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193.『正宗の手作りお菓子』イベント勃発3


「私にこうされても、悪ふざけで済ませられるか?」


 何が起きたのか判らなくてぽかんとしている私に、兼継殿が(すご)んでくる。

 至近距離で(にら)まれて、私はぶんぶんと首を横に振った。


 何だこれ、いま、何が起きた……?


「館も同じだ。お前は女性だという自覚が全然足りていない。いい加減にしろ!」


 ガチ説教が来た。

 それだけでも怖いのに、何でやられた側の私がこんなに怒られてるの……?


 黙り込んだ私を前にして我に返ったのか、兼継殿が気まずそうに目を()らした。



+++


「お茶にしましょう!」


 騒々しいほどの天真爛漫(てんしんらんまん)さで乱入してきた桜姫に、この時ほど感謝した事はない。



 ***************                ***************


「がまんして下さいねぇ? これ、良く効くお薬ですから」


 薬湯が苦くて顔を(しか)めると、根津子が苦笑している。

 そうか、効くなら我慢(がまん)するよ。

 薬袋には半夏瀉心湯はんげしゃしんとうって書いてあるんだけど、これ、甘くて苦くて、何だか複雑な味がする。




 あの後、桜姫がお茶を持って戻ってきて。

 何でもないって顔をして、かすてらを食べて帰って来たけれど、あれからずっと胃が痛い。


 大切な符を駄目にしたショックと、怒髪天(どはつてん)()いた兼継殿にき、き……すをされたアレとかで、いろいろと許容範囲を超えている。


 何で私は『雪村』なのに、こんな事に……


 いつもはひと月の猶予(ゆうよ)があるけど、今回は桜姫のお迎えまで半月しかない。

 それまでに何とか切り替えないと。


 一番考えられるのはバグだ。

 兼継殿は正宗(がら)みのイベント時にバグりやすくて、前にも正宗の『忠告イベント』でバグった事があった。


 ええと、ゲームの『カオス戦国』では、兼継ルートと正宗ルートを平行して進めると、兼継に「あの男には義の心がありません。痛い目を見る前に引かれよ」って()()()忠告されるイベントがあるんだけど。

 それがこっちの世界では、何故か『雪村』に発生したんだよね。


 こっちの世界の困ったところは、バグっても修正パッチのダウンロードが出来ないところだ。



 ***************                ***************


 桜姫を迎えに行く時期がやってきた。

 沼田を出た時は大丈夫だったのに、越後に向かっている途中で、胃痛がぶり返してきたみたい。

 信濃に入った途端(とたん)に耐えられなくなった私は、よろよろと真木邸に立ち寄った。


「兄上、これから越後に姫を迎えに行くところだったのですが、おなかが痛くなってしまいました。申し訳ありませんが、代わりの輿(こし)か馬を出していただけませんか?」

「え? 大丈夫なの?」

「しばらく休めば治ると思います」


 ストレス性胃炎だからね、多分。

 私は本気で心配してくれている兄上を安心させようと、無理矢理笑顔を作った。


 だいたいよく考えたら、私は被害者だよね? 大切な護符(ごふ)を駄目にされたんだよ? そして護符が発動して(まも)られたのなら、正宗にキスはされてないって事だ。

 それなのに兼継殿は、何であんなに怒った挙句(あげく)に あんな事をしたんだろう。


 私は『雪村』なのに。

 それに兼継殿は桜姫の攻略対象で、桜姫とルートに入ったのに。

 ……って事は、やっぱりバグだよね?

 でもバグったからって、何をしてもいいって訳じゃないと思う。


 あれから私は、兼継殿が何を考えてるのかが解らなくて。

 ゲームではこんな展開は無かったから、どう動くのが正解なのかが解らなくて、 ずっともやもやしている


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