32話
アタシはエンディさんと別れ、ミラの部屋でさっきの手帳の内容を見返す。
ミラの読んだ内容以外は何もなく読み進めているとこの前調べた新聞記事の内容があった。
(そぉ言えば、この人がギャロンを脅す為に記事を書いてたんだよな……)
ふと、疑問に思ったのは、じゃあこの記事に書かれている人物は誰なのかという事だ。
ミラでないとするとエンディさんとも考えられるが髪の色が違う。
マティカと考えられたが果たしてそうなのか……
手帳を置き、タバコを取り出そうとポケットに手を入れた時、腕がテーブルに当たり、手帳が床に落ちると手帳の表紙から白い紙が見えた。
(あれ? 紙がはみ出てる)
表紙の隙間から出てきた紙を引っ張ると1枚の紙が出てきた。
中を見てみると取材の内容だった。
(これって!……)
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夜、ギャロンさんは幸い遠方に出かけており、帰ってきたら元も子もないので、今のうちに急いでミラ達と禁忌の森に向かう事となった。
馬車に揺られながら、エイディさんと二人っきりで今は馬車に揺られている。
ここまで来るのに色々あったがこれで妹を救えると考えるとやっとアタシの苦労も報われる。
逸る気持ちを抑えつつ、呑気に景色を見る。
「ミラ、そっちはどうだ?」
「わたくしに馬車を運転させるなんて言い度胸ね」
「コインの賭けでアタシが勝ったんだ。 文句はねぇだろ それにアタシ馬車なんて高貴な物を動かしたことないし」
「言い訳としてはどこか皮肉めいてるのは気のせいかしら?」
気持ちの余裕からか、互いに悪態を付く。
ミラとは朝に妹を送り出す時以外はあまり見る事はないし、まして相手は金持ちでアタシは貧乏人で魔法が使えなかったし、住む世界が違う。
そんな相手が今こうしているのが少し不思議だった。
「ミランダちゃんと仲がいいのですね」
「そ、そう見えか?」
「あの子があんなに楽しそうに話しているのを見るのは初めてです」
「いつも、後ろに金魚の糞――」
「女の子がそんなこと言わない。 学校の話をしてくれるけど、あそこまで楽しそうに話したことはなかったわ。 例え、どんな理由があろうと、チェスカちゃんが来てくれてからです。 ありがとうございます」
「え、えぇ あぁ どうも……」
言われた事無い言葉をすらすら言われ、気恥ずかしかった。
友達と言われると正直、同性の友達がいなかったアタシにとってはどうすればいいのか分からない。
でも確かに初めて、話した時はなんだか少し楽しかった。
「べ、別にあなたとは友達なんかじゃありませんわ。 言うなれば――」
「分かってるって、主人とメイドだろ? お嬢様~」
「あの事をアンチリアに話すことに――」
「てめぇ!」
「フフフッ、あなた達ほんとうに仲がよろしいのですね」
「まったく……」
普通なら緊張するところだが、和やかな雰囲気の中、アタシはこれまでの事を少し整理する。
昔々、この家では上級のモンスターの力を使って薬草の栽培を行っていた。
タダでと言う訳では無く、それはモンスターと青年の間にできた子供が人質に……
あれ? でもあのマティカが子供が人質に取られる前からこんな事をする必要があったんだ? それにマティカと結ばれた人物って……
欠けていた物と記事の内容が一つに繋がりある仮説が生まれる。
果たしてそれが真実なのかは解らない頭の中にグルグルと廻る。
「着いたわよ」
「チェスカちゃん?」
「あ、あぁ 着いたのか」
馬車が止まり、ついに禁忌の森にたどり着いた。
道中、モンスターに遭遇しなかったのはマティカの配慮だったのか、すんなりとたどり着くことが出来た。
洞窟の中もアタシが中で迷った際の目印がそのまま残っていたので目印をたどって中に進む。
洞窟の中は依然と違い、薄暗い光が灯っており、エイディさんが付いてきているか見ると、どことなく緊張した様子が顔から見て取れた。
「本当に大丈夫ですの?」
「何が?」
「何がって、罠だったらどうするのよ」
「仮にもあんた達は血縁者なんだろ? 少なくとも殺す気はないと思う」
「思うってまたいい加減ね」
「相手を信じて進むしかないって事だな。 あと、アタシが合図するまで隠れてろ」
「何でですの?」
「まぁちょっとな」
2人を柱の陰に隠し、一人でアタシがあの悪魔と契約した大きな広間に行くと、ざわざわと音と共に地中から、何本もの蔓が束となりそれは人の形に形成され、この禁忌の森の主が姿を現す。
「あら、時間ギリギリね」
「間に合ったんだからいいじゃねぇか」
「さぁ、約束を果たしなさい」
「その前に少し、話を聞いてくんねぇかな?」
「約束を果たさねば、妹を返すことは――」
「まぁ、そんなに焦るなって、すぐに済む」
「いいわ…… 聞いてあげる」
アタシが考えた仮説がどの程度、正解かは分からない、でもこれでミラの事も少し解決できると信じるしかなかった。
一度乗り掛かった舟、最後まで乗り切ってやろうじゃねぇか




