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96話

 犯人はメルさんの隣の息子である事が分かった。

 アタシは盗賊が隣の息子に接触したのが偶然とは考えられない。

 こんな事、根拠は無いし、あくまで仮説の域だ……

 その事も踏まえて聞こうとアタシは村を目指し門を出ようとした時



「よう、帽子のお嬢」 アタシを呼び止めたのは若いハイゴブリンでダナンさんの仕事仲間だ。



「風の勇者の事?」


「まぁな、どんな人だったか気になっただけだ。 それにダナンさんが嫌ってるみたいな感じだったしな。 なんかあったのか?」


 門番に話を聞くと酒場での争いの前からどうも気にくわなかった様子で最近「あのビエントって言う風の勇者を知ってる気がするって言ってたなぁ」 と気になる事が聞けた。




 アタシは隣の家に行く前にギルドに向かい、資料室で何か手掛かりが無いかクエストの報告書や依頼書をみて見る事にした。


「記録ですか?」


「閲覧くらいできるだろ?」 資料室の受付嬢が渋々アタシをその場所に案内し、目当ての資料を探す。


 ギルドの運営は大きくなれば、それだけ公平性が求められる為、依頼の結果などの報告を閲覧が出来るようになっている。

 国などからの依頼は、閲覧に制限があるみたいで見る事が出来ないが、風の勇者ともなると宣伝も兼ねて功績を知らしめたいのか幾つかは閲覧が出来た。


(お、これだな) アタシが探していた盗賊団(ヴェント・ヴォラール)の記録だ。

 小規模でありながら荒らしまわっていたらしく強盗、略奪…… 最後には風の勇者に壊滅と記載されている。

 被害の記録の中で何年も前だが1件だけ妙な人物の記載があり、それにその目撃者の名前にはダナンさんの名前があった。

 アタシは誰にも見られていない事を確認し、そっとそのページを破り、ポケットに入れ資料室を出る。



「あなたも変な人ですね。 過去の事件を調べに来るなんて」


「アタシの他に誰か来たのか?」 受付嬢の話によると年配の人にも数日前に同じ場所に案内したとの事だった。

(数日前って言うと…… もしかしてダナンさんもここに来たのか)



 資料室を出た後、ギルドの入り口で何やら騒がしく集まる様子に興味がわき向かう。

 何やら聞いた事のある女性の声に近づいてみるとメルさんの隣の住人で身体には幾つもの刺し傷や切り傷で服が真っ赤に染まっていた。



「さっき、盗賊が来て…… お、襲われたのよ」


「ご婦人、落ち着いて下さい。 ヴェント・ヴォラールはもういません。 風の勇者が討伐を――」


「本当に盗賊(ヴェント・ヴォラール)だったのよ。 あのタトゥーは間違いないのよぉ お金も取られて…… 息子の命まで――」 受付嬢のセシールに必死の形相で掴みかかり、訴えるその姿はアタシから見るとゲスだが、この人にとっては愛しい一人息子だった事だ。


「お母さん、息子さんの事は!?」 掴んだ服を手を払いのけられ、泣き崩れる母親だったが傷が深く、その場で他の職員が回復魔法を行うが時すでに遅く衰弱していくのが見え、アタシは慌てて彼女のそばに駆け寄る。


「き、君、何をしているんだ!?」


「盗賊にやられたって本当なのか?」 母親は頷き、最後に何かを言おうとしたところで力尽きた。

 手でそっと目を閉じ、床に寝かせる。

 その場にいたギルドの職員に銀貨を握らせ、埋葬の手配を頼んでいると「ちょっと! 冒険者でもないあなたが何の用ですか?」 声を掛けられ振り向くとセシール

 に「別にもう用はねぇよ」 とだけ答える。



「あなた、この人を知っているのですか?」


「あんたに言う必要はあるのか? さっき、あんたが言った通りアタシはもう冒険者じゃないんだろ」


「余計なことに首を突っ込むと痛い目を見ますよ」


「何故?」


「何故ッてあなたは――」 セシールを少し揶揄えば、面白い事が聞けそうな気がしてアタシは疑問に思ったことを聞いてみる事にした。


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