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113/383

113.そうだ。お迎えに行こう

 鯉の尊い犠牲の末に生まれた温泉の整備で、あっという間に時間は過ぎ、そろそろ桜姫を迎えに行く時期になった。

 それを考えると憂鬱(ゆううつ)になる。桜井くんに会えるのは嬉しいけれど、越後に行くとなると……


 (こい)の件を影勝様に、どう伝えて謝るべきですか……?


 兼継殿の意見を聞きたいけれど、まだ上方(かみかた)から戻っていないらしい。

 どうすべきか決めかねたまま、私は越後へと向かった。



 ***************                ***************


 越後に着いた私は、まずは影勝様に挨拶に向かった。嫌な事はさっさと終わらせた方がいい。でもどのように話を持って行って謝るか、それが問題だ……


 もやもやしながら廊下を歩いていると、ちょうどそこに泉水殿が通りかかった。

 泉水殿は、雪村に槍を教えてくれた人で、今は影勝様の側近をしている。


「あまり良くないお話を、影勝様にお伝えしなければならないのですが……泉水殿、影勝様に上手く()()して貰えませんか?」

「ふげえ!? 無理無理無理ッ! そういう時こそ兼継に頼めよ。お前、ナニを言うつもりか知らんが、殿は怒っても怒ってなくても怖いんだぞ! 怒らせたらますますだ!」

「え? 無口な方だとは思いますが、怖いと思った事はありませんでした」

「そりゃお前には甘いさ。子供だからな」


 身を竦ませた泉水殿が、「兼継、今は居ないけどさ」と言い足す。


上方(かみかた)に行っていると聞きましたが、どの様なご用件ですか? 随分(ずいぶん)とお戻りが遅い気がします」


 桜井くんの文から察するに、もうひと月くらいは戻ってないんじゃないかな。

 あの社畜がこんなに長く、影勝様の側を離れるなんて。一体何があったんだろう。

 けれど泉水殿は、きょとんとした後で苦笑した。


「そうか? 上方は遠いからな。私事での上洛(じょうらく)でもこれくらいはかかるさ」


 私事……プライベート案件なのか。上方なら美成(みつなり)殿のとこにでも行ったのかな。


 私が長距離移動をする時は、ほむらで『(ひずみ)』を使ってのショートカット移動だからか『この時代は移動に時間がかかる』って感覚が抜けているな。


 結局私は、泉水殿のアドバイスに従って、兼継殿の戻りを待つことにした。


 せめて「いい知らせと悪い知らせ、どちらから聞きたい?」って状況を作ってからの方がいいだろう。

 そのためには「いい知らせ」も用意しなきゃ。



+++


「上方の観楓会(かんぷうかい)には、桜姫も同行させるように」と、影勝様から念押(ねんお)しされて、私と桜姫はほむらに(またが)った。


「姫様! 越後の冬は長うございます。必ず……必ずッ! 雪が積もる前にお戻り下さいませ!」


 悲壮感(ただよ)う侍女衆が、総出(そうで)で姫との別れを惜しんでいる。

 仲が良さそうでいいなぁ。私も桜姫に転生したかったよ。雪村は乙女ゲームというより、領地運営シミュレーション+戦国アクション(怨霊もいるよ!)だもん。

 そして時間がたつにつれ、だんだん難易度が高くなっている気がする。


「雪が降る前に、必ず送り届けますから」


 名残を惜しむ侍女衆に約束して、私達は越後を後にした。



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