シーン42 エピソード2 エピローグ
遂に、エピソード2も最終回になりました。
ぜひ最後まで、よろしくお願いします
シーン42 エピソード2 エピローグ
病院の匂いは、どうしても好きになれない。
だけど、時々不思議と懐かしい気持ちになる。
人工の季節だと判っていても、窓の外に広がる新緑は清々しかった。
病室のドアを開けると、彼はそんな窓の外を眺めていた。
「ハーイ、モーリス。 良くなったみたいね」
アタシは、ほんの少しだけやつれた彼に声をかけた。
モーリスは、急に訪ねてきたアタシを見て、満面の笑みを浮かべた。
「ラライじゃないか。良く、来てくれたね」
「ごめんね、色々あって、あれからすぐ、ここを離れてたから」
「良いんだよ、僕の方こそ、ごめん」
彼は心底申し訳なさそうな顔をした。
「なんでも、僕が意識を無くしてた間、まるで君が犯人みたいに報道されたっていうじゃないか、君も行方不明だって聞いて、心配してたんだ」
「偶然、古い知り合いと会って、一緒に旅に出てたのよ。ほら、あの会社、なんだかおかしいって思い始めてたし」
「結局すぐ自己破産したしね。よかったよ、大きなことになる前に辞めていて」
アタシは頷いた。
モーリスは生きのびてくれた。
ある意味、アタシ以上の大変な戦いを勝ち抜いて、生還した。
アタシは彼の頑張りに敬意を表して、殺風景な部屋の花瓶に黄色い花を飾った。
アタシの大好きな花で、ほんのりと、良い香りがした。
「ありがとう。ラライ」
「どういたしまして」
アタシはニコッと笑った。
少しだけ話をした。
好きな景色の事や、食べ物の事や、ちょっとしたお互いの将来の夢の事。
たわいもない、友達同士の話だ。
時間はあっという間にすぎて、彼が疲れてしまったので、また来るねと言って部屋を出た。
もう二度と、会う事は無いと、わかってはいたけれど。
結局。
アタシはこの街を離れる事にした。
ハイロウシティのアタシの部屋も引き払って、売れるものは全部売った。残ったのは一個のカバンとスーツケースだけ。
まあ、その位の方が、今のアタシには丁度いい。
リンは行ってしまった。
彼女にとって、本当に幸せになる道を探すためだ。
一番大切な人がまっているんだもの、それは当然の選択だろう。
アタシとリンは、最高のパートナーだ。
それはきっと、この先も変わらないけど。
共に歩む道を選ぶ必要があるかっていえば、そうじゃない。
アタシにはアタシの。彼女には彼女の生き方と、幸せの求め方があるからだ。
デュラハンは、リンを外宇宙へと送っていった。
すぐに戻るかもしれないけど、当分戻らないかもしれない。
なにせ、彼らは自由な宇宙生活者だ。
アタシは彼らが好きだし、彼らはアタシを認めてくれている。
だけど、それが、お互いを縛るって事になるのは、アタシが望む形じゃなかった。
さて、とりあえず、今日を生きなきゃ。
アタシは宇宙港までの道を歩いた。
残ったお金は、衛星エンリケへの片道切符に消えた。
最近になって開発が進んだ星で、星の全体を覆う分厚い氷の下に、巨大なシティが発展していた。
何のドラマも事件もない船旅を終え、アタシはその星に足を踏み入れた。
随分と賑やかな街だ。
若さと、熱気と、そして野心にあふれている。
こういう雰囲気は嫌いじゃないな、と思いながらも、アタシはポケットから、一枚のカードを取り出して、そこに書かれた番地をめざした。
そこは、随分と治安の悪そうな一角だった。
スナックやバーが立ち並び、酔った男と女の嬌声が飛び交っている。
歩くだけでいろんな輩に声をかけられ、辟易とした。
そのせいで、目的の場所を探し出すのには、随分と手間取った。
ようやく、目の前に、探して求めた看板を見つけた。
驚くほどに落書きだらけで、最初は本当にここがそうなのかと不安になった。
『全宇宙・どこでもなんでも届けます・オレンジ急便』
そこにはそんな文字が刻まれていた。
アタシは大きく息を吸って。
ドアを開いた。
「すいませーん。ここでバイトを探してるって聞きましたー、経歴不問って本当ですかー」
しばらくの沈黙の後。
聞き覚えのある間延びした声が、アタシに応えた。
エピソード2 おわり
エピソード2
いかがでしたでしょうか
お楽しみいただけましたでしょうか
もし、少しでも喜んでいただけたなら幸いです
お付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました。
お願いがあります。
ぜひ、感想や評価など、皆さんのお声をお聞かせください。
また、その声を力にして、次回作も頑張っていきたいと思います。
ブックマークも、して頂けると、本当に嬉しいです。
では。
このへんで。
次回作品の予告です。
蒼翼のライ エピソード3
~美貌の元宇宙海賊は、レースクイーンに転身しました~
6月17日(水)より、連載スタートします。
ぜひ、次の冒険も、お楽しみください。
それではまた、よろしくお願いします。




