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46話

「ごちそうさん」



 食後のコーヒーを飲みながらタバコを吸い、満足感に浸っていると「良い知らせと悪い知らせがありますわ」とミラから唐突に言われた。

 何の事か分からなかったけど、厄介なことになっていそうなのは確かだ。



「何だよそれ。 食べてる間に何かあったのか?」


「アンチリアから聞いた事よ。 まずはいい知らせ、 あなたのご家族はこの村を出て行かれました」


「それで? 悪い知らせってのは何なんだ」


「あなたが悪魔と契約したって村中に知れ渡ってますわ」



 どうやら、あの時アタシが言ったことを誰かがっと言うか、犯人は継母なのは間違いない。

 心底、アタシに憎しみを抱いている事が改めて分かった事に煙と共にため息も出る。

 殺されなかっただけましだったのかもしれないと今にして思う。



「泣けるぜ……」


「で? その様子だと噂は本当なのかしら?」


「それを聞いてどうすんだ?」


「どうもしないわ。 ただ、話せば少し楽になると思っての事よ」



 アタシは少し悩んだ後、ミラには話すことにした。

 あの時、初めて禁忌の森に足を踏み入れて何があったのか

 そしてアタシが契約してその代償として何を失ったのかを……

 話し終えると彼女は静かに「ごめんなさい」と言われた。



「別にあんたが謝る事なんかねぇよ。 それにアタシにとって、これはチャンスだと思ったから」


「それでもあなた…… 代償があまりにも――」


「だとしてもだ。 これはアタシが選んだ事だ。 覚悟はしている」



 そう言うとミラは何も言わず、アタシの手をそっと握り、静かに見つめるグリーンの綺麗な瞳、目尻には涙が朝露の様にキラキラと光る。

 思わず、親指で涙をそっと拭うとミラの頬が少し赤くなった。

「大丈夫か?」と頬に手を添えると手の平から彼女の体温を感じる。

 しばらくして、アタシの手が頬に添えている事に気付いたのかミラが顔を逸らし、「だ、大丈夫ですわ」と言う姿に笑みがこぼれた。



「わ、笑っている場合ですの?」


「ごめん、ごめん。 ありがとな、少し気が晴れたよ」



「ゆ、友人を助けるのは当然ですわ」と照れ隠しからか、アタシに背中を向けていう様に揶揄い、前に出ると蔓の手がアタシの顔を掴みアイアンクローの様にギリギリと締め付けた。



「あだだだだ! ごめん、ごめんってぇぇぇぇ!」


「全く、悪戯がすぎますわ」と笑うミラを見て少しほっとした。



 ミラによると噂に尾ひれが付き、アタシが悪魔と契約したと言う噂は狭い村ですぐに広がり、「村長を殺した」や「誘惑した」だのと言う話になっていた。



「話が大きくなってるな…… で、アタシにどうしろと?」


「近く、集会を開くから、書いてある通りに話しなさい」と苦い顔をしたミラが紙を差し出してきた。

「まぁ難儀なこって」とタバコの煙を吐き出しながらコーヒーを啜る。

 めんどくさい事をコーヒーの旨さで誤魔化し、一通り読み終え、アタシはある決意をする。


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