表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

348/383

348.異世界・関ヶ原2

18禁ゲームの内容についての描写があります。

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

 

「真木は上森につく。当たり前じゃないか。真木は信厳公(しんげんこう)より、桜姫の守護を(にん)ぜられている」

「しかし」

「言いたい事は解るよ。僕もまさか徳山が、こんなに各地の大名を調略(ちょうりゃく)しているとは思わなかった。厳しい(いくさ)になるだろう」


 きりりと兄上が見返してくるけれど、それを聞きたいんじゃないんです。

 ゲームでも史実でも、兄上は関ケ原で東軍につく筈ですが、西軍についちゃっていいんですか? って事で……。


 西軍、負け組ですよ? 


 でもそんな説明をする訳にもいかないので、私は曖昧に(うなず)いた。



 あれから美成殿をはじめとした五奉行(ごぶぎょう)と、病を理由に欠席していた舞田殿以外の大老(たいろう)が「神の子を人身御供にして、天の怒りが(しず)まるとお思いか」と徳山を糾弾し、徳山vs他の大老・五奉行って形になったけれど。

 徳山に同調する大名が思いのほか多く、天下二分の形になってしまった。


 神子が人柱にされようが富士山が噴火しようが、領国に影響がなければどうでもいいって大名は大勢()る。

 そしてそれが『次期・天下人』の呼び声が高い 徳山の号令ともなれば尚更(なおさら)だ。

 

 私は、兄上に気づかれないように嘆息した。


 ああ、ゲームとは展開が違うけれど。

 これは『関ケ原』のフラグが立ったな……。



 +++


「ここにきていよいよわたくし、神子としての面目躍如(めんもくやくじょ)ってことね? プレイヤーキャラのくせに、活躍の場が少ないと思っていたわ!?」

「そうかも知れないけど、噴火しそうな富士山に行けなんて、結構な死亡フラグだと思うよ? それでなくとも『カオス戦国』にはハッピーエンドが無いんだから」

「ですよね!」


 桜井くんは てへっと笑っているけれど、私は笑う気になれなかった。


 私が余計な事をしたから、関ケ原の要因が変わってしまった。

 そのせいで桜姫に危害が及ぼうとしているんだから。


 ……あれ? そういえば。

 ふと気になって、桜井くんに確認してみる。


「ゲームの『家靖ルート』ってどんな展開だっけ? 1回しかプレイしてないからあまり詳しく覚えてないけど、確か家靖と結婚エンドだったよね?」


 桜姫は大阪夏の陣のさなか、敗色濃厚な富豊(とみとよ)についた雪村を助けたくて、独断で家靖のところに直談判(じかだんぱん)しに行く。

 しかし戦は止められず、雪村戦死の(ほう)を徳山の陣地で聞いた桜姫は、傷心のまま家靖に保護されて、そのまま側室になる。


 嬉しそうに笑う家靖(還暦過ぎ)と、たぬきに似た大勢の子供たちに囲まれて、一見ほのぼのしたエンディングスチルだったけど。

 赤ちゃんを抱いた桜姫の目は 思いっきり死んでいた。


「え……? 歳の差40以上のおじいちゃんとの間に、こんなに子供が……?」


 と、プレイヤーたちがざわざわしたエンディングだったような……

 それを思い出したのか、仏の顔になった桜井くんが こくりと(うなず)く。


「そうか……雪は携帯ゲーム版しかプレイしていないんだよな。PC版はそこらへんを深掘(ふかぼ)りしているから、展開がもっとエグいよ? 徳山は若い頃に、信厳と剣神の『川中島の戦い』に(まぎ)れ込んだ事があってさ、妖怪大戦争状態の戦に腰を抜かした。それ以来、霊獣が怖くて、ついでに自分の霊力の低さもコンプレックスになっていたんだ。それで霊力が高い奴とか、霊獣を使役する大名を目の(かたき)にしていた。八つ当たりも(はなは)だしいけどさ。そんな徳山のとこに、神子で霊力が高い桜姫が「(霊獣を使役できる)雪村を助けて欲しい」って、交渉しに行っちゃったわけ」

「そこまでは携帯ゲーム版も一緒だよ」

「うん。上森は関ヶ原の後も、秀好が(のこ)した『大名同士の婚姻禁止』ってしきたりを真面目に守っていた。戦後は没落したとはいえ、神龍が居なくなった訳じゃないからさ。『大阪夏の陣』でその武力を敵に回す訳にはいかない。だからそんな話を持ち込める状況じゃなかったけど、桜姫がほいほい来ちゃっただろ? それで家靖が喜んじゃってさ。『神子の血を取り込めば、徳山の子孫は霊力が高くなる』って言いだして。ええと…… まあアレだ。「雪村を助けたければ、身体を差し出せ」って桜姫に迫って、強引に契っちゃって。「側室になる代わりに雪村を助ける」って約束も反故(ほご)にされて、がんがん子供を作られて、あのエンディングスチル……」

「……うわあ……」


 全然、ほのぼのなイベントじゃなかった。

 お互い無表情になった私たちは、顔を見合わせた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ