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摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第1章】あなたは社会に必要な人間ですか?
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★第4話★ 株式会社LEVOL(レボル)

★第4話★ 「株式会社LEVOL」




―――その頃、都内某所のオフィスビル―――



時刻は10時34分。


「戻りましたー!」


バンッと扉が開く。

勢いよく飛び込んできたその声は、20畳ほどの室内にこだまする。



「ヘイヘイヘーイ!! おかえり、ミスター冷泉れいぜい!」


部屋の一角、3㎡はあろうかという特注のデスクから、190cm超えの巨漢が立ち上がった。


スキンヘッドにサングラス、そしてネイビーのストライプスーツ。

筋肉の塊のようなその男は、にやけ顔でサングラスを額にずらす。


彼はこの株式会社LEVOL(レボル)の取締役の一人である、合地ごうち アレクセイだ。



――たった今オフィスに戻ってきた男こそが、巷で話題の“メンタリスト”兼”小説家”、冷泉れいぜい 奏多かなた


そして同時に、この株式会社LEVOL(レボル)の代表取締役を務める男である。


とは言っても、昨今は専ら会社運営に集中しており、彼の数々の実績は過去の偉業となりつつあった。



「いよいよ俺の“摘人てきじんシステム”が動き出した訳だが、

 今のところ、国民のリアクションはどうかな?」


近くにあった椅子に腰を落とし、脚を組む冷泉れいぜい



「コールセンターは下請け企業に丸投げだから、俺も知りませーん!」


アレクセイは敬礼のポーズをビシッと決める。



「でもネットじゃフルボッコにされちゃってまーす!!」


妙にテンションの高いその姿に、冷泉れいぜいは小さく笑いながらも、涼しい顔でこう言い放つ。


「まあ、国民の反応なんてどうでもいいんだけどね。

 大事なのは――このLEVOLレボルの活動が社会に貢献することだ。」


冷泉れいぜいは立ち上がり、窓際の自席へと歩く。

その背中が発する気配が、どこか張りつめていた。



「・・・俺たちは、この社会のために日々”貢献”する。

 ――いつだって、それを忘れてはならない。」


瞬時に鋭さを増した彼の目線が、ガラス越しの街並みを射貫く。


空気が張り詰める。

アレクセイもさすがに表情を引き締め、静かに応じた。


「イエス、ボス。」


――その時だった。

ガチャ、と再び扉が開く。



「戻っていたのか、冷泉れいぜい。」


現れたのは、身長170cmほどの痩せ型の男。


黒髪ミディアムをセンターで分け、シルバーの丸メガネ。

白のスウェットにカジュアル感の強い黒いワイドパンツ。



彼の名は――実宝院じっぽういん 駿河するが


彼もまたLEVOLレボルの取締役の一人であり、近頃は遅刻の常習犯でもある。



「ヘイヘイヘーイ!! 実宝院じっぽういん〜!また遅刻か?

 ヘイユー、どこ行ってたんだ?」


軽口を叩くアレクセイを、彼は冷めた視線で一蹴した。



「私がどこにいようと、お前には関係ない。」


それだけ言って、黙って自席へと向かう。



実宝院じっぽういん。俺たちの目的は?」


冷泉れいぜいが、窓際から問いかける。

彼は足を止め、静かに振り返った。



「”社会貢献”すること、だろ?

 ・・・“同級生”の私に、まだそんなことまで確認するのか?」


――2人は大学時代からの腐れ縁。


冷泉れいぜい27歳、実宝院じっぽういん26歳。


LEVOLレボルは元々この2人の共同創業だった。



創業数か月後にアレクセイを迎え入れたが、それ以降、3年間新しい社員は誰一人増えていない。


わずか3名、それも全員が取締役の株式会社で、従業員は雇っていない。


――この小さな組織が、今や国の根幹を揺るがし始めている。




「人間はね、潜在意識に刷り込まないと、すぐ忘れちゃうからねぇ。

 同級生とか関係ないよ。」


冷泉れいぜいは柔らかく微笑んだ。


“人たらし”と名高い、彼の最大の武器――万人を魅了する“あの笑顔”だ。


実宝院じっぽういんは小さくため息を吐き、椅子に沈み込む。



「おっと、また連絡だ。忙しいなぁ・・・。

 帰ってきたばっかだけど、行ってきまーす」


スマホをポケットにねじ込み、冷泉れいぜいはスタスタと部屋を出て行った。



「ヘイヘイ、実宝院じっぽういん!このままじゃマジでクビだYO!?

 取締役がクビってヤバすぎだYO!!」


アレクセイが焦り気味に声をかけた瞬間、室内にバンッという音が響く。



「黙れ。私はやるべきことをやっている。

 それ以上口を挟むな!イカれラッパー!!」


「な・・・!?」


実宝院じっぽういんが机のペン立てを払い飛ばし、メガネ越しに鋭い視線を突き刺す。


だが次の瞬間には感情を抑え、無言でPCを起動し、タイピングを始めた。




――今回の“摘人政策”の核、それは「社会貢献度」という概念。


その発案者は代表取締役である冷泉れいぜいだったが、

システムを一人で構築したのは、他でもない実宝院じっぽういんだった。



「・・・冷泉れいぜいは・・・すっかり変わってしまった。」


実宝院じっぽういんが誰に言うでもなく、ただ空気に溶けるように呟いたその言葉。


だが――


彼の唇の端は、確かに笑っていた。





★第4話★ 「株式会社LEVOL」 完結

お読みいただきありがとうございました!


今回は本作の重要要素である

摘人てきじんシステム”を考案、開発した

株式会社LEVOL(レボル)内部の様子を描きました。


LEVOLレボルは役員数3人・従業員0人という会社で、

それぞれの役職と人物は


・代表取締役→冷泉れいぜい 奏多かなた


・取締役→合地ごうち アレクセイ


・取締役→実宝院じっぽういん 駿河するが


となっています。


彼らはあまり人間関係としては上手くいっておらず、

あくまでも

【組織としての目的を果たすための仲間】

といった雰囲気が伝わったかと思います。


それでも、たった3人で国を動かすほどの影響力を持った会社は

驚異的であると言わざるを得ないでしょう。


是非今後の展開もお楽しみに!

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