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33話

まず、昔々にあんたは一人の青年と恋をして子供を授かった。 相手は後で話すとして、その子供ってこの人だろ、エイディさん!」



 柱の陰からエイディさんが現れる。

 その顔は不安そうにオドオドとゆっくりとした足取りでアタシの横に立ち、真っ直ぐマティカを見つめる。

 さぁここからが第一段階、まだまだ話すことはある。



「ところで聞きたいんだけど、アンタはどうやって子供を産んだんだ?」


「何を言うかと思えば、一体それが何だと――」


「答えてくれ……」


「くっ 花…… 私たちの種族の赤子は花から生まれる。 それがどうしたのか?」


「生まれたのは一人じゃなかったんだろ?」


「何を言って――」


「ミラ、出てきていいぜ」


「あ、あなた。 一体何を言ってるんですの?」


「ミラとエイディさんは姉妹って事だ。 それにミラ、お前が知りたかったことは2つある」


「確かにまだ謎は残ってると言いましたわ――」


「そう、あの記者のノート、破られた新聞記事。 興味を引いたのは新聞記事の方だった。 それに――」


「言いがかりもいいとこね」


「まぁ聞きな あの時、あの記者の家に行く指示を出したのも、あの記事を見たからだった。 本当に知りたかった事はあんた達の事がどれだけあの記者に知られていたかを知る必要があったからなんじゃないのか?」


「私が知りたかったことはお父様が誰にあの薬草を売買していたか――」


「あの記者は全て知っていた」


「どういうことですの?」


 メモをポケットから取り出し、ミラ達に見せる。

 あのメモに書かれていたことは祖父に取り上げられたのはミランダであり、エイディさんはその妹であるという事が書かれていた。



「ミラ、あんたが探していたのはこれだろ?」


「ブロンディ、あなた――」


「もういいわよ…… お姉ちゃん」



 エイディさんが諦めたようにアタシの仮説が真実と証明された瞬間だった。

 二人の姉妹がなぜそうなったのかは知らないが、これから語られるであろう話に耳を傾ける事にした。



「いいわけないですわ、エイディ…… はっ!」


「そうよ。 チェスカちゃんの言う通り。 私たちは姉妹です。 父親は村長のギャロンです」


「はぁ、まったく…… 隠してきた意味がないですわ」


「何でこんな芝居を?」


「わたくし達は元々双子でしたわ。 でも決定的となったのは成長の早さの違いだったわ」


「成長の早さ?」


「そう、双子であっても人間の血とモンスターの血が私達の決定的な違いとなりました」


「わたくしにはより強く母の血が……」


「私には父の血がそれぞれ色濃く反映されました」



 話を聞いていくうちに分かった事は互いの種族の血が時間の経過と共に色濃くなり、寿命の長いミラの成長が遅くなり、矛盾が生じ、父であるギャロンさんが発覚を恐れ、意図的に隠すこととなり、親子を演じた事だった。



「別に今の時代、特に珍しい事なんかねぇじゃねーか?」



 そう、他種族と共存するこの世界には少なからず、混血者が存在する。

 隠す意味がまるで無いと言えばその通りで、アタシには意味が分からなかった。



「それについては私から話す」


「お母様……」


「昔、最初の村長。 つまりはあなた達の曽祖父が私とある取引をしたことから始まった。 私の秘密を守る代わりに高価な薬草の栽培を言いつけられた」


「その秘密とは?」


「そんな事、言えるわけがないだろう」


「だろうな」



 話は続き、その後、マティカはギャロンさんと恋に落ち、子供を授かった。

 ところが生まれた途端に当時生きていた祖父にミラが取り上げられ、その存在は極秘とされ、ミラ達は長い間、祖父の屋敷でのみその生活を強いられることとなる。

 それは祖父の死後まで続いたと言う……

 以後、帰ってきた妹は姉よりも成長した姿だった為に引き続いて屋敷でのみの生活が続いた。



「祖父が死んだなら、母親に会いに行けばいいじゃないか」


「それが出来なかったのよ。 だって――!?」



 強い風が吹き、刃のようなものがアタシを切り裂こうとした瞬間、大きな蔓の束が遮蔽物となり防がれる。

 魔法による攻撃が明らかでミラ達はマティカの後ろに隠れ、アタシはスキル魔法を発動し、ポケットの弾丸を装填する。


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