81話
「まったく、酷い目にあったよ」 朝からテンションがガタ落ちなのはアタシも同じでそれはもう、過酷な訓練が待ち受けていた。
「オラァァ! 昨晩の元気はどぉしたー!」 やっと慣れてきたかと思えば倍の重さの鎧を着て走る事となり、途中、メルさんに出会い話しかけると「え、ブロンディちゃんなのよね!?」 と事の経緯を話すと驚いたようで「頑張ってね。 また家にいつでも食事に来なさい」 と言われ、嬉しかったがすぐに軽く寒気がし、グラウの怒号が聞こえ、慌てて走り、メルさんに別れを告げる。
「娘も待ってるからねぇー」 と後ろから聞こえ、手を振り返し、訓練に戻った。
いつもの様に弾丸を作り続けていると急に頭の中の魔導書のページが追加され、項目の黒く陰っていた部分には【マグナム弾の生成が可能となった】 と書かれていた。
大型のゴブリンを撃ったあの時の弾丸である事が理解できたが6発を撃つとなると手がどうなるか何て考えただけでも恐ろしかった。
店での接客は相変わらずだが今日は珍しく若い冒険者たちが食事に来ていた。
その内容はどうやらギルドからの依頼で、兼ねてよりここら辺を荒らしまわっていた盗賊を倒したらしい。
ギルドからも称賛され、賞金もたんまり貰え今日はその祝いだそうだ。
「おーい、お酒おかわりー」
「はーい」 テーブルに向かうとそこには忘れもしない、アタシが倒したブラックハウンドを横取りした奴らがそこに居た。
一瞬声が出なくなるがひどく酔っているようで追加の注文をしてくる。
金髪の女は一緒の男に夢中に話しかけ、ローブの女は食べるのに夢中、アタシの腹を蹴飛ばした女戦士は酒に夢中になっていた。
「じゃあ、よろしくねぇ~」と注文を終え、手をヒラヒラさせる女戦士。
アタシには気が付いていないようだった事にホッと胸をなでおろし、テーブルの皿を片付け席を離れる。
出来るだけテーブルに近づかないようにしていたがアルエットが注文された料理をアタシに運ぶように促され、手が離せない事を伝えるが「こっちも手が離せない~」 と言われ、仕方なくまたあのテーブルに向かう事になってしまった。
(ったくしょうがねぇ) 注文のあったエールと肉料理を運び終え、悟られないように次の仕事に向かう。
「おねぇさん…… どこかで会ったことある?」 ローブの少女に言われ、心臓が跳ね上がるような言葉に「ひ、人違いでは」 としか言えなかったが、男と話していた金髪や女戦士の視線に一瞬戸惑うがアタシにお構いなく会話が続いていく。
早く離れようと立ち去るが狭い店では嫌でも会話が聞こえてくる。
「ギルドの噂知ってる? 笑えるよねぇ 見たかったなぁ」 金髪が話し始めると酒が入っている事もあり次々に仲間内で話が盛り上がっている。
「ベイナスよぉ あんな雑魚きっとどこかで野垂死んでるぜきっとさぁ」
「あぁ、僕はギルドの噂で実力が無いからギルドマスターを誘惑して取り入ってもらおうとしたとか聞いたなぁ」
「まぁそんな恥さらしの人物がいるなんてねぇ」
「名前何だっけなぁ~ バロじゃなくて何だっけ?」
「確かブロンディなんて名前だったわね」
ゲラゲラと下品に笑う様子に怒りが沸き、魔法を発動しようと手に力を入れた時、アタシの手首を持たれ、後ろに引かれる。




