61話
リーダーらしき剣士の話しによると、黒い獣はブラックハウンドと言うハウンドウルフの上位種で、この近辺を荒らす厄介な魔物をギルドからの依頼で討伐に来たという事だった。
おとりのハウンドウルフの群れとの戦闘で見失いそうになった所で何とか追いつこうと行方を追っている途中らしい。
「泣けるぜ……」
「それより知ってるのか知らないのかはっきりしてくれる?」
「暇じゃ…… ない……」
アタシは親指で後ろを指すと「あっちね」 と三人がその方に向かい、アタシもその後をゆっくりと追う。
「何だよ。 死んでんじゃん」
「そうね。 でも誰が倒したのかしら」
「アタシが倒した。 かなり苦労したが、さっきの話を聞いて納得だ」
三人がアタシを見て呆気にとられたような表情が少し面白かった。
どうにも信じていないようなので事の経緯を説明するとなにやらひそひそと話し始め、アタシは獲物を解体しようとナイフを入れると、後ろから首に大きな衝撃が加わり、地面に倒れた。
倒れるアタシを余所に朦朧としながら、女戦士が獲物を抱える姿を見つけ、獲物を奪われる訳にはいかずフラフラと立ち上がる。
「あれぇ? 効いて無かったんだ。 タフな人」
「何しやがる! そいつはアタシが倒したんだ。 触んじゃねぇ」
「こいつはあたしらが狙ってたんだ。 それがたまたま、ここで死んでいた。 てめぇが倒した何て誰が信じるんだよ」
憎たらしく笑う女戦士に殴りかかろうとした瞬間、こぶし大の大きな岩がアタシの腹部にめり込み、痛みに蹲る。
「……危ない」
「ありがとな、ミエル」
女戦士に蹴り飛ばされ、地面を転がる。
咳込むと血の混じる唾液が吐き出され、痛みに立ち上がることが出来ず、どうする事も出来なかった。
「じゃあね~」 と三人が立ち去るのをただ見ている事しか出来ず、獲物を奪われ、悔しさに嗚咽だけが森に響いた。
どのくらい気絶していたのだろう。
辺りは薄暗く日が沈みかけ、痛む腹部を抑え、何とか立ち上がり、来た道を戻る。
怒りと悔しさが渦巻きながら歩を進めると、そこにはアタシが最初に狩ったハウンドウルフの亡骸を見つける事が出来た。
やっとの思いで見つけたが捕食された後なので、内臓や血が散乱するひどい有様に気が滅入る。
吐き気を抑えながら解体し毛を剥ぎ取る。
時間が経った血の臭いと内臓に、とうとう我慢できずに嘔吐し、やっとの事で刈り取ることが出来たが、手は洗っても落ちない血の臭いのせいで、タバコを吸う気力もなく、ギルドを目指し、帰路につく。




