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55話

「へへっ その身体に俺の味をたっぷり、しみこませて――」


 鮮明に思い出されるあの時の様子にアタシの怒りは爆発し、相手の顔面にアタシの頭部をぶつける。

 怯んだ隙を突いて、銃で相手の胸部に向かって引き金を引く。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」 アタシの怒りが1発の銃弾と共に相手の胸部に穴を空ける。

「な、なんだよこれ……」 と相手も一瞬、何が起こったのか分からず混乱したように手についた血を眺め、次の瞬間、狂ったように叫びをあげ、噛み付こうと牙が見え、無我夢中で再び、相手の胸に引き金を引き、撃ち尽くしたところで力尽きたのか重なるようにして倒れた。

 身体を退け、立ち上がると倒れたままの獣人は血溜まりで動くことなかった。

 心臓の動きと共に荒い息と女性のすすり泣く声だけとなり、殺した事実にアタシは恐怖し、地面に座り込む。



「あ、相棒……」 ともう一人が呟き、呆然と死体を見下ろす姿をただ見ているが、震える手でかろうじて相手に銃を構え、相手が気づき、恐れてたのか、泣きそうな顔でこちらを見ていた。



「あ、あんたもこうなりたくなかったら…… い、今のうちに――」


「ひぃぃぃぃぃぃぃ」



 相手はすぐに逃げ出し、安心したのか一気に力が抜けるが震えが止まらず、タバコを吸うが一向に収まらなかった。

 自身の魔法が相手の命を奪ったと言う事実が重く圧し掛かり、しばらく、立てずにいた。



「あ、あの…… ありがとうございます」


 お礼の言葉に答えられずにいるとそっと抱えて立たせてもらう。

 膝が震えよろけ、上手く立てなかったが何とか踏ん張る事でコケることはなかった。



「わ、わりぃな立たせてもらって」


「こちらこそ助けて頂きまして、ありがとうございます」


「礼はいいけど仲間が来る前にここから逃げねぇとな」



 女性の手を引き死体を見ないようにしてその場を離れる。

 逃げる途中、女性が道案内をして何とかその場所から離れることが出来た。



「道案内されてここまで来たけど、ヴァンファタリテに行く予定だったんだけど……」


「あぁそれなら」と女性から道を聞くとこのまま道なりに真っ直ぐ行けば着くとの事だった。

 礼を言いさっそく、向かう事にしようと歩を進める。



「あ、あのもし宜しければ、今日は泊まっていきませんか?」


「あんたの村はすぐそこだろ? アタシは急いでるんだ」


「でも、助けてもらってお礼も何も出来てないし…… それに血が付いたままで夜道は危険ですから」


 服を見ると確かにさっきの血がべっとりと付いていた。

 ポンチョで隠せば分からないし、街に行けばどうにでもなる。

 どうしようか迷っていると手を引かれ、家へと多少強引に招かれる形となってしまった。


 家の扉を開けると幼い声がしたと思うと母親の帰りを待ちわびた子供が出迎え、「ママぁこの人はだぁれ? 何でマントを着けてるのぉ?」と不思議そうな目をされる。

 アタシが母親を助けたことを話すと「ママを助けてくれてありがとうございます」と丁寧にお礼を言われ、嬉しかったが命を奪ったことにチクリと胸の痛みはその笑顔が一瞬だけではあるが、痛みを忘れさせてくれる事となった。



「あたい、レミル」


「アタシはブロンディ よろしくな。 レミル。 ついでにこれはマントじゃなくてポンチョって言うんだ」


「えぇ~しらなーい」


「わたしはレミルの母親のメルよ。 よろしくね」


「お招きに感謝するよ。 メルさん」


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