表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/123

27話


薄暗い家の中から、ホコリ臭さと腐敗臭が鼻を突く、鼻をつまみながら中を進むと、

もともと家主がズボラだったのか部屋はかなり汚く、とても人が住めるのか疑問が浮かんできた。



「こんな所に手掛かり何てあるのかよ」


「黙って探すことが賢明ですね。 不衛生で不快なのは貴女と同じです」



テーブルには食べ残しが腐ってカビが生え、飲みかけのコップにはホコリと虫が浮かんでいる。

乱雑に脱ぎ散らかされた汚れの付着した衣服にと見たくないものが溢れかえっていた。



「ここで記事を書いていたのかしら?」


(もう帰りたい……)



その部屋はまるで嵐が過ぎ去ったかのような現状が広がっていた。

開け放たれた引出しや倒れた本棚に床に散らばる本や書類が散乱していた。



「これって――」


「恐らく、私たちの前に来た何者かがやったのでしょう」


「じゃあ、もう何も無いんじゃねーの?」



アタシの言葉は無視され、淡々とメイド長が中を調べ始める。

それに続くようにアタシも書斎を調べ始めた。

本の中、机の引き出し、書類の内容どれも特に気になる内容ではなく、書類もほとんどが、借金の催促状や魔道具屋の領収書、記事に対しての罵声ばかりだった。

この人物がどんな内容を書いていたのかが気になり、少し読んでみるとギルドのゴシップ記事で内容は有名ギルドの三角関係や抗争、他種族に対しての罵倒なんかが書かれていた。



「どんな人物だったんだろう……」


「別に大したことは無いわ。 他者や種族を煽り、それをネタにして小遣いを稼ぐ人ってだけ」


「この人に会った事あるのかよ」


「昔、どう言う訳だかこの方がうちの屋敷に来て旦那様と話していることがありました」


「おい、それって知ってたって事かよ」


「村の新聞の記事を書くって言う契約で来られただけでした。 あまりにも不潔な人だったので、使われた食器は処分して椅子やドアノブもキレイに掃除した事を思い出しましたわ」


「だから、こんなに早く居場所が分かったのか」



しかし、気になるのは何処のどいつが、アタシ達より先に何を見つけようとしていたのか。

この男が何を知っているのか…… アタシ達に分かるはずもなく、今は淡々と手掛かりを探すしかなかった。



「おい! 早くしてくれねぇかいお嬢さん方」


「はい、は~い! わかってるって」



窓を開け、さっきの男に返事をする。

すると窓から風が部屋に入り、机の上や床に散らばった紙が部屋を舞い、日の光が窓から差し込み、部屋全体が少し明るくなった。



「うわぁまた派手に散らばったなぁ」


「邪魔をするのか探すのかどちらかにしてください」


「ご、ごめんなさい」



メイド長に睨まれるとやっぱり怖い。

アタシは机の下に風で飛んだ書類を取ろうと屈んだ時に、テーブル部分の板が微妙に色が違っていることに気が付いた。

(2層になってるのか?)



「メイド長、ちょっと来てくれねぇ?」


「チェスカさん、何でしょうか?」


「この机、テーブル部分が2層になってる気がするんだけど」


「言われてみればそうですね」


「開ければ何か出て来るかもよ」


「ちょっと待ちなさ――」



テーブルを掴み、ひっくり返そうと持ち上げるとベリッと言う音と共に持ち上がり、床に落とすと何かが書かれた紙がテーブルと土台の上にびっしり張り付けられているのを見つけた。

アタシ達が探していたものだろうか内容を読もうとした時、床に散らばった紙が動いているのが見えた。



「何だよこれ!」


「全く、トラップがある事ぐらい考えられたわ」


「トラップ!?」



机の引き出しがガタガタと揺れ、ガタンッと独りでに開くと小さな黒い箱が宙に浮かび、姿を現した。

それは黒い光の魔力を放ち、やがて部屋に散乱する紙が小さな箱の周りに集まり、さらにはさっき見つけた紙までもが机や土台から外れ集まっていく。

それがおさまると紙でできた約2メートルくらいの大きな紙の男が現れた。



「逃げるわよ!」


「う、うわぁっと!」



メイド長に出を引かれ、書斎を出て部屋のドアを閉め、汚れるのを気にする暇もなく、床のゴミを蹴散らして走り、家を出る事が出来た。



「おめぇら、何したんだよ!」


「貴方、早く逃げなさい」


「か、紙でできた大男が――」



ドガッっと音がすると家のドアを砕き、さっきの大男が現れた。

紙束のくせに、木のドアを砕く力に少なくとも恐怖を感じずにはいられなかった。



「何だよあれ!」


「あれは紙のゴーレムでしょうか?」


「ゴーレムって石とかじゃないのかよ!?」


「材質はさておき、コアがあって集合体ならとりあえずそう呼んでおきましょう」


「ざっくばらんだ―― うわぁ!」



ゴーレムの拳を左にかわすが右足に痛みを感じ、見てみると平行に数本の傷が出来ており、微量の出血が見られた。

攻撃をかわした際にゴーレムの身体を構成する紙で切ったのだ。



「メイド長、どうするんだよ!」


「そこの殿方も力を貸していただけませんか?」


「お、俺は関係ないだろ! 俺はごめん―― ぐぶぅっ」



男はゴーレムに腹部を殴られ、宙を舞い木にぶつかり、意識を失いぐったりと動かなくなった。

メイド長はナイフを構え、アタシは石を2つの鉛球に錬金し、スキル魔法を発動し、銃をモンスターに向け構える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ