24話
今日は大変なことがあった。
それはあまりにも衝撃的で一人だったら、どうなっていたか分からない。
でも良い事もあった。
今まで、妹かグエルぐらいしか話す人がいなかったから、ミラの存在はありがたかった。
ドアが開き、メイド長が紅茶とコーヒーを持ってくると受け取り、口を付ける。
そのコーヒーは苦みが強いが今のアタシにはちょうど良く感じられた。
「眠れなくなるわよ」とミラに言われるがそれもいい、今この瞬間をアタシは覚えておきたかったから……
「そうそう、あなたが出た後に男の方が来られて手紙を預かっているわ」
「手紙!?」
手紙を受け取り、あて名を見るとリブロからだった。
中を見ると破れたページに関しての事と書いた人物の名前が書いてあった。
名前はジャモルト・ギジャと言う名前で、記事の内容は森の中で髪が緑色の女性が神秘的な美しさで森に誘い込むと言う噂の紹介だったらしい。
緑色の髪と言えばミラだけど神秘的とまでは考えられない。
第一こんな内容は確かに誤解を招くし、記事を見た村長が激怒して連載を終わらせたと考えられた。
ため息と煙が吐き出され、近くにいたメイド長がわざとらしくゴホッゴホッと咳をする。
よほどタバコが気に食わないらしい。
「ラブレター? わたくしにも見せてもらえる?」
「あ、おい!」
取られてしまっては仕方ない。
タバコを吸いながら待つことになり、タバコが吸い終わる頃にミラを見ると険しい顔と共に手紙を返して来た。
「ラブレターじゃなかっただろ?」
「えぇ、そうね」
「で? どうする」
「この記事を書いた人に会う必要があるわ」
「その前に一つ聞かせてくれないか?」
「なにかしら」
聞きづらい事だけど聞く必要があった。
それはアタシが襲われたのは誰の差し金なのか……
単純に考えればこの屋敷の関係者で禁忌の森の真実を知るアタシを消す必要がある事は考えれたからだった。
「アタシが襲われたのはそっちの差し金じゃないよな」
スキル魔法を発動し、銃をミラに向けるとメイド長が足に着いたケースからナイフを抜いて構え、アタシを睨みつける。
「ナイフとアタシの魔法。 どっちが早いかなメイド長」
「貴女、本当に魔法が使えたの!?」
「言わなかっただけ。 さぁどうなんだミラ」
「アンチリア、ナイフを下ろしなさい」
「お嬢様!」
「わたくしはあなたを襲う事を依頼したことはございません」
「じゃあ、アタシを襲った連中、メイド長…… あんたの差し金か?」
「確かにお嬢様の為にと言う動機が考えられますね」
「てめぇ!」
「それに貴方を使いに行かせたのは私だから当然ね。 でも違います」
「何が違うんだよ?」
「貴女の実力は既にある程度は把握しているつもりです。 だとすれば仮に依頼するとすれば、もっと手練れを用意いたします。 チンピラに依頼する必要はありません」
「ちょっと待て! 実力って――」
「禁忌の森からの帰還…… それ以前にあなたは昔、妹を助ける為に戦ったことがありましたね」
「そんな昔の事…… 第一、子供の喧嘩じゃねーか」
「それにもう一つ、飲み物を出した時点…… あとあなたが寝ている間に殺すことは出来ましたがそれをしていない事が証拠ですわ」
納得はいかなかったが理解は出来たので魔法を解除し、タバコに火を点け、煙を吸う。
吐き出された煙が二人の間をユラユラと漂った。
「まだ聞きたいことがある。 今回の事とは別にアタシに隠している事があるだろ」
「何の事かしら?」
「昨夜の侵入者がいた。 そんでもってアタシが肘入れた奴ってそこのメイド長だろ」
「何を言ってるのですか!?」
「じゃあ、右わき腹を見せてみろよ。 力を込めて打ち込んだんだ。 朝の痛みからして内出血ぐらいは出来てるだろうよ」
「何を根拠に! 痛みなんてありませんが――」
「そうだな、根拠とまではいかないがあの仮面、アタシが魔法を使えるのを明らかに知っていた。 魔法を使えるのを知っているのはミラだけだ。 それにミラからあんたに伝わってる事ぐらい想像がつく。 それにさっきアタシが魔法を使った時、本当に魔法がって言ってたよな」
「言い逃れ出来ませんわね」
タバコに火をつけ、煙をメイド長に吹きかけるとゴホゴホと咳をしながらアタシを睨み付けるその目は嫌悪感が見て取れた。
 




