表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/123

59話


 森の中は静かで鳥の鳴き声ぐらいしか聞こえず、辺りを見ても魔物1匹見つからず、途方に暮れ、木にもたれ掛かり、タバコを吸う。

(ずいぶん奥まで入って来たなぁ)

 初めて禁忌の森に入った時とは違い、魔法が使える。

 これだけでもアタシにとっては心強く、不思議と落ち着いていた。


 微かな気配と共に「グルゥゥゥゥゥゥ」 と唸りが聞こえ、振り向くと灰色掛かった毛並み、裂けた口から四足の獣がアタシを獲物として睨みつけていた。



(こいつか……)



 魔法を発動し、弾丸を装填した瞬間、飛び掛かってきたハウンドウルフの牙が見え、慌てて銃を撃つ。

「ギュン」 と血飛沫とくぐもった声と共にドサリと倒れる。

 僅かに動くのが見え、後ろに下がり、急いでレッグバッグから6発の弾丸を取り出し、装填し様子を窺う。

 運よく腹部に当たったらしく、血を流す魔物を見てあの時、殺した獣人が思い出し、嫌な汗が背筋から流れた。

(落ち着いて、落ち着いて) と言い聞かせ、気持ちを切り替える間に魔物は腹部の痛みに耐えたのか立ち上がり、アタシを睨みつけ、唸り声を響かせ、威嚇する。

 ケリをつけようと、しっかりと狙いを定め、撃鉄を叩き引き金を引く。

 数回の破裂音と共に弾丸は首や頭部の周辺に着弾し、倒れ、血を流し、そのまま動かなくなった。



「や、やったんだよな……」



 落ちていた棒切れで魔物の身体を突くがピクリともせず、無事に倒せたことに安堵する。

 ナイフを持ち恐る恐る弾丸で出来た腹部の穴からゆっくりとナイフを入れ、毛皮を剥がしていく。


 昔、何度かグエルと大将に連れられて革の材料を狩りに行った時の事を思い出す。

 あの時は鹿だったけど魔物の毛皮の剥がし方も変わらなかったが筋肉質なのか作業が進まず、一端休憩し、タバコに火を点けようとした時、「ワォォォォォォォン」 と大きな遠吠えが聞こえ、慌てて銃を構えて、辺りを見渡すとこっちに向かって黒い何かが走って来るのが見えた。



(な、なんだよあれ)



 近づくにつれ、見えてきたのはさっきのハウンドウルフとは違い、毛並みは黒く、赤く光る眼に背筋にジワリと汗が滲むのを感じた。

(さっさとケリをつけてやる) と狙いを定める。


 視界がクリアになり、自然とトリガーを引くと弾丸が発射され、魔物へと向かっていく。

(やった) と感じたその瞬間、黒い獣の魔物は飛び上がり弾丸をかわす。



(うそ!?)


「ウォォォォォォォン」



 また大きな遠吠えが聞こえたと思ったら風の渦がアタシを襲い吹き飛ばされ、地面を転がり、擦れた痛みに耐え、身体を起こす。

 アタシを吹き飛ばした魔物の体はハウンドウルフの倍近くあった。


 黒い獣はアタシなど目もくれず、さっき仕留めた、ハウンドウルフを喰らっている。

 血を滴らせ、骨まで噛み砕く様子に嘔気し、その恐怖から、ゆっくりとその場を離れる為に立ち上がり、(今のアタシじゃ到底…… 勝てない) とこの場を早く離れる為に、一心不乱に走る。


 どれだけ走ったか分からないが息が切れ、その場で膝をつくと心臓がバクバクと破裂しそうなくらい音が耳に伝わり、もし、自分があの爪で切り裂かれ、牙で肉を喰いちぎられる事を想像し、嘔吐する。


(こんなはずじゃなかった) と自身の浅はかさを呪うが今は何とかしてこの場を切り抜けて無事に街に帰る事を考えようとするが、恐怖で頭が上手く、考えることが出来ずにいた。

 タバコを吸って落ち着こうと思い、取り出して口にくわえた瞬間、ガサッと音がして辺りに血の匂いが微かに漂う。

(あ、アイツが来た!) 身体を縮こませ、息をひそめ、黒い獣が去るのをじっと待つ。

 ガサッと音がし、どうやら諦めたと思い、静かに息を吐く。

 今のうちにこの場を離れようとした時、背後から強い衝撃と共に地面と空が交互に見え、止まると左腕に強い痛みと一瞬、何が起こったか分からずにふらつく頭で見るとそこには唸る黒い獣が目の前にいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ