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60話

 

 恐怖で震えるアタシを余所に再び体当たりをし、身体が吹き飛ばされ転がる。

 何度もそれは繰り返され、全身を打ち付ける痛みに何とか顔を上げると黒い獣は襲ってくるわけでもなく、湿った獣の匂いが鼻をかすめ、ただアタシを見つめるその赤い目は甚振るのを楽しんでいるように見えた。


 いよいよ体力の限界が近づき、朦朧とする意識の中、走って来る獣。

 何かないかとバックを探ると固い物を掴む、(せめて、一矢報いてやる)と取り出す。



「ガォン」 と吠え、アタシに噛み付こうと牙をむく。

 小瓶から黒い液体が獣に向かって振りまかれ、獣の頭部や口にかかり「ギャイン」と声と共に地面に倒れた。


 のたうち回る獣から濃いタバコの匂いが漂う。

 その小瓶はアタシがいつも使っている灰皿で、中にはたっぷりとタバコのエキスが、水に溶けている。

 それは鼻の利く獣が直接、嗅げば悶絶は必須だった。


 これはチャンスと痛みをこらえ、歩を進めるが相手も諦めてはいない様で、アタシを威嚇する唸りが聞こえる。

 血走った目に涎をダラダラしながらでも戦意は喪失しておらず、こいつはアタシを殺し、喰らうまで追い続けてくる事を理解した。

 後はどちらが生き残るかを決めるしかなく、アタシは覚悟し逃げるのを諦め、バッグから6発の銃弾を取り出す。

 手早く装填し、獣を睨みつけ、銃を構えた。


 カチリッと撃鉄を下ろし、構えて獣の動きを待つ。

 殺しきれるかはわからない。



 でも



(やるだけの事はやってやる。 タダでアタシを喰えると思うなよ!)



「ウォォォォォン」


「しまった!?」



 遠吠えと共に飛び掛かる獣に気圧され一瞬の判断が遅れたが、後ろに飛び、それを取り戻すように引き金を引きながら撃鉄を叩き、夢中で銃弾を獣に打ち込んでいく。

 炸裂する6発を撃ち尽くす。


 カチンッカチンッと弾が出なくなり、ドシャリと獣が崩れ落ちる。

 鼻血を拭い、痛む身体で近づくと、舌を出した弱々しい息をする黒い獣がそこにいた。

 もう、戦う意思のないこの獣にアタシは一発の弾丸を銃に入れ、頭部に狙いを定め、引き金を引く。

 弾丸は頭部を撃ち貫き、地面には血だまりが見られ、今度こそ終わったと地面に座り込み、タバコに火を点ける。

 吐き出された煙がユラユラと漂い、身体のあちこちが痛むが気持ちだけは和らぐ。

 1本目を吸い終え、小瓶がない事を思い出し、よたつく足で拾いに行き、吸い殻を入れる。

 そのまま続けて2本目に火を点けた時、遠くの方から「おーい」 と声が聞こえ、こっちに走って近づいてくる三つの影がのが見えた。

 アタシの前に現れた三人の少女、金髪ロングヘアーの剣士、緑色の髪をした細く引き締まった大剣を持った女戦士、その二人の後ろに隠れるようにローブを深くかぶった魔法使いがアタシに声を掛けてきた。




「さっきここで黒い獣を見なかった?」


「あたしら、そいつを追ってるんだ」


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