89話
教会での祈りの後は墓地に埋めるその前に法義の銀で出来たコインを遺体に乗せる習わしがある。
「これを彼らの胸に……」 無事に神のもとに行ける御呪いらしいが、そんなものを信じちゃいないアタシは、神父から受け取った銀貨を握り魔力を込め、三枚の銀貨を弾丸に変える。
神父は何か言いたそうな顔をし「何か問題でも?」 と聞くと何も答えずアタシは3人の遺体に握らせると蓋が閉められた。
アタシは地中に埋められて行く3つの棺桶をじっと見ていると「大丈夫、ブロンディ?」 とアルエットが心配そうにアタシに話しかけ、「アタシは大丈夫だから」 とだけ答えたが
「ずっと怖い顔してるよ」 アルエットの言葉にアタシは何も答えることが出来なかった。
その夜も酒場はいつも通り営業されたが客足も少ない事から早めに閉店する事となった。
掃除も終わり、椅子に腰かけ、タバコの細い煙を眺める。
思い出されるのは傷を縫った事よりも、あの明るかった3人の笑顔が脳裏に浮かんでは消え、レミルの笑い声やダナンと一緒に食事した事、アタシの歌を褒めてくれた事、そして初めて会った日、震えるアタシをメルさんがベッドで抱いてくれた事だった……
「ご苦労だったな……」 2つのグラスと酒瓶を持ってグラウがアタシの前に座り、酒を注ぎ、一つをアタシの前に置くとカンッとグラス同士を軽く打ち飲み干す。
「おめぇは飲まねぇのか?」 グラスを手に取り、一気に飲み干すと強いアルコールがアタシの喉を焼く様な痛みに軽く咽返る。
2杯目が注がれ、「それ飲んだら早く寝ろよ」 と自分のグラスの酒を飲み干す。
「なんで、あの人達が殺されなきゃいけなかったんだよ」 アタシが小さく呟く。
助けることが出来なかった悲しみと後悔はお酒で晴らされる事は無くより深く沈んでいく気がした。
「証拠がなけりゃギルドでもどうする事も出来ねぇよ」 証拠がなければしょっ引く事も出来ない事は分かっている。
だったら自分で証拠を見つければいいアタシはその決意を胸に酒を一気に飲み干す。
夜が明け、犯人の手掛かりを見つける為にアタシはもう一度、あの場所に向かう。
殺した奴が分からない以上、何とか手掛かりとなるものがないか焼け跡の中を調べる。
煤「すす」が舞う中、これと言って手掛かりになる様な物はなく、メルさん達の焼け残った服、黒く焼けたレミルの絵本と温かな家庭を思わせるものが多く見つかるくらいだ。
日が上り、(やっぱり、手掛かりなんて……) と帰ろうとした時、キラリと光る何かに気が付き、向かうとかつてメルさんの寝室だった。
(この辺から光ったよな……) ベッドの下を覗くと1本のダガーを見つけ、それを拾い上げて見るとブレードの部分は血が乾いていて赤黒くなっていた。
(これって――) カタンッと音と気配がして後ろを振り向くが誰もいなかった。
弾丸を入れたポケットに手を入れ、魔法を発動し、辺りを警戒する。
長居は無用とアタシはダガーを布に包みバッグに押し込み、その場を離れようとした時、後ろからの足音に再び振り向くと、アタシを襲おうと誰かが飛び掛かってきた。
すかさずトリガーを引いたままで撃鉄を起こすと弾丸が発射され「ギャウッ」 と声がしそのまま崩れ落ちた。
呻き声のが聞こえ、生きていたが仲間が来る前にアタシは一目散に逃げる。
その後は無我夢中で走り、何とか無事に店に着くことが出来てホッと胸を撫でおろす。
スイングドアの開く音に一瞬ビックリしていると「何やってんだよ」 と呆れるグラウがいた。




