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29話


ゴーレムとの戦いの後…… と言うか帰った後の方が大変だった。

特に屋敷では、すれ違うメイド達が顔を顰め、鼻をつまむ事態だ。

アタシ達はと言うと、屋敷に帰ってくる頃には嗅覚がマヒしていた。

しかめっ面の他のメイドを見て、アタシは早く体を洗って着替えたかった。

メイド長も表情こそ変えないが、心なしか早歩きになっており、この時ばかりは気持ちは同じだったと思う。



「あ、メイド長、チェスカお帰―― 」



あの元気いっぱいのカトゥラでさえこれなのだから、相当な臭いであることを改めて理解する。

メイド長はカトゥラに見られ、しまったなんて顔をしている。

「二人とも早く、身体を洗った方がいいよ」と走って逃げられるとメイド長が弁明しようと声を掛けるもカトゥラに言われたのがよっぽどショックだったのか軽くうなだれ、それを見てクスッと笑うと刃物が光るのが見えた様な気がした。

「これ以上言うと分かってるかしら?」とでも言いたげな目を向けられる。



「あら、あなた達、面白いことになってますわね」


「!?」


「説明したいが…… いい加減、この臭いを何とかしたい」



そこにはカトゥラと共にミラが居た。

カトゥラの訴えかけるような眼に流石のメイド長も観念しているのか悪あがきなのか、手で顔を隠してため息をついた。



「この子がわたくしを呼びに来ましたわ。 アンチリアとチェスカが大変だって

それで来てみれば、本当に大変だったみたいね」


「お嬢様、依頼の物は――」


「それよりも、身体を綺麗にしてからわたくしの部屋で話しませんこと? 二人共すごい臭いよ」


「チェスカさん、付いてきて来て」


「あ、あぁ」



メイド長の後に付いて行くとメイド専用の湯浴みに連れてこられた。

アタシ達はそこで服を脱ぎ、服はごみ箱に捨てる。

もったいない気はするがいくら洗ったとしてもあの臭いが落ちる気がしないし、洗う事なんて、考えたくなかった。

お湯が張られた小さな浴室で桶に湯を汲んで身体の汚れを落とす。

湯を浴びると傷に沁みヒリヒリと痛みを感じるが我慢できないほどではなかった。

臭いや汚れを流し、着替えようとした時、メイド長から小さな箱を投げ渡される。



「これは?」


「傷に効く薬です。 塗りなさい」


「ど、どうも」



箱の蓋を開け、傷に塗り込むとヒリヒリと痛む傷が落ち着く。

匂いも薬臭さもなく、ほのかに香るそれはどこかで嗅いだことのある匂いだった。

(あれ、これって!?)



「メイド長、聞きたいんだけどさぁ」


「なにかしら?」


「アタシの傷を手当てしてくれたのって――」


「私ですが何か?」


「やっぱり、この薬の匂い……」


「勘違いしないでください。 たとえ、貴女が野良犬であろうと、今は私の部下です。 部下のケアは上司である私の責任です。 貴女も早く着替えなさい…… サボってタバコを吸わない様に」


「あ、はい」



そう言い、メイド長はさっさと着替えて浴室を出ていった。

野良犬と言う嫌味のおまけが気にはなるがアタシも傷に軟膏を塗り終え、さっさと着替えた。

動く度に身体から優しくあの軟膏が香り、あの家で嗅いだ不快な思いを忘れさせてくれるようだった。


(ミラの部屋って何処だっけ?)


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