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80.兼継・好感度稼ぎイベント

「すごい! 越後にはこんなに綺麗なところがあるのね!」


 桜姫が嬉しそうに満開に咲いた純白の花弁を見上げている。

 盛りを過ぎた夏桜(なつざくら)は、風が吹くたびに吹雪のような花びらを散らしていた。


 夏桜は、春の桜と違って色が白い。

 透けそうな純白の花びらは光が舞っているみたいで、本当に綺麗だ。


「喜んでいただけたなら何より。これは越後の山中でしか見られませんから」


 兼継殿が穏やかに微笑んでいて、私はちょっとほっとした。

 ……昨日お願いした時は、本当に嫌そうだったから。



 ***************                ***************


「私は忙しい。夏桜が見たいのなら、土地の者に案内させよう。明日の朝四つ(午前10時)あたりにでも迎えに行かせる」


 兼継殿の返事はにべもない。


「桜姫が夏桜を見たいって言っているから 連れて行って欲しい」

 そうお願いしたら、そりゃあもう、けんもほろろに断られた。

 兼継殿は「雪村は桜姫が好き」と思っているから、雪村に遠慮しているのかも知れない。

 でも本当にそうじゃないんですよ。前にも言ったのになあ。


 仕方がないので、私は少し説得の方向を変える事にした。

 モブ案内役の好感度(かせ)ぎしている場合ではありません、貴方ですよ貴方。


「兼継殿、私は今このような身体ですし、何かあった時に、姫をお守りし切れる自信がありません。案内役の方もとなれば尚更(なおさら)です」


 だから『男』で『武将』の貴方に案内を頼みたいんですよ。

 しかし兼継殿は、こめかみを押さえて大きな()め息をついた。


「越後領内に怨霊は出ないぞ。だがお前がそう言うのであれば仕方があるまい。体調が戻るまでは付き添おう」


 いや、私に付き添ってくれと言っている訳では……


 と、言いたかったのに「その話はもう終わり」と言わんばかりに、そっぽを向かれてしまったので、それ以上は言えなくなった。



+++


 そんな感じだったから、結局私もついてくる事になったんだけど、桜姫と兼継殿が穏やかにやりとりしているのを見て、心底ほっとした。

 ではここは若い者ふたりに任せて、邪魔者は退散するとしますかのう。


「途中に茶屋がありましたよね。せっかくですからお花見しましょう。団子を買ってきます」


 私はふたりの返事を待たずに、急いでその場から離れた。



 ***************                ***************


 のんびりと時間を潰して お団子を買って戻ったら、兼継殿と桜姫が見つめ合って立っていた。

 雪みたいに降り注ぐ花びらと(あい)まって、美男美女は絵になるなぁ。


 ……死ぬほど空気が凍っているけど。


「ど、どうしたんですか!?」


 慌てて駆け寄ると、桜姫と兼継殿が 同時に振り返って微笑んだ。


「別に?」


 何があったのかは知らないし、聞くのが怖いから聞けないけど。

 私は二人きりにした事を とても後悔した。


 恋愛イベント、進められるのかな、このふたり……。


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