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36話

「これで終わりです。 ごめんなさい、あなたは良い部下でしたわ」


「ハァ…… ハァ…… 最後に一つだけお願いできるか」


「許可できません」


「タバコが吸いたい」


「これは驚いたなぁ チェスカちゃんはタバコを吸っていたのかね? いいだろうさ、どうせ何もできない。 冥途の土産に吸わせてやれ」


「そりゃどうも」



 壁にもたれながら、ゆっくりと立ち上がり、メイド服のポケットの中から、箱を取り出しタバコ咥え、火をつける。

 チリチリと焼け、小さな火が灯され、軽く煙を吐き出す。

 何度か吸い、煙を吐き出す度に、心地良くなる。

 吸い終え、吸い殻を靴で踏みつぶす。

 ギャロンを見ると早くしろと言いたげな目をしていた。

 吸い終わったのを確認し、メイド長が真っ直ぐにナイフを突き立てて来るのが見える。

 アタシはとっさに右半身にずらし、左手で相手の右手を弾き、右手刀で相手の右側の首に打ち込む。

(動いた!)

 続いて左手をクマの様な手にして、鳩尾に打ち込むと空気を絞り出したような声と共に跪いた。

 アタシは魔法を発動し銃口をギャロンの腕輪付近に向ける。すると狙いたい場所が手に取る様に見えた。

(狙うのはあの腕輪!)

 破裂音と共に弾丸がまるで意志を持ったかのように、吸い込まれ、腕輪に当たり砕け散る。



「ぎゃあ! う、腕が…… この役立たずのメイドがぁぁぁ 早く始末するんだ。 さもないとどうなるか……」


「さもないとどうなるんだ?」


「この腕輪の力で……  な、腕輪が無いっ!?」


「残念だったなぁ アタシの魔法があんたの腕輪を砕いた」


「き、貴様、一体何の魔法を使った!? それにさっき切られた右腕がどうして動いたんだ」


「さぁね。 答える義務はない」



 本当の所、偶然だった。

 あの悪魔がくれたタバコには少なからず、鎮痛効果が本当にあった。

 タバコを半分ぐらい吸った時、ジンジンとした痛みが無くなり、かすり傷程度の痛みとなり、右手が動いた。

 吸い終わるころには完全な止血と沈痛の効果は見られるが切り傷は治っていなかった。

 この後の事を考えると少し恐ろしくなったので今は考えないようにする。



「私をどうするつもりだね。 このまま妹の仇を――」


「アタシは別にお家事情に興味はないし、ただ妹を取り返したいからミラの話に乗っただけ…… 妹が帰ってくればどうでもいい」


「お父様……」



 ミラがギャロンに近づき、脇を抱えて立ち上がらせる。

 向かい合ったその目は真っ直ぐにギャロンを見つめ、静かに語り出す。



「わたくしは妹が自由になってほしかったのですわ。 物心ついた時からの屋敷だけでの生活、わたくしのみに許される自由に我慢できませんでした。 理由も分からないままでこんな偽りを続けたくなかったです」


「祖父からの教えでエンディとの違いが必ず、現れると言っていた。 事実、成長に違いが出た。 だが私も出来る限りの事をした結果がこれだった。 ジャモルトに脅され、まさかこんな事になるなんて思ってもみなかったよ」


「そぉ言えば、何でミラの母親は素直に要求に従ったんだよ」


「わからないだが…… この洞窟には――ウグッ!?」


「お父様!?」


「娘達、下がって!」



 アタシ達が押し出された後、氷塊の槍が床一面に刺さり、アタシ達を庇ったマティカを見るとその胸を槍が深く貫いていた。

 槍からは血が流れ、床一面に広がり、微かに冷気が漂う。


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