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43話

「あらあら、薬が目に入ったのかしら? 外で洗ってきなさい」


「あの、お母様、何かおかしくはありませんか?」


「え、何かございましたか?」



大きな杖を持った女性が継母に質問する。

今、喋る事の出来ないアタシに変わって、(他人が言えば疑惑が晴れかもしれない)とその可能性にアタシは賭けるしかなかった。



「おい、何がおかしいっていうんだ?」


「隊長、どう考えてもこの症状は幻覚ではありません。 仮に何かあってからでは――」


「そうですわ、私は何も嘘を言っていません。 何を疑うというのですか?」


「ならば、私の魔法で――」


「ご家族の問題はそのご家族が解決するべきであり、我々の任務ではない!」


「そうだ。 俺らの任務はこの家族に伝令を伝える事だ。 小さないざこざなんてどうでもいい」


「この子、数日前にモンスターに襲われたみたいで時折、そのトラウマがあって……」


「ほら、御家族もこう言っている事だし――」



女性の魔法使いは不服そうな顔をしながら何かをあきらめるように黙ってしまった。

突き放されるような言葉に、もう何も言うまいとアタシはドアを開け、「ま、薪割りにもどります」と言い走って家から飛び出す。

出る直前、継母が「良かった。 薬が効いたのね」と聞こえた気がした。




訓練場に着くころにはもう涙は出なかった。

それが良いのか悪いのかはさて置き、身体を動かしたことで幾等かは気がまぎれたと思う事にした。


(結局、アタシの居場所はここだけか……)


あの時、急に襲われた時の恐怖や怒り、憎しみがアタシの心を渦巻いた事にどうすればいいのか分からず、タバコを吸って落ち着くことにした。

火を点け、煙を吸うが口の中が痺れるような感覚。

いつもの様な味がせず、アタシがタバコを再び、口にくわえようとした時、右腕の痺れる感覚と共に力が入らなくなり、タバコを地面に落とし、拾おうと手を伸ばすと全身に力が入らず地面に倒れた。

(な、なに…… これ……)声を出そうとも上手くしゃべることが出来ず。

立ち上がろうにも、痺れて動けない。


カサカサッと草をかき分け、誰かが近づいてくるような気配と共に「ようやく効いた様ね。 苦労したわよ。 チェスカちゃん」と声がして痺れる身体でどうにかして顔を上げると継母がそこにいた。

なんで、どうして継母がこの場所を知っているのか?

なんで、身体が痺れるのか?

何もかも分からずにただ呆然とするしかなかった。



アタシの顎を掴み「ふぅん、いいざまね」と一言呟き、右の頬に強い力が加わり、身体が後ろの木に当たり、頭がくらっとする。

その後は馬乗りになり、何度も叩かれた。

叩かれる度、楽しかった思い出が消えるくらい叩かれた後にはアタシは地面とにらめっこしていた。


「あんたの存在が邪魔だったんだから…… そのせいでこんな田舎の村まで来て数年を無駄にすることになったのよ!」と腹部に痺れを忘れるほどの強い衝撃が走り、地面には嘔吐物が染みわたる。

「あんたみたいな能無しは早く死ぬべきだったのよ」と身体を何度も蹴り、踏みつけながら、叫び続ける継母に恐怖すら通り越し、何も感じなくなってきた。

「あのバカが最初からあたしを選んでおけばよかったのに! あんな阿婆擦れを相手にしたから!」継母の顔は今までとは比べ物にならないほどの憎しみに歪んだ顔でアタシに暴力を振るう。

(だれか…… 助けて……)


「こんな事になったんでしょ!」鉄の匂いや味に不快感が増し、痺れと痛みで立ち上がろうにもその気力が削がれ、出来なくなっていた。


「いい、聞きなさい。 あんたは生まれて来るべきじゃなかったの! 本当に邪魔な存在だったわ」


(わかってる)


「金を運んできたから生かしてるだけだったのよ」


(知ってるよ……)


「楽しかったわぁ あんたが無理して、我慢してる姿を見るのが」


(だろうな……)



そうだとしても、アタシは一生懸命頑張ったんだ。

継母が家に来て、妹が生まれてアタシは居場所を……

この家の一員になろうと必死になって頑張ったんだよ。

どんなにいびられても…… 汚い言葉を吐かれても……


暴力を受けても…… 我慢したんだ……


妹を助ける為に身体だって犠牲にしたんだ……

(なのに……)



「どう…… して……」


「はぁ? まだ動けるんだ」


身体の痛みが麻痺のおかげでそこまで感じなくなっていたアタシは身体を無理やり立ち上がろうとするが足に力が入らず地面に座り込む。



「そこまでアンタに憎まれなきゃ…… いけないんだよ」


「頭悪いわねぇ 存在が邪魔だって言ってるでしょ!」


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