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158.五年前の経緯と執政の逆鱗1


『安芸殿から返事が来たわ』


 桜姫から文が届いたので、私はそわそわしながら越後に向かった。返事が来たって事は、相模で何か動きがあったって事だから。

 うう、やっぱりこっちの世界でも『小田原征伐(おだわらせいばつ)』が発生しちゃうのかな……

 ちょうど兼継殿からも話があるって文が届いていたから、ついでに会ってこよう。



 ***************                *************** 


「安芸からです。此度(こたび)は私宛に届きましたが、あなた宛ての伝達です」


 老女から渡されたのは銀細工の花簪(かんざし)と、簪を借りっぱなしだった事を()びる内容の文だった。

 私宛てと言われても『老女に簪を借りていた』って内容じゃあ、どこら辺が私宛てなのかが全然解らない。

 ぽかんとしている私に、老女がこそりと聞いてきた。


「念の為に聞きますが。あなた、首藤殿とはどれほどの面識があるの?」

「首藤殿、ですか?」


 全然記憶にない。雪村の記憶を検索(けんさく)してみたけれど、引っ掛かってこない。

 ……でも雪村ってあんまり他人に興味がないタイプなのか、安芸さんの事も忘れていたからなぁ。


「申し訳ありません。覚えておりません」


 正直に答えると、老女と桜姫が顔を見合わせている。

 やがて向き直った桜姫が、可愛らしく苦笑した。


「この程度の認識なのにね。これからお話すること、とっても胃もたれするわよ」



 ***************                *************** 


 桜姫と老女が話してくれたのは、長いこと雪村が知りたがっていた『五年前に雪村が甲斐に戻された理由』だったけれど。それは知っても楽しい内容ではなかった。


「ようするに」


 確認も兼ねて、私は二人を交互に見ながら ざっくりまとめる。


「五年前に私が甲斐に戻されたのは『男色の色恋沙汰(ざた)』が原因だから、相模の首藤殿には注意しろ、と言うお話ですよね?」

端的(たんてき)に言ってしまえばそうなります。しかしあなた、本当に解っているのでしょうね? 『男色』は少し忘れなさい」

「そうよ? 首藤とやらは雪村の『顔が好き』って、身も(ふた)もない事を言っているの。両刀でもおかしくないわ」

「姫も。本題はそこではなくて」


 そう、本題はそこじゃない。雪村が『首藤殿とやらを知らない』ってところだ。

 顔も知らないのに、どうやって警戒したらいいんだろう。

 そんなモブ、ゲームにも出てないよ……


 とりあえず、教えてくれてありがとう安芸さん。

 老女宛てに文が来たって事は、安芸さんは『越後の雪』の存在も隠した方がいいと判断したんだろう。それなら『直接会って情報のやりとり』って手が使えなくなった訳だから、他の方法を考えないと。


「申し訳ありませんが、また安芸殿宛てに文をお願いする事になりそうです。その時はご老女を経由させていだだいても(よろ)しいでしょうか?」


『他の方法』を使うには、まずは兄上に許可を取らないと。

 私はまた手間をかけてしまうであろう桜姫と老女に、深々と頭を下げた。



 ***************                *************** 


「あなたが持っていなさい」


 安芸さんから送られた花簪と文を渡されて、桜姫の部屋を()した私は、仕事が終わりそうな時間を見計らって兼継殿を待ち()せた。

 老女は「おそらく姫と同じ用件でしょう」と言っていたけれど、『五年前、ホモを(よそお)いました』って内容じゃあ兼継殿も言いづらいんじゃないかな。


 私もまさか乙女ゲームに準拠(じゅんきょ)しているこの世界で、BL要素をぶっ込まれるとは思わなかったよ。

 さすが『カオス戦国』なんて呼ばれるだけあるカオスっぷり。

 兼継殿も気の毒に。よし、そこらへんのフォローはちゃんとしてあげないとね!




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