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48話

 いい加減この茶番を終わらせる為、自分はやるべきことを決意し言葉にする。



「一つだけ真実があるとするなら…… 悪魔と契約したのは本当だ。 だからどうした。 いままで散々舐めて掛かって来たんだ。 復讐されるとでも思ったか? 残念、アタシにそんなつもりはねぇよ」



 その瞬間、集まった村人の全てがアタシへの嫌悪感をありったけの罵声が響く。

 どんな理由であれ、契約をしたのは事実だ。

 でもこれでいい、少なくとも村長が死んだ事より、アタシへの嫌悪でどうでもよくなった筈だ。

 後はアタシがこの村を出て行けばすべてが丸く収まる。



「それといい加減、この村にもウンザリしていたところだ。 アタシはこの村を出て行く。 これでいいだろ!」



「恩知らず!」「家族が出て行って当然だ!」などなど罵声が混じる中、群衆をよそにアタシは集会所を出て屋敷に戻る。


 傷からは血が流れ、布で押さえてなんとか部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。

 初めて大勢の前で話し、魔法まで使った。

 胃の痛みと心臓がバクバクと鳴り、もう眠れる雰囲気ではなかった。

 布から染み出た血が枕の布を赤く滲ませていた。


 暇つぶしにアタシは部屋に以前よりこっそり持ち込んだフォークやナイフを弾丸に錬成する。

 以前の弾丸とは違い指先のような形の弾丸が出来上がり、30発ほど作り終える頃には血も止まり、疲労感にゆっくりと眠りに誘われた時、ドアが開かれ、2本のボトルを持ち、呆れた顔をするミラが立っていた。



「どういうつもりかしら? 集まった人達、あなたの事をさんざん罵倒していたわよ。 まったく、丸く収めようとした計画が台無しですわ」


「あの時はああするしかなかったんだよ。 これで村の奴らもギャロンが死んだ事なんかどうでもよくなっただろ?」


「あなたって人は…… わたくしがこの前に言った事をもうお忘れになったのかしら?」呆れたようにミラがそう言った。


「忘れてねぇよ。 それにどうせここに居るつもりはもう無かったからな」


「本当に出るつもりなのね」と長い髪をいじりながらどこか寂しそうな表情でそう言うとボトルをテーブルに置き、机の引き出しからグラスを2つ取り出してボトルの中身を注ぐ



「何だよこれ」と赤い液体の匂いを嗅ぐとアルコールの香りが鼻を擽る。

 お酒を飲んだことの無いアタシは匂いだけで酔いそうになった。

 ミラがグラスの一つを持ち「飲みませんこと?」何て言われ、「おいおい。 いいのかよ」と返すが「タバコを吸ってるくせに今更」と笑われた。



「その前に」


「な、なんだよ!?」



 ミラがアタシに近づき、そっと傷に軟膏を塗り、薬の匂いとミラのふわっとした香りにアタシの頬が温かくなる。

「これでいいわよ」と離れ、アタシの様子を見てミラがニヤニヤしている。

「どうかしたのかしら?」なんてわかってる癖アタシをからかうのがよっぽど楽しいらしい。



「泣けるぜ……」


「それより飲みましょ」とグラスを渡され受け取る。


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