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83話

「へぇ、それタバコってやつかな? 女の子が吸う所初めて見た」


「だからどうだって言う――」 目の前から風の勇者が消えたと思うと背後から手を回され、首にはナイフを突きつけられていた。

 一瞬の事で動きが読めず、「動かない方がいいよ。 綺麗な肌に傷がつくからね」 背筋から全身に緊張が走り、呼吸が荒くなる。


「僕の称号は風の勇者だけどジョブは盗賊(シーフ)でね。 このくらいの事は出来るんだよね」 ナイフに魔力が帯び、首の薄皮を切ったのか薄っすらと血が流れる。

 アタシの左肩に腕を乗せ、背後から抱き付かれる形になる。


 好きでもない男に抱き付かれ、挙句その腕が胸に触れている事実に殺される以上の不快感がアタシに降りかかる。

「息が荒いけど、興奮してるの?」 耳元で囁かれ、限界が来たアタシは渾身の力を右肘に込めて打ち込み、そのまま、右手で服と左手で絡めた掴んで体制を引くして、右足を軸に出入口に向かって投げ飛ばすが、相手は曲芸師の様に着地する。



「君、面白いね。 パーティーの雑用係くらいなら募集してるけどどうかな? ここよりかは給料出るけど」


「ハァ、ハァ…… お断り、ここの仕事も結構楽しいんだ」


「断られちゃったし、みんな、そろそろ帰ろうか」 他の三人が立ち上がり、出口に差し掛かった時、大きな人影が彼らの行く手を遮った。



「急いで帰って来たらこんな事になっているとはな……」


「これはこれは、こんばんは。 元ダイヤモンドクラスのグラウさん」


「この状況は一体何なんだ?」 明らかに店の状況を見て怒っているグラウに余裕を崩さない風の勇者は「ちょっとした小競り合いですよ。 弁償しますんで」 と袋から金貨を数枚を差し出す。

「弁償は当然だ。 だが、ガキのおめぇには聞いてねぇ 説明しろブロンディ」 女戦士達の視線が刺さる。


「グラウ、嬢ちゃんは悪くねぇ 俺が悪いんだ」と弁明が出るが黙ったままのグラウに「お客の命に危険が及んだからアタシが助けに入った」 と説明すると「そうか、今日はもう店は終わりだ」 グラウが風の勇者から金貨を受け取り数える。


「額が足りねぇな」 グラウの言葉にお供の3人が抗議を上げる中、「それで十分だと思いますけど」 と言う風の勇者に「俺の従業員に怪我させたろう。 せめて謝罪くらいは行ったらどうなんだ?」 風の勇者はニヤリと笑う。



「噂ではギルドを追い出され、身売りしてこんな所で働かされているって聞いて、救ってあげようと来たんだけど違ったかな? 今なら僕の仲間に――」 その目は心底、人を見下しているようで例えるなら、まるで新しい武器を選ぶようなそんな目をしていた。

 いや、現実には武器なんかじゃないもっと別の何かをアタシは感じた。



「2度も同じことを言わせる気か? アンタについていく気はない!」


「ふーん、そっか…… 可愛そうに僕に着いて来れば自由が手に入ったのに残念。 そんな恰好したオークでもよっぽど身体の相性がよかったんだね」 アタシが言われた意味を理解する時にはグラウの怒号が響くと同時に相手も構える。


 ポケットに手を入れ魔法を発動し、相手に向け、撃鉄を起こした瞬間に発射され、弾丸が風の勇者の頬をかすめた。

 銃声に双方動きが止まり、一瞬の出来事に勇者も自分に何が起こったのか分からず、唖然としている。


「まぐれでも僕に当てるなんてね……」 お供が泣きそうな目で慌てて回復魔法を掛けながら「痛くない?」 だの慰めの言葉を掛け、アタシを睨み付ける。

風の牙(ヴァン・デファンス)」 風の塊が見えたと思うと周りの景色が動き、壁にぶつかり、服を爪で切り裂いたような跡と少量の出血が見られ、攻撃されたことを理解する。


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