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379.エピローグ ~信濃~
「何だか、長い夢を見ていた気がする」
ぼんやりと呟く六郎に、小介と根津子は顔を見合わせた。
「六郎ってぇ、結局、最後まで気付かなかったのねぇ」
「ホントホント。まあ、気付かないまま衆道に移行しなくて、よかったっすよ」
「? 何の話だ?」
くすくす笑った根津子が 空を見上げる。
そうしなければ、涙が零れてしまうとでもいうように。
「きっとこれが、あの方が望んだ世界なのね。でもあたし……『雪村さま』が大好きだったの。……寂しいわ。すごく、すごく、寂しい」
小介も六郎も何も言わないまま、黙って庭先に視線を向ける。
そこには彼らの主君と、少し前より背が伸びて、少し前より髪が短くなった『元・主君』が談笑していた。




