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57話

 身体に感じる重みとアタシを呼ぶ大きな声が覚醒を促され、目を開けるとレミルがどうやら朝食を知らせに来たのだった。



「ブロンディおーきーてぇぇぇぇぇ!」


「もう少し優しく起こしてくれよ」


「ダメ、だってぜんぜん起きなかったんだもん」



 顔を膨らませ、プイッとそっぽを向かれ、乱暴な起こし方の仕返しにレミルの脇をくすぐると笑い声が響き、「やったなぁ」とアタシの足をくすぐる。

 声を聞いたメルさんに「朝食冷めますよ!」 と呆れるように言われる。


「ブロンディ 二度寝はダメだよ」とレミルが部屋を出る。

 アタシはベッドの脇に置かれた服に着替え、鏡を見ると血の跡がきれいさっぱり無くなっており、メルさんに感謝した。


 食事に向かうとテーブルでは二人が神への祈りを行っていた。

 アタシも一応は祈るふりをする事にする。



「「親愛なる神々よ恵みに感謝します。 世界の平和を成し遂げた勇者にも感謝を……」」


「さぁ、食べましょっか」


「はーい」


 祈りが終り、昨日のスープとパンを頂く。

 味の染みたスープの具とパンに満足し、メルさんに食事と洗濯のお礼を言う。



「いいのよ。 助けてもらったし、あなたが居なかったら、2度と娘にも会えなかった。 それよりも――」


「その先は言わないでおこうぜ。 もう十分世話になったから……」



「ブロンディ何かあったの?」 と不思議そうに言うレミルに「秘密だ」 と答えてやると頬を膨らませる姿に幼い頃の妹を思い出し、懐かしくなる。



 出発の前に「行きしなで食べて」 とパンを包んでもらった。

「行っちゃやだぁぁぁ」 寂しいからか大泣きするレミルの頭を撫でてやり、又また会える事を約束すると泣き吃逆と共に頷く。

 二人に別れを告げ、ヴァンファタリテに向かう。




 日が高く上り、お昼頃だろうかとにかく風の国の中心【ヴァンファタリテ】に到着することが出来た。

 流石、国の中枢の街だけあって、門兵がいる門を見て少し興奮する。

 小さな村しか知らなかったアタシにとっていつか行きたいと思っていた街。


 村の学校を首席で卒業すると大抵はこの街で学生として招待され、学生の間は衣食住を保証される。

 何ともアタシには縁はない話だが、とにかく、この街で冒険者としてギルドに登録する必要があった。



 入り口では門兵がにらみを利かせ、一人一人に身分確認を行っていた。

 通常では身分を保証するものを携帯しておけばお金を少し払うだけで通れるが証明するものがない場合は……



「身分の証明するものがない!?」


「だから、ここのギルドの登録に来たんだけど」


「帰れ、帰れ、怪しい恰好の小娘!」



 さっきからこのやり取りを何度か続けていて、うんざりし始めていた。

 お金を払えば通してくれるはずなのに、ここまでごねられると流石に頭にきた。



「何で通してくれねぇんだよ。 金は払うって言ってんじゃねーか!」


「何度も言うが、貴様の様な浅黒い小娘が一人、カーラ村から来ましたって信用できなねぇよ」


「なんだとぉ!」


「何だ騒々しい、通してやればいいじゃないか」と年配の門兵がこちらに向かって歩いてきた。


「でも、こいつ怪しすぎますよ」


「まぁ聞け、嬢ちゃん、うちの娘を助けてくれたらしいしな」


(助けたと言えばメルさんで娘ってこの人は!)


「何だ。 父親が俺じゃ悪いってのか?」



 人の縁に救われ、何とか門をくぐり、街に入ることが出来た。

 さっきの年配の門兵はダナンさんと言うメルさんの父親で友人の所からの帰宅後、アタシの話を聞いて、「心配だから仕事のついでに見てきてほしい」 とメルさんに頼まれたらしい。

(なんにせよ助かった)



「ありがとうございます」


「メルの言った通り、いい子じゃないか」と帽子の上から頭を撫でられた。


「し、しかしこんな怪しい奴――」


「それに娘を助けてもらった。 俺が保証する」と相手の門兵に睨みつけると若い門兵は渋々、引き下がった。


「すまないね。 これも仕事だから許してやってくれ」 と頭を下げられ、街に無事着いたし、メルさんとダナンさんには感謝している事を伝える。



「また寄ってやってくれ、レミルも楽しみにしてる」


「あぁ、そうさせてもらうよ」



 ダナンさんと別れ、ギルドを目指す。

 街は村とは違い石で舗装され、歩きやすく、店も村とはまた違う活気に溢れていた。

 ギルドの看板を見つけ、中に入るとそこには、装飾の施された鎧やローブを着た冒険者が多く見られ、依頼の掲示板を見る人、装備の手入れをする人など沢山の人がいる。

 その中で登録の受付所を見つけ、さっそく、受付嬢に声を掛けた。



「冒険者の登録をしたいんだけど」


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