94話
店を出た後、アタシが次に訪れたのはメルさんが暮らしていた村だ。
メルさんの家からさほど離れていない場所の家に聞き込みを行う為、ドアをノックすると出てきたのは、葬儀の時にアタシがメルさんの身体を拭くことに怪訝な顔をした女性だった。
メルさんの事を聞こうとしたが「別に対して関わりがあったわけでもないから……」 あまりしゃべる様子もなく「もし話してくれたらお礼はする」 バッグから銀貨を3枚出し女性に見せる。
「もし知らないんなら別に話さなくてもいい。 この村で一番のおしゃべりな奴は誰かだけ教えてほしい。 教えてくれても銀貨は渡すけど」
「じゃ、じゃあ……」
旦那に捨てられ、出戻りのでこの村に帰ってきた。
そして元旦那は冒険者でその仲間と出来ていて別れたらしい、何度かやっては来ていたが父親であるダナンさんに追い払われていたそうだ。
「可愛そうにねぇ あの子綺麗だったのにあんなことになって……」
「他に何か知ってる事は?」 すると向こうから手を出して来た。
アタシは素直に銀貨を2枚乗せると続きを話し始めた。
父親の収入だけでは足らず自身も娼婦として働いていたらしいとの事だった。
「で、あの火事があった日。 何か変わったことは無かったか?」
「それが聞きたいならもう少し欲しいわね。 何なら金貨でもいいわよ」 こいつ、話している時、悲惨そうな顔一つすることなく。
その顔はいやらしく歪んでいることに気が付いているのだろうか?
「もう銀貨を5枚も渡したんだ。 情報を小出しにするのは勘弁してくれないか?」
「じゃあ、これで話はお終いかしら?」 アタシは魔法を発動し、銃を相手に突き付けると驚いた顔で「お、脅しのつもり? そんなことして言いわけ――」 一発をドアに打ち込むと、その音に驚き床に座り込み、怯えた目でアタシを見上げていた。
「いいか、おばさん、アタシは誠意を持って話しているし、情報には金を払う。 でも小娘だと嘗めて掛かると痛い目を見る事だってあるんだぜ。 さぁ…… どうする?」
「ひ、ひぃっ」
素直になったようで色々と話を聞くことが出来た。
その夜は何も知らないし、気が付いた時には家が燃えていて、いつ殺されたかは分からなかった事。
それに街の噂で彼女が務める店で客とのトラブルがあったらしい。
店の名前は娘蝶館と言う。
「あの子はね。 自業自得だよ。 早く新しい旦那を見つけていればこんなことにはならなかったのに――」 聞くに堪えず、必要な事が聞けたので退散するがその間際に「冒険者なんてみんな異常者ばかり。 もう来ないで!」 アタシが反論をする前に逃げるように扉を閉められた。
女の家の2階からの視線を感じ見上げると男と目が合い、サッ隠れてしまった。
薄気味悪さを感じ、急いでその場を離れ、次の手掛かりを探す為にもう一度、街の裏路地を目指した。




