31話
ミラが読み上げたのはあの男の取材の記録だった。
そこにはどこで知ったのか、この家に対しての内部事情が詳しく書かれていた。
代々ギャロン・ケルンの家は、ある薬草の栽培を行っており、その薬草は希少な薬草で高品質の回復薬には欠かせない材料の一つだという事。
又、ここの薬草は魔力の宿りが強く、一般的に流通されるそれよりも遥かに質がいいものだ。
この薬草は本来なら上級ダンジョンの深部にしかない物で誰がどのように作っていたのかが謎だった。
「お前のとこ、すごいもん作ってたんだな」
「そんなことより、読み進めるわよ」
ある情報筋から、昔、この家では上級モンスターと人間の子供を産ませ、それを人質にして従わせていると聞き、村長に会い、確認を取ると青ざめたような顔が傑作だった。金銭の要求と、ついでにこの村の記事の連載を手に入れる事が出来た。
「おいおい、恐喝かよ」
「黙って聞いてくださるかしら?」
最近、村長の金払いが悪くなってきた。
俺を怒らせるとどうなるか思い知らせてやる……
「ここで終わってますわね……」
「まぁこれで謎が解けたわけだし、アタシの条件も聞き入れてもらうとするかなぁ」
「まって、謎がまだ解けてませんわ」
「何だよ。 他に何かあるのか?」
「この薬草が一体どこで取引――」
「そっちの条件はある程度は飲んだ。 ここからはアタシの話も聞いてもらわねぇとな」
薬草がどうとか家の事情がなんて、アタシの知った事で無い。
ケイトを救うにはエイディさんをマティカの所に、連れていく必要があるからだ。
ここに来たのも情報を手に入れる為だった。
人物が手に入った以上、ここには用はないし、さっさと出て行きたかった。
「待ちなさい、情報を先に渡したのはわたくしですわ」
「あぁん!?」
「探している人を教えたのはわたくしです。 ですからこれで対等ですわよ」
「屁理屈こねてんじゃねぇよ! アタシは急いで――」
ミラの魔法で作られた木の槍がアタシの喉元に突きつけられる。
ただで済むわけじゃないが、アタシにだって意地がある。
しかし、双方対峙した状態からは手詰まりを感じ、両手を上げるとミラが槍を元の蔓に戻す。
瞬間、アタシは距離を取り、魔法を発動し、エイディさんを羽交い絞めにし、頭に銃を突きつける。
これで形勢が逆転した。
「甘いですわよ!」
「うぉわぁ!」
さっきの蔓が足元に絡みついてアタシを床に叩きつけられる。
とっさに受け身を取るが臀部と背部に痛みが走る。
強く引かれ、さらに背部全体をタンスに打ち付けられ、後頭部を打ち、目の前がチカチカする。
その間に再び、喉元に槍を今度は首に少し刺さる様に突きつけられる。
(もう後はないぞって事か……)
「やめなさぁぁぁぁぁぁい! あなた達、いい加減にしないと怒りますよ」
「でも、お母――」
「でもも、何もありません。 お友達同士で殺し合いなんて見たくありません。 チェスカちゃん、あなたにどんな事情があるのかはわかりません。 でも、ワタシが必要なら連れて行きなさい」
「いいのかよ」
「女に二言はありません。 いいわねミランダちゃん」
「ミラ……」
「お返事は!」
「わ、分かりましたわ」
終始、おっとりとした感じとは別の迫力のある物言いにびっくりしたがこれでアタシの目的が達成されることを考えたら安堵する。
後はマティカの所に行くだけだ。
「それともう一つ大切なことがあるわね。 二人とも仲直りしなさい」
「「!?」」
さっきまでの状況から考えてまたやり難い事を言う……
ミラもこうなったら止められないと、諦めたような表情が見えたことから、観念して握手をするために手を差し出し、互いにこの場を収める事となった。
ミラの握る手に少し、強い力がかかっていたことは仕方がないから内緒にしておくがその代わりに握手をしている間、ゆっくりと力を込めて足を踏んでやったから、おあいこにしておく。
「で、エイディさんはどこまで知ってたんだ?」
「な、何の事かしら?」
「さっきの話を聞いて、驚きもしなかった。 これってある程度は事情を知っていたって事だろ?」
「そうね。 でも、こんなの事になってる事までは」
「まぁ何にせよ。 急ぐ必要はあるみたいだ。 だって今日は満月…… 約束の日だからな」




