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切抜き師aki


 「こんばん桜〜、エクスペリエンス所属二期生桜庭(さくらば)アリスです。花びらの皆〜今日もよろしくね」


 可愛らしい声と共に配信が始まった。


 「今日はサムネにも書いてある雑談をしていくよ〜」


 画面を見ると、ソメイヨシノのような淡いピンク色の髪月山錦(がっさんにしき)のような黄金の黄色い目、髪には桜の花弁の髪飾りチャームポイントになっている。衣装は様々な所に桜の花弁の模様が書かれた服を身に纏っており、まさに桜から生まれた絶世の美女少女が話している。


[こんばん桜〜] [今日も楽しみにしてました!] [開花宣言10000円]



 コメント欄を見てみると花びら(彼女のリスナー)が思い思いにコメントをしており、中にはスーパーチャット(投げ銭)をしているリスナーもいたりしてコメント欄は見ているだけでも賑やかだ。


 「今日も私の配信に来てくれてありがと〜!今日はとっておきの発表があるから最後まで見ててね〜」

 口を開くと活発で可愛らしい、まるで桜を見ているかのように彼女の配信に目が話せなかった。




 桜が散ってしまうかの如くあっという間に時間が過ぎ去り配信も終わりに近づいてきた。


 


 「今日の配信はこれで終わりです。今日も見てくれてありがとう。それじゃあ、おつ桜〜」

 終わりの挨拶と共に『配信を見てくれてありがとう!』と書かれたED画面に切り替わった。


 「やっぱり俺の推しは今日も可愛いなぁ〜」

 約一時間の配信が終わり俺は配信を見た多幸感を独り言と共に吐き出した。普通のリスナーならここで別のvtuberを見るか寝るかのどちらだろう。しかし俺は違う。


 「よし!今日も推し活頑張るぞい!」


 独り言でやる気をあげ、俺は予め録画しておいた彼女の配信を編集し始める。カット編集やSEの挿入、テロップの表示、仕上げにOPとEDを入れ完成した動画を俺は動画投稿サイトwetubeに上げた。

 

 俺が今何をしているかって?切り抜きだ。


 昨今、vtuberがその人気を急速に伸ばしている。vtuberとはwetube上で2DCGを使い生配信をする人達のことである。中でもトップvtuberと言われる人達はスパチャで一億円以上稼ぐ人もいるほど、今波に乗っている注目コンテンツだ。

 

 そして、その人達の配信を切り抜き動画化しているのが俺たち切抜き師だ。俺も本名の織本明(おりもとあきら)をもじって、切抜き師akiとして活動している。俺の切り抜きは主にさっきも見ていた桜庭アリスの切り抜きを中心に上げ、最近チャンネル登録者が十万人を突破した。俺の切り抜きは本人にも認知してもらえるほど有名になってきており、俺の動画が推しの目に入っている事を考えるとニヤケが止まらない。


 「もうこんな時間か・・・溜まってた録画も編集するんじゃなかった・・・」


 時計を見ると針は午前一時を指していた。流石に明日も学校があるのでもう寝ることにした。


 

 


 「今何時だ?」


 重いまぶたを開き時計を見ると針は午前八時を指していた。


 「やっば!」


 「父さんなんで起こしてくれなかったの!」


 俺はリビングのドアを勢いよく開けながら言った。


 「どうしたんだ明?もう高校生になるんだから自分一人で起きられなきゃだめだぞ」


 そんな正論を言いつつ父さんはトーストの乗った皿を俺に差し出してきた。


 「これだけは食べていきなさい」


 「ありがとう」


 そんな母子のようなやりとりをしながら俺は玄関を飛び出した。




 私立秋草(あきくさ)学園、これが俺の通う高校だ。この学校はスポーツ強豪校で体育会系と文系どちらの部活も軒並み強い。特にサッカー部が強く数々のプロサッカー選手を輩出している。

 

 勉学の方は高等部と中等部がある。偏差値は中堅と言ったところで、進学率先の大学もそこそこのなんとも言えないような感じだ。


 「てっ、そんなこと現実逃避してる場合じゃねぇー!」


 軽い現実逃避をしながら校門をくぐり一年五組の教室に駆け込んだ。


 


 「おはよう、あき」


 呼吸を整え一時間目の準備をしていると斜め後ろから声をかけられた。


 「おはよう、秀」


 彼の名前は秀庄司(ひでしょうじ)。俺のクラスメイトだ。秀は幼稚園の頃からの幼馴染で今もこうして仲良くさせてもらってる。俺が切抜き師として活動していることを知っている数少ない友人でもある。


 「急いで来てたけどまた編集のせいで寝坊したのかい?」


 「まあな、結構録画が溜まってたから昨日一気にやったんだよ」

 まだ思い瞼を擦りながら言った。

 

 「大変そうだね」


 「まあな、でもあれもこれも全部秀の支えが無かったらできなかったと考えると感慨深いものが……」


 「あきが一生懸命頑張ったからだよ、最近本人にも知られて有名になってきたじゃないか」


 「いやー本人にも知ってもらえた時は本当に嬉しかった。これも秀が俺に編集技術を教えてくれたおかげだな、今度また編集教えてくれないか?」

 

 「ジュース一本奢ってくれたらまた教えてあげてもいいけど?」


 「仰せのままに秀様」


 「あきはいつも大げさなんだから」

 

 秀は俺に編集技術を教えてくれた師でもあるのだ。秀自身は機械音声を使い動画を作成するゆっくり実況者であり、登録者は二十万人を突破した今勢いに乗っているゆっくり実況者だ。


 中学三年生時に編集アプリの使い方や編集のコツなどを教えてくれ、今じゃ切り抜き動画の再生数が五十万回を突破したりと秀が教えてくれなければ今の切り抜きは作れなかった。



「おはよう、あき!秀!」


 教室の扉を開け勢いよくこちらへ来た少女に挨拶された。


 「おはよう、美穂」


 「おはよう、今日も朝練?いつも大変そうだね」


 秀がその少女に話しかける。


 「いや〜大変だよ。私、朝の六時半に家出たんだよ」


 少女は疲れたように伸びをしていた。




 この体育会系ハツラツ少女は千草美穂(ちぐさみほ)。美穂も俺達と同じ小学校出身で秀と同じく俺が切り抜き師であることを知っている一人だ。ハンドボール部に所属しておりいつも朝早くから朝練に行っている。


 「ところであき、また寝坊?目の下に隈ができてるよ。どうせあきのことだから、また編集でもして夜更ししたんでしょ。しっかりと寝なきゃだめだよ」


 「分かってるよ・・・」


 「はは、あきは美穂いつも頭が上がらないよね」

 秀が軽く笑いながら言った。


 「だって、私があきを育てたと言っても過言じゃないからね」


 「いや、過言だろ…、と言うかお前のその発言のせいでクラスで夫婦とかで呼ばれるようになったんだからな!」


 「いや〜良いじゃん、夫婦〜」


 「暑苦しい、離れろ」


 美穂が俺にすり寄って来たので無理やり引き離そうとしたが、体育会系特有の暑苦しさで離れられない。


美穂とは小学生の頃から家族ぐるみでの付き合いをしていて、父の帰りが遅い我が家では千草家にお邪魔して夕食を共にしたことは少なくない。我が家では美穂と秀と一緒にテレビゲームをしてくれて、家での孤独な時間を埋めてくれた。その恩もあって二人にはいつも頭が上がらない。


 


 「二人共、もうすぐでホームルーム始まるよ」


 そうこうしているうちにホームルームの時間になったようだ。秀の一声で俺達の会話はそこで一旦お開きになった。

後書き


最近の小説を見ていると切り抜き師が主人公の小説が無かったもので、せっかくなので書いてみました。正直に言ってVtuberファンの皆さんなら1度は考えたシチュエーションでは無いでしょうか?まだ、肝心のVtuberが出ておりませんが、気長にお待ち下さい。

もしかしたら解釈違いなどがあるかもしれませんが、VTuberファンの素人筆者が書いているのでそこはご了承下さい。


11月17日 小説の添削をおこないました。

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