266.再会2 ~side K~
「……なに?」
思わず兼継は聞き返した。
「雪は自分がここに残ったら、あんたの負担になるって思っているんだよ。あんたは直枝の跡取りで、跡継ぎが必要だからって。それでさ、俺たちはこの世界の『未来』を知っているって前に話しただろ? 雪は、あんたが不幸になる筈の『今後の未来』を変えてから帰りたいって言っていた。それで正宗んとこに行ったんだよ」
「それならそうと、何故、あの娘は私に言わない?」
「言えるかよ。「将来、上森は徳山に敗けますよ」って言われて、はいそうですかって、あんた信じてやれる?」
「……」
「これも『歴史の修正力』が掛かる案件だ。それでも雪は変えたいと思っているんだよ。正宗に嫉妬して、雪に当たるな」
図星を指された兼継は、ぐっと詰まって顔を逸らした。
「……嫉妬など、していない」
「別にあんたのことなんてどうでもいい」
面倒そうな表情を隠しもせずに、桜井が言葉を続ける。
「あのさ。雪に告ったのは聞いたけど、それから何があったのさ? あんたの様子がおかしいの、俺が気付かないと思ってる?」
「雪はお前に、そのような事まで伝えるのか」
「だから嫉妬すんなって。友達なら恋バナくらいするよ。あんたは正宗や清雅の事を気にしてんのかも知れないけど、雪は別にそーいう風には思ってないよ。それなのに八つ当たりされて。雪が可哀そうじゃん」
「お前は思い違いをしている。拒絶されたのは私の方だ。同情ならばこちらにしろ」
「マジかよ、振られたの!?」
「館の件だけではない。現に雪は、肥後に行ったではないか。戻る保証などどこにも無い!」
げらげら笑いだした桜井に、兼継は手近なおかきを投げつける。
最近、この手の攻撃に免疫力をつけた神子姫は、笑いながら菓子を受け止めた。
「誤解だと思うよ? まあ、あんたがそう取りたいならどうでもいいけどさ」
「誤解なものか。お前は見ていないからそう言えるのだ」
「だから。それならそれでいいんだよ」
手にした菓子を口に入れた姫は、澄ました顔で咀嚼する。
「俺としては、雪を元の世界に連れて帰りたいんだ。こんな不便で危ない世界になんて置いておきたくない。あんたが雪を諦めるなら、俺も連れて帰りやすくなる。雪もこの世界に未練がなくなるだろうし、全然構わないよ」
「……」
「雪があんたと離れたくないって言うなら尊重するさ。でも別にそう思っていない。『雪村』を戻して、自分は元の世界に帰るつもりだ。あんたは正宗や清雅が恋敵だと思っているだろうが、そうじゃない。雪本人だ。雪を心変わりさせなきゃ、いずれ、この世界から居なくなる。会う事もできなくなるよ」
『雪を連れ帰るつもりなら、目下の敵はお前という事になるな』
そう突っ込みたかったが、やめた。
狭量だと言われても、あの娘が他の男のものになる未来を見るくらいなら、異世界に連れ帰ってくれた方がましというものだ。
異世界か。
戦も無ければ怨霊も出ない。神の力に頼らずとも、火や水を自在に操る法具がある世界だと聞く。
このような危険な世界に置きたくない、連れ帰りたいと言うこの男の言い分は解るが、間に合ううちに手を打て、と言わんばかりの忠告してくるのはどういった思惑なのか。
「お前は私が嫌いだろう。何故、そのような事を教える?」
「それが俺の役目だと 決めたからだよ」
言葉足らずと思ったか、神子姫は兼継を見据えたまま 更に言葉を続ける。
「俺もさ、イベントに軒並み失敗したこの世界に、何しに来ているんだろうって思っていた。別に何をするでもなく、奥御殿に籠って菓子ばっかり食ってさ。でも本来のストーリーから外れて、エンディングを変えようと頑張っている奴がいる。そいつと出会えて友達になれたんだから、そいつの目指すエンディングの手助けすんのが俺の役目だと思ったからだよ」
何を言っているのか解らない。
しかし桜井も、それと知りながら喋っているのだろう。
聞き返す事なく、兼継は「そうか」と頷いた。
異世界恋愛なのに、友達キャラの方が暑苦しい




