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58話

書類を書く手を止め、机の右下の引き出しから「それではこの用紙に記入してください」と用紙を渡され記入していく。

 一瞬、チェスカと書きかけて、もう名乗る事の出来ない名前だという事を思い出し、ブロンディと書き込む。

 職業は近しいものとしてとりあえず弓兵と書き、受付に提出する。



「あの、弓兵と書かれてるけど弓は……」


「こ、ここに来るまでに壊れちゃって」



 疑り深く見られ、「少々お待ちください」 と言われ、受付の奥から職員が来て「少し、調べさせていただきますね」 と魔石のついた光る杖をアタシの頭上にかざす。

 光が消え職員が「弓兵ですか……」 と困った顔をする。



「あなたのスキル魔法についても、はっきり言って、詳細がまるで判らない。 何か心当たりない? 職業が分からないと登録のしようがないんだけど……」



 心当たりどころか、アタシ自身もまるで判らないから、どう説明すればいいのか困ってしまった。

 悪魔と契約してなんて絶対に言えないし、どうしたもんかと考えあぐねていると奥から大柄の男が出てきた。



「どうしたんだセシール、気難しい顔は相変わらずだな!」


「ゲインさんには関係ありません! 私の仕事です」



「まぁ、そう言いなさんな」と女性の尻を叩いて退かせた後、女性は立腹しながら奥に戻り、大柄な男ゲインがアタシの前に座った。

 半袖の筋肉質の腕には戦士を思わせる傷が多数にあり、顔にも斜めに大きな傷が入ってそして大きな筋肉の胸板どこからどう見てもギルドの職員には見えなかった。



「え~っと…… 嬢ちゃんは冒険者になりたいんだよな?」


「え、まぁ……」


「ギルドの性質上、スキル魔法つまり職業に適した魔法の記載は重要なんだよなぁ」



 ゲインと言う男の説明によるとギルドに登録するという事は恩恵が得られる。

 それは各国に対しての出入りがある程度は自由となる事で、アタシは見逃してもらえたが、本来は入るだけでも、お金のいる場所があるが少しの金額で済む。

 ギルドで販売されている商品はランクによって割引して購入することが出来る。

 後は国からのスカウトだ。


 ランクが高ければ当然、戦力としてどの国もほしくなる。

 ある意味、ギルドのクエストは人間と言う、商品の品評会だ。



「別に名前だけででも登録できるだろ?」


「まぁ出来るちゃあ出来るんだけどなぁ」


「何で渋るんだよ」


「さすがに職業不明はまずいだろ。 それじゃあ、パーティー組むときに困るだろうが」


「パーティー!?」



 一人で細々とやって行くつもりだったから、考えてはいなかったが確かに具体的な職業名がなければ職業に適した依頼を紹介してもらえない事に気が付き、考えあぐねていると「とりあえず、登録だけはするけど、実力を見せてくれないかしら」 とセシールさんが助け船を出してくれた。



「けどよぉ、実力って言っても自分の職業も分からないのに――」


「ハウンドウルフの1匹、見習いのあなたにはちょうどいい依頼だけど どう?」



 この依頼を成功させ、冒険者になる為にアタシは依頼を二つ返事で受ける事にした。

 早速、地図と街の門を出入りする為の証明書を渡され、依頼の説明を受ける。

 街外れの森に生息するハウンドウルフを1匹狩り、ギルドに持ち帰って来る事。


 注意事項として、死亡した場合は自己責任と言われた。

 ハウンドウルフは家畜を襲う厄介者で手軽な依頼として初心者が良く受ける依頼らしい。

 アタシは早速、セシールさんからの契約書にサインし手渡す。

「じゃあ、これを」とナイフを渡され、キョトンとしているとゲインが説明してくれた。

 要は今回の目的であるハウンドウルフの毛皮を刈り取る為の物でギルドから貸してくれるらしい。


「嬢ちゃん、気をつけてな」 とゲインに言われ、手を振り答え、ギルドに居た他の冒険者がニヤニヤと憐みの眼を向けられる中、それを無視してギルドを出た。


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