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摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第2章】正義者(ジャスティスマン)
8/37

★第6話★ ポットヲタク降臨

★第6話★ 「ポットヲタク降臨」





・・・今日は水曜日。


摘人政策てきじんせいさくがスタートしてから

大学は1週間休校となっていたけど、

既に再開から3日が経過している。




授業は何事もなく以前通りに行われている。


どの授業でも学生の人数は以前よりも減っているけど・・・。




それとは逆に、今学期

俺が受講している授業を担当している”教授”は全員生存していた。


その余裕から摘人てきじん政策について、

雑談ネタよろしく面白おかしく話す教授までいたくらいだ。






・・・現在時刻は15:23。


既に本日の授業は全て終了し、

俺は今から”ゆのぽん”こと

鈴木すずき 結乃ゆのの活動拠点で

インフルエンサー活動のお手伝いをすることになっている。




摘人てきじん政策においては、

個人毎に設定してある”社会貢献度”が肝となっている。


なぜなら、社会貢献度の値を基準に、

排除する人間を選定しているからだ。




結乃ゆのはインフルエンサーとして

【どういった行動で”社会貢献度”が変動するのか】

というノウハウを販売して一儲けしようとしている。




しかし、未だに謎が多いことに加え、

既にネットに不確定情報も含め

大量の情報も出回っていることもあって、

売るなら”完璧”なノウハウしか需要がなさそうだ。


・・・というのが俺と結乃ゆのの共通意見である。






「・・・おい!無視するなよ!」


考え事をしている最中に

突如耳に入ってきた怒声に驚き、

背後を振り向く。


すると、見覚えのあるイケメンが

眉間にシワを寄せてこちらを睨んでいた。




ひろ・・・!」


工学部のイケメン陽キャ軍団に所属する、

彼自身も文句なしのイケメン男子、

西願せいがん ひろだ。




・・・彼が俺を睨み付けていることについて、

多少なりとも心当たりはあった。






先週の金曜日の夕方、

俺は四十住よそずみ 千佳ちかという

同じ城北じょうほく大学の女子が自動車に跳ねられる現場に遭遇。


そのまま救急車で俺は彼女と共に病院に移動し、

彼女の手術完了を待っていたけど、

結局彼女の意識が戻ることはなかった。


俺は病院を出ようとするが、玄関で例のイケメン

西願せいがん ひろと遭遇。


彼はその時、既に普段と違う様子であったが、

そこに鈴木すずき 結乃ゆのが現れると、

彼は突然焦り始め、叫んでその場を走り去った。






・・・今週は彼となるべく

鉢合わせないように注意していたんだけど、

まさか向こうから声を掛けてくるとは思わなかった。




「・・・ミコちゃんさぁ、鈴木すずき 結乃ゆのとはどういう関係なんだ?」


ひろは平然を装っているのが分かるが、

口調に”怒り”がにじみ出ている。




「それをお前に言う必要があんのかよ!

 そういうお前こそアイツとはどういう関係なんだよ!」


ひろにつられて、俺までイライラがうつってしまった。




「質問を質問で返すなよ、御子柴みこしば りゅう!!」


フルネームを叫ばれ、俺は思わず黙ってしまった。






・・・ひろ結乃ゆのの間に何らかの関係があることは確かだ。


しかも、両者とも自身の素性を隠している・・・予感がする。




ここであえてひろを挑発し、

結乃ゆのについて少しでも情報を得るのは悪くない。


しかし、それを実行するのはリスキーな香りがプンプンしている。






「俺はなぁ!自分が生き伸びるために結乃ゆのを利用しているだけだよ!!」


嘘は言っていない。


他にも”彼女の真の狙いを暴く”という目的はあるけど。




「・・・コイツ・・・!」


ひろは大股で俺の前まで近付いてくると、

両手で俺の胸ぐらを掴んだ。




すると、彼の背後にいた彼の水色のモバイルポット、

”センゲン”がアラーム音を発した。




ひろさん、その行動は

 あなたの社会貢献度が低下する危険性があるセン。

 注意するセン。』


「チッ!うるさいんだよ!」


ひろは一旦俺から手を離すと、

背後に待機している自分のポット目掛けて回し蹴りを命中させる。




”センゲン”は近くの木にぶつかるまで10mほど転がったが、

自動復帰機能が働いてすぐに起き上がる。




ひろ、お前バカだろ!

 自分のポットが壊れたら修理代出すのお前なのに!」


「俺が・・・バカだと・・・?

 ”雑魚”の分際でよくも」




俺はその瞬間、

ひろに殴られると確信して両手で頭部をかばった。




・・・しかし、次の瞬間には、

彼はうめき声を上げてアスファルトに倒れていた。




「えっ!?」


俺自身、何が起きたか分からず、

周囲を見渡すと、

俺のすぐ左前1mほどに謎のモバイルポットが停止している。




左半分が”赤色”で右半分が”水色”、という2色構成のポットだ。




通常、市販されているモバイルポットは

赤、水色、紫、黄のいずれか単色構成だが、

今在いまざい 征儀せいぎの”アラタマ”のように

出処不明の2色構成ポットも存在が確認されている。






「・・・モバイルポットを敬え。」


大学の敷地奥の方から、

1人の男がゆっくりと歩いてくる。


明るいイエローのパーカーの上から

ワイドフィットめな黒いセットアップを着込んでおり、

靴は白いシンプルなスニーカー。


頭髪は黒髪で、カジュアルショートくらい。


顔は童顔寄りで、頑張れば中3くらいに見えなくもない。




・・・俺にはその男に見覚えがあったが、パッと思い出せない。






「痛ったいなぁ・・・!

 ポットで人を撥ねるなんて、反則だろ!!

 どこのどいつだ?」


ひろはポットが直撃した右足をさすりながら、

やおら立ち上がる。




その時、俺はちょうど彼の名前を思い出し、呟いた。




「・・・舞鶴まいづるソリューションズ公式ポッター、

 月影つきかげ しゅん。」




俺がそう言うと、月影つきかげと思しき男は

俺に指差して満面の笑みを浮かべた。




「正解!よく分かったね。」


月影つきかげがそう言い終わるが早く、

ひろは大音量の舌打ちを繰り出す。




「ああーー!!お前、誰か知らないけど、

 完全に俺をナメてるよな?

 勝手に話題変え」


「そこの君さ、文句があるなら”ポットバトル”で僕を倒してみろよ。」


月影つきかげは一瞬で真顔になり、

俺に差していた指を今度はひろに向けた。






・・・”ポットバトル”というのは、簡単に説明すると

互いのモバイルポットを操作して”押し相撲対決”をする遊びだ。


昔から毎年開催されている「ロボコン」の過激版だと思ってもらって良い。


ちなみに、ポットバトルの操作プレイヤーは通称”ポッター”と呼ばれている。




現在、一部の若者の間で流行っていて、公式大会も開催されているが、

ポットのボディが傷付いたり、

激戦になると内部の精密部品が逝ったりするらしいから

俺は恐ろしくて遊んだことがない。




・・・月影つきかげ しゅん

ポットバトル公式戦【無敗】のスーパーポッターで、

水色のポットを生産・販売している”舞鶴ソリュージョンズ”の

公式ポッターとしてスポンサー契約を結んでいる。




彼は大学2年生、という情報は公になっていたけど、

まさか俺と同じ城北大学の生徒だとは思いもしなかった。




「チッ・・・あぁ!!もういい!」


ひろは投げ捨てるようにそう言うと、

踵を返して大学の正面ゲート外側へと去っていった。






俺はひろの姿が見えなくなるのを確認して

月影つきかげに歩み寄る。




「俺もよく分からない状況だったんだけど、助かったわ。

 ありがとう。」


俺が軽く頭を下げると、彼は再び満面の笑みを浮かべる。




「あぁ、別にいいよ!

 君がどうなろうと知ったことはなかったけど、

 僕の敵はモバイルポットを乱雑に扱うヤツ全員だからさ。」




・・・いや、急な毒づきもめちゃくちゃ気になるけど、

ポットバトルも十分ポットを乱雑に扱ってるだろ!




口から出そうになる言葉を噛み締めると、

俺は彼に訊きたいことがあったことを思い出した。




「あの、お前のそのポット、半分こで2色になってるじゃん?

 これってどこで手に入れたの?」


「この”ゴキソ―”のこと?

 うーん・・・僕もよく分かってないんだけど、

 ある日突然”自宅に配送されてきた”んだ。

 それも差出人不明でね。」


月影つきかげはそう言いながら彼のポットに触れた。




「ただ、輸送箱の中にはQRコードが同封されていた。

 アクセスすると、真っ白なWebページに飛んで、

 1行の文章が表示され、”聞き覚えのある男の声”でそれが朗読された。

 【未来の正義者(ジャスティスマン)へ】と。」




・・・彼のワードで、俺の脳裏につい先日の記憶が蘇る。




『あなたは正義者ジャスティスマンとして認証されました。

 ”第二世代モバイルポット”の機能を解放します。』




キチガイ暴力マッチョこと、今在いまざい 征儀せいぎのモバイルポット、

”アラタマ”が発した音声だ。




「・・・ちなみに、その”男の声”っていうのは誰のなんだ?」


俺の問いかけに、月影つきかげは一瞬だけ困惑した表情を浮かべた。


しかし、すぐに口を開いた。




「株式会社LEVOL(レボル)代表取締役社長、冷泉れいぜい 奏多かなた。」


「えっ!?」


俺は思わず大声をあげてしまう。




・・・冷泉れいぜい 奏多かなたと言えば、

俺のとっても嫌いなタレント扱いされているちょっと顔が良いだけの社長で、

同時に摘人政策てきじんせいさくの考案者でもある。


ヤツめ・・・どうやら、ただ摘人政策てきじんせいさくを遂行するだけではなく、

何かしら”裏の目的”もあるに違いない!




しかし・・・あまりに単調過ぎる気もしないでもない・・・。




冷泉れいぜい 奏多かなたは”頭良いキャラ”で売名してるし、

対談とかインタビューとか聞いていても、実際に頭は良いと思う。


・・・会った事ないから知らんけど。




そんな彼が、自分の音声を同封して、

オリジナルポットを個々の家庭に配送する、みたいな

明らかに身元バレバレなことをするだろうか?


そもそも、身元を明かすことに抵抗がないなら、

荷物の差出人の欄に名前を記載すれば済む話じゃないのか?




・・・もちろん、月影つきかげの聞き間違いの可能性もあるけど。






「なんか、変な世の中になったよね。

 僕はただモバイルポットと日常を過ごしたいだけなのにさ。

 摘人てきじんとかダリぃしキモいし、考えた奴はホント死ねば良い!」


月影つきかげはそう言って苦笑いする。




俺も調子を合わせて「マジだよな!ポットしか勝たん!」と続くが、

頭の中は思考が回ってパンクしそうで、

彼の毒舌に突っ込む余裕は皆無だ。




・・・さっさと”ゆのぽん”の拠点に向かって、

道中で情報整理するか。









★第6話★ 「ポットヲタク降臨」 完結



お読みいただきありがとうございます!


今回は新キャラ、月影つきかげ しゅんが登場。

彼はモバイルポットを押し相撲のようにぶつけ合って遊ぶ

”ポットバトル”の実力者であり、

水色のポットを生産・販売する舞鶴まいづるソリューションズとの

スポンサー契約を結んでいます。


彼は作中では名言していませんが、

舞鶴まいづるソリューションズ以外にも

サクラ重工、メイジョーン・カンパニー、ヒガシホールディングス、

各社のモバイルポットを複数機所有しており、

ペット同然にかわいがっています。


童顔も相まって、可愛らしいキャラかと思いきや、

毒舌が頻繁に飛び出します。




そして、イケメン陽キャこと西願せいがん ひろについては、

未だに目的が見えず、謎が多いです。




加えて、主人公の御子柴みこしば りゅうが大嫌いなタレント社長、

冷泉れいぜい 奏多かなたが何かを企んでいそうな証拠も見つかり、

今後に向けての謎が更に深まりました。

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