93話
「おっと、妙な気は起こすなよ。 アタシの魔法が速いかあんたの魔法が速いか勝負する気なら受けて立つけどな」 アタシは銃を構えたまま近づき、フードを脱がそうと手を掛けた瞬間「フルフィウス」 水の塊に押され、距離を取られた隙に逃げられてしまった。
「ったく、服を濡らしやがって!」 タバコを取り出し、煙を吐き出す。
緊張が解け、壁にもたれ掛かる。
朝には店には無事に帰っては来れたが「びしょ濡れだね~ で、何かわかった?」 店で掃除をしているアルエットに「とりあえず、熱いコーヒーがほしい」 と頼み。
用意されたコーヒーを飲みつつ、酒場であったことを話す。
「この辺で有名な盗賊団って誰なんだ?」
「物騒だからねぇ~ 大きい奴だとヴェント・ヴォラールって呼ばれてるけど――」 アタシはダガーを取り出し、見せるがこのダガーがヴェント・ヴォラールの物かは分からなかった。
「この辺で武器を売ってる所はどこだ?」 アタシはアルエットに場所を聞き、すぐさまその足で武器屋に向かう事にした。
人ごみの中を歩いている途中、誰かに見られている気がしたアタシは人ごみに紛れつつ近くの屋台に隠れるとあの時のフードを被った人物を見つけた。
アタシを探すように辺りを見回すが見当たらない事に諦めたのか走り去って行くのが見えた。
「嬢ちゃん、いきなり俺の屋台で何してんだよ」
「悪いなおっちゃん、詫びに一串買ってくよ」 と朝食代わりに串に刺して焼いた肉を買う。
肉に少し臭みはあるがなかなかの美味でパンに挟むと肉汁も余すことなく楽しむことが出来た。
武器屋に着いたアタシは周囲を確認し扉を開ける。
店内は金属の独特な匂い、それに様々な武器、防具が鎮座されていた。
「へぇい、何の御用で?」
「この魔石を買い取ってくれるか?」 男から取り上げた魔石を店主に差し出すとスキルを使って鑑定した後、銀貨を5枚ほど渡され、バックにしまう。
「あと武器を売りに来た。 買値が良かったらそのお金で他の武器を買うつもりにしてる」 と伝え、さっそくダガーを見せる。
店主の男がまじまじとその武器を見た後「こいつはうちでは買い取ることが出来ない」 とだけ言われ、理由を聞くと色々と答えてくれた。
この武器はこの辺では有名なヴェント・ヴォラールと呼ばれる盗賊団の武器でしかもよほどの信頼のおける人物じゃないともらえないし、そんなもんを買い取ったら、生き残った残党に店が潰されるとの事だ。
その証拠に、刃の表面に盗賊団の印が刻印されていた。
「残党?」
「あぁ、数日前に風の勇者様が討伐したんだけどな…… 噂だよ。 でもお嬢ちゃん、悪い事は言わねぇそんなもん早く捨てるに限る」
「それだけ話してくれれば十分だ。 悪かったな」




