39話
歌が聞こえる。
けど内容までは疲れからか、頭に入ってこない……
その歌は勇ましい中にもどこか寂しさを感じた。
そんな歌だった気がする。
アタシでも歌えるかな……
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目が覚めるとそこはベッドの上で起きようとすると身体のあちこちが痛かった。
ベッドに身体を預けるとフカフカな布団に全身が包み込まれる。
布団から香るいい匂いがアタシをさらなる睡魔に誘われて……
「いつまで寝ているのかしら?」
「い、今、起きようと思ったとこだ」
声の方に目をやると、トレーを持ったミラが立っていた。
トレーには焼いた肉やパン、スープなど食事が乗っており、作ったばかりだろうか?
いい匂いが鼻をくすぐり、アタシの胃が食べたいと催促する。
「わたくしに給仕させていいと思ってるのかしら?」何て皮肉を気にすることなく出された食事にありつく。
胃に食べ物が入るたびに身体が栄養を待ってましたとばかりに稼働し、さらに食欲が増進される。
「もう少し、落ち着いて食べる事は出来ないの?」とミラは言うが止められる筈がなく、すべてを平らげ、食後のコーヒーを飲み少し落ち着く。
「満足したかしら?」
「ごちそうさま~」
タバコに火を点け、煙を吐き出すと少し、クラッとする感覚が心地よく、食後の満腹感がそれを加速させた。
「食べたら、少し落ち着いたかしら?」
「ごちそうさん。 うまかったよ」
「そう、それならよかったわ」
思えば、数日が一瞬に思えるほど内容の濃い時間だった。
悪魔との契約やミラの家の事や襲われた事。
禁忌の森での戦いを思い出すと今でも身体が震えそうになる。
タバコを吸い落ち着こうとするがあそこで新しいスキル魔法が発動しなければどうなっていたか考えたくもなかった。
「ところで、いつから気が付いていたのかしら?」
「何の事だよ」
「母子ではなく姉妹って事よ」
「あぁ、そのことか…… 初めは勘みたいなものでさ」
「勘って、また、いい加減ね」
実際、そうで、あの時の二人の会話がどことなくアタシ達姉妹の会話とよく似ていると思ったことが発端だったけど見事に的中していた事から女の堪がアタシにもあったらしい。
「勘ってのは冗談、新聞を見た時、ミラの事は書かれていたのに母親の事が全然書かれていない事」
「よくある事ですわ。 女は子供を産む為にいるのだから」
「まぁな、あの村長、妻に対しての感謝の一言でも入れとけば、好感度が上がるのにそれが書かれていなかった。 アタシはそれが疑問だった」
「まぁ結果的にそれが当たっていたわけね」
「あとあの手帳にもう一つ読まれてなかったメモがあった」
「あなたが洞窟でわたくし達に見せたあれですか」
ポケットからアタシが見つけたメモを取り出し、ミラに手渡すと開いて読み始めた。
そこにはメイド長が記者に話した内容が事細かに記され、ご丁寧にメイド長とカトゥラの関係も事細かに書かれていた。
これを読んでミラがどう反応するかはアタシには分からない……
でも少しでも今回の事が後味の悪い結末になって欲しくないと思う。
少し、散歩したい気分になり、ベッドから降りて扉に手を掛ける。




