだが鹿野さんといるのは少し以外な組み合わせだ。


 「こんばんは。なんか来るの早いですね?」


 「驚きました?昔からの癖なんですよね。私いつも集合時間一時間前とかに着いちゃうんですよ。今日は鹿野さんを巻き込んでしまいましたが・・・・・・」


 「いえ・・・・・・、別に迷惑とかではないですよ!久しぶりに対面で会えて嬉しいですしやっぱり対面の方が話が盛り上がりますし!」


 同期と久しぶりに話せたのか鹿野さんの声が少し嬉しそうに聞こえる。


 「そう言ってくれると嬉しいです。また今度コラボ配信しませんか?」


 「良いですね!」


 「親子かな・・・・・・?」


 二人の微笑ましい姿を見ていたらふと思ったことが口からこぼれ落ちてしまった。


 「うぇ?」


 「ふふふ、面白いこと言いますね?」


 「ちょっと二人の姿を見てたらポロッと出たといいますか何というか・・・・・・。二人の姿を見たらそう見えたと言いますか配信で二人のこんな絡みとか見たことなかったのでちょっと意外でした」


 「実は私達配信外では仲が良いんですよ〜。ほら鹿野さん何というか庇護欲を掻き立てるじゃないですか」


 「分かります」


 「まさかの即答!」


  大人しい印象を受けた彼女が言わないような鋭いツッコミが炸裂した。


 「親子ですか・・・・・・、確かに言い得て妙ですね。明さんが言うまで気づきませんでした」


 「私もです」


 「流石切り抜き師さんですね、明さんは。その人も知らない個性でさえも引き出してしまう」


 「そうですか?俺は特に思ったことを言っただけですが・・・・・・」

 「それが明さんの良いところですよ。まだ一日足らずの仲ですがこれだけは言えます。VTuberとして太鼓判押してあげます」


 「私もそう思います。akiさんが切り抜きをあげてくれなかったら今ここ居ないです」


 その人の知らない個性を引き出すか・・・・・・。


 「まだよく分かりませんがありがとうございます。少し自分の可能性に気づきました」


 よく分からない、しかし不快ではない感情がぐるぐると心の中で渦巻いていた。

こんにちは490です。


最近この小説をDiscordで見せたのですがボロクソに誤字修正させられました。


今回は筆の乗りがそこそこ良かったです。なんと一から書いて約一週間でかけました。少し自分の作家力が上がりましたかね?てか前回主人公に立ちはだかるのは!?とか書いたくせに主人公に何もなかったですね。はい・・・、次には必ず・・・期待して下さい。


この物語を読んでる全ての人に最大限の感謝を

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