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121.打診と打算と姫の災難2 ~side S~

視点違いですが、前作と内容が被っています。

 俺は観楓会(かんぷうかい)に参上すべく、影勝義兄上(あにうえ)様と一緒に大阪へとやってきた。

 今回の俺の装いは、雪村セレクト・莟菊(ふくみぎく)(かさね)とやらに、春の花見と同じく薄衣(うすぎぬ)を頭から(かぶ)ってるスタイルだ。


 別に影勝は克頼みたいな事は言わなかったんだが、先日の一件で思い出したんだ。

『桜姫は 一目で男を篭絡(ろうらく)するような超絶美少女だ』ってことを。


 正直、観楓会で正宗に会ったら面倒くさい。


 別に名乗った訳じゃないんだ。顔さえ隠れていれば知らんぷりできるだろ? 

 あっちも顔が確認できなきゃ 声をかけてこないだろうし。



 ***************                ***************


 大阪に着くなり、俺は(たたみ)に倒れ込んだ。

 久し振りの輿(こし)での移動は、予想以上に身体にキく。最近ほむらでの移動ばっかりで長距離ショートカットだったからなぁ。


 影勝も神龍使ってショートカットすればいいのに、龍の神力を『領地の守り』にしか使わない義兄上サマは、そういうズルをしない。

 あ、ごめん。雪村がズルいって意味じゃない。ほむらはまぁ……乗り物だよ。


 疲労困憊(ひろうこんぱい)の俺がぐうぐう寝ていると、その日の夕刻、俺が大阪に着くのを待ち(かま)えていたかのように雪村が「武隈邸を改装しましたので、是非(ぜひ)遊びに来て下さい」と誘いに来てしまった。


 何か相談事がありそうな雰囲気だ。どことなく表情が固い。


「何だよー。そんなに俺に会いたかったぁ?」


 お道化(どけ)てみたけど、雪の表情は晴れない。黙ったまま目を伏せているのは、考えをまとめてるんだろう。

 俺は茶を飲みながら雪が口を開くのを待った。


 やがて少し改まって。雪は思ってもみなかった事を言い出した。


「小介が「兼継殿は『雪村が別人と入れ替わっている』事に気づいてる」って言うんだけど……。越後に居た間、兼継殿にそんな素振(そぶ)りなかった?」


 茶を()き出さなかったのは 目の前に雪が居たからだ。

 無理矢理(おさ)え込んだせいで()せ返りつつ、俺は雪を見返した。


「雪が雪村に成りすましている」のは、俺が話したから兼継はもう知っている。でも小介が何でそこまで知ってんだ!?

 あの女癖が悪そうな小介が「雪村の中身が女っぽい」ってのに気付くまでは、まぁ解るとして。

「兼継も気付いている」ってとこまで判るの、おかしくない??


 (かしこ)まっていた雪が、しょんぼりした顔になる。


「少し前に兼継殿が沼田に来た時、まぁちょっといろいろあって小袖をくれたんだよね。それがその、女物で……。私もそれ、特に気にせず受け取っちゃったの。本当は「私は男だから女物は着ません」って答えなきゃダメだった。小介がそれに気づいて。兼継殿も気付いてる(はず)だって」


 そういえば そんな事があったか。

 ちくしょう兼継の野郎、桜姫には団子のひとつも買ってこなかった(くせ)に、雪には随分(ずいぶん)大盤振(おおばんぶ)()いだな!

 食い意地とジェラシーに苦しむ俺とは裏腹(うらはら)に、雪の方は本当に辛そうな顔になっている。


「兼継殿、今日ここに来ているんだけど、兄上に「話がある」って言ってて……何をいうつもりなんだろうって」


 気づけば雪の顔色が悪い。

 これ、ほっといたら過呼吸でもおこしそうなんだけど、ここにはビニール袋なんて無いぞ……


「それで『別人だって気づいている』か。なるほどな」


 俺はそっと雪に近寄って 背中をぽんぽん叩いた。落ち着くまでそれを繰り返す。

 そうしながら俺は、誰が何を、どこまで知ってるのかが煩雑(はんざつ)になってきている事に、改めて気づいた。

 主な原因は俺がぺらぺら(しゃべ)ったり、隠したりしてるせいだが。


 息が落ち着いてきたみたいなので、俺は深刻に聞こえないように注意しながら雪に確認した。


「何だかごちゃごちゃしてきたな。ちょっと整理しようか。まずさ、何で雪は兼継と信倖に知られたくないんだっけ? 俺、理由聞いてた?」


 目を見開いた雪が、ちょっと逡巡(しゅんじゅん)する気配を見せてから しゅんと顔を()らす。


「……この身体になった夜に、兼継殿が「元に戻す方法を探す」って言ってくれたの。『雪村』が困っているからそう言ってくれたのに、私は雪村じゃない。それを知ったらどう思うだろうって、それが怖い。そもそも「女の私」が雪村の中に入ったからこんな事になったのかも知れない。雪村にも兄上にも、何て言って謝ればいいのか解らない」


 雪村の中に『雪』が……『異世界から来た別人が入っている』ってのは兼継はもう知っている。

 それは俺が喋ったから。だが雪は『兼継がもう知っている』って事を知らない。

 さっき言ってた様に、雪は『信倖と兼継に知られる』事を怖がっているから、余計な心労をかけたくなくて この事はまだ伏せている。


 そして、「雪村が女になったのは『カオス戦国』の特殊条件下で発生する兼継18禁イベントのせい」だっていうのは、兼継も雪も知らない。

 兼継にはこんな事を話してもちんぷんかんぷんだろうし、雪には単に話すきっかけやタイミングが今まで無かった。


 ただ兼継は未来は『選択』するものだって認識はしていて、その選択した未来に、本来『雪村が女のままの未来』は無いってのは知ってる。


 あと『契れば男に戻る』ってのは、兼継は知っているけど雪は知らない。

 これも雪に話すタイミングを(しっ)していたからだ。


 ちなみに今、兼継が『契る以外で男に戻す他の方法』を探しているのは、雪と約束したから……というより、契ろうとしたら雪に怖がられたのが、地味にショックだったっぽい。


 どうしようかな、どう話す? 俺は改めて雪の顔を(のぞ)き込んだ。


「俺が越後に居た間は、そんな感じじゃなかったよ。ただ六郎に関しては心配してた。お前、越後に居た時は「女の身体の自覚を持て」って兼継にさんっざん叱られてたろ? 女物の小袖を自然に受け取ったんなら、兼継的には『合格』だろ。小介はそれ知らないからそういう風に感じたんだよ」


「そう……なのかな?」


 雪の表情は不安げなままだ。俺としてもこの程度の言い(つくろ)いで、雪の不安を払拭(ふっしょく)しきれるかは自信が無い。

 だがとりあえず今は「兼継が雪の件をもう知っている」ってのは伏せよう。

 兼継が『契る』以外の『元に戻す方法』を見つければ、今 教えるのは余計な心労を増やすだけだ。


 それに雪は、桜姫と兼継のイベントを進めたがっているけど、兼継にはその気がない。あいつは雪が好きだからだ。

 それだけでもメインヒーローから桜姫のライバルキャラにシフトだっつーのに、『中身が別人だと知って』いて、そのせいで桜姫とのイベントが進まないなんて知れたら、ストレスで雪が死ぬ。


 でもこれは話しといてもいいだろう。少しは負担が軽くなる。

 俺は表情を(ゆる)めて、雪の肩を叩いた。


「俺にも正直、兼継が何を考えてるかなんて解んない。ただこれだけは教えとくよ。雪村が女になったのは雪のせいじゃない。ゲームのイベントだ」



 ***************                ***************


 不思議そうな顔で見返す雪をさらに見返し、俺は苦笑した。

 もうこっちの生活が現実になりつつあるから、いきなり『ゲームのイベント』って言われても頭が追い付かないんだろう。

 でもゲームの『長年のご愛顧(あいこ)感謝イベント』について説明すると、そのイベントについては知っていた。


「まあとにかく。その初版データがあったら発生する『特殊イベント』で雪村が女になってたんだよ」

「そうなの!?」


 雪が()頓狂(とんきょう)な声を出す。

 まあ驚くだろうなぁ。まさか乙女ゲームで女体化があるとはなかなか思わないよ。

 でも雪は「自分が雪村の中に入ったせいではない」可能性にほっとしたみたいだ。


「うん、だからそれに関しては雪が気に()む必要ないよ。この世界はNEOに準じてるみたいだし、ゲームのイベントのひとつだと思ってさ」


 笑ってそう言うと、雪もやっと笑顔になる。

 元気になった雪を見て、俺もほっと胸を撫でおろした。




ごちゃごちゃしてきて(私が)訳わかんなくなったので、現状把握を兼ねた話です。

読んで下さった方、(ありがとうございます。励みになっています)進展なくて

申し訳ありません。


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