71話
「売った何て人聞きが悪いなぁ 僕たちは最初からそのつもりで君と組んだんだよね。 マリカ」
「あなたの事は最初から嫌いだった。 ギルドマスターの誘いまで蹴った話を聞いて、私がどれ程、欲した誘いをこうも簡単に蹴るなんて馬鹿にも程があるわ。 だからね。 あなたのその顔が見たくて、この話に乗ったの、だからこの結果にすごく満足よ」
アタシを蹴り、その足で頭部を踏みつけられ、痛みよりも屈辱の方が大きく、敵わない戦意が喪失したアタシにはどうする事も出来なかった。
「マリカも悪どいなぁ。 僕ならここまでしないけどね」
その場にしゃがみ込み泣き崩れ、「気は済みましたか?」 とセシールさんが駆け寄り、アタシの右手を包む。
触られ、ズキズキと痛む右手を包むセシールさんの手が光り出すとゆっくりではあるが痛みが引いて行く。
光が消え、右手を見ると傷がきれいに治癒されていた。
「これでわかったでしょ あなたには冒険者は向いていないのよ。 こんな誰でも使える魔法すら使えないのに無謀すぎるわ」
「でも、あの時は破壊できたのに何で!?」
「まだわからないの? 教えてあげるけど、あの時は事前に細工してたのよ」
「細工ってどういう事だよ!」
セシールさんが言うにはギルドマスターであるゲインがアタシの希少価値のある魔法の使い手なら、自分の手元において置きたかったが為に細工して合格させたことが伝えられる。
「どうかしら、これでわかったならやめなさい」 と手を差し出され、「返すつもりはない」 と差し出される手を振り払い、アタシは演習場を出る為歩く。
後ろから「いい加減にしなさい。 学びもないあなたに何が出来るの」 と言われたが言い返す事が出来なかった。
「ゲイン、いいの? こんなのを引き入れて!」
「うるさいわね。 受付嬢は黙って仕事していればいいのよ」
いくら言ったところで、マリカはどこ吹く風で、勝ち誇った彼女には通じず、セシールさんはそれ以上何も言わず、去って行った。
「俺としては野心家で結構なんだけどなぁ ガハハハハハ ブロンディ、聞いての通りだ。 俺からもやめる事を勧めるぞ。 何なら俺の女にしてやろうか? しっかりと慰めてやる。 もちろんベッドの上でだがな」
マリカの足を外し、アタシは立ち上がって、その場を離れると「おーい、そっちは俺の部屋じゃないぞ」 と下品な笑い声が響きく中、その場から逃げるように走る。
継母家族に裏切られた時の事を考えればとは思うものの、信頼した仲間に裏切られた痛みはそう簡単に忘れられそうになく、殴られた痛みとはまた別の痛みがしつこく疼く結果となり、何もやる気が起きるはずもなく、ただ外のテラスでタバコを吸いながら空に消える煙を眺める。
どうする事も出来ず、虚無感が増すばかりだ。
「隣、良いかしら」
「勝手にしろよ」
セシールさんが隣に座るがさっきの話で相当気まずく、タバコをさっさと吸い、殻を瓶に入れ立ち上がる。
「酷だけど、現実が見えたはずよ。 今すぐ資格を返すなら受け取るわ」
「これはアタシが掴み取った――」
「まだ分からないの? あなたは何も掴んでなんかいないわよ。 その資格だってお情けで貰った物じゃない」
「なにぃ!?」
怒りが一気に沸点に達し、「これはアタシが条件をクリアしてもらったんだ。 なんで渡さなきゃいけないんだ。 意味わかんねぇよ!」 と怒鳴ると、ゆっくりとセシールさんが立ち上がり「ついて来て」 と促され、渋々アタシが付いて行くと、演習場だった。
「今更、何でこんな所に用が――」
「黙ってください。 今からこれをもう一度、やっていただきます」
用意されたのはあの時と見た目には何の変わりもない。
試験で使った人型の的だった。
「なんだよ。 またこれを破壊すればいいのか?」 と銃に6発の弾丸を装填し、引き金を引き、全弾打ち込んでいく。
「な、なんでだよ……」 確かに全弾命中していたが、的が崩れる様子もなく、弾丸の穴は開いているが崩れる気配がなかった。
(ならこれで) と新しい弾丸を入れ、撃鉄を下ろし、魔力を銃に流しトリガーを引くと
その瞬間、爆発音と共に銃が文字通り弾け飛び辺りに魔法の残外か光の粒が舞い、弾丸は発射されることなく、足元に転がり、右手で拾おうと手を伸ばすと、激痛が走り、叫ぶ。
それでも、痛みを堪えて魔力を流し、銃を形成しようとするが上手くいかない。
「もういい! 魔法が使えないなら」 とナックルダスターで的を殴りつける。
何度も何度も血に染まり、滴り落ちようとも構うことなく殴りつけたが、結果は変わらなかった。




