22話
アタシは立ち上がり、相手の脇腹に蹴りを入れる。
グボッォと息が吐き出され、相手は蹲り、「俺はそこまでしてねぇのに」とブツブツと呻いていた。
(なにがそこまでだ!)もう一人の男を見るとグッタリと気絶している。
「何しやがるんだ!」
アタシは弾を込め、銃を男の膝に近づけて打ち込む。
弾丸は膝にめり込み血飛沫と叫び声と共に、覚醒した男が涙を流しながら膝を抑え、痛みに叫ぶ。
石を拾って弾丸に錬金し、装填。
男に銃口を向けると、許してくれと懇願し、男の股からは後悔が洪水の如く溢れ出ていた。
アタシはそんな男の姿を見て急に馬鹿らしくなってしまった。
(何でこんなことしてるんだアタシは……)
男の胸倉をつかみ頭に銃を突きつける。
「いいかよく聞け。 金輪際、アタシにはもう近づくんじゃないねぇぞ! さもないと――」
「はいぃ!」
胸倉を離してやると男が慌てて、小さな小瓶をポケットから出し、中身を飲み込み。
もう一人の男を抱えてヨロヨロと歩いて退散して行く。
後ろから打ち込んでやろうかと銃を構えるが出来なかった。
服を破かれ、凌辱しようとした相手を撃ち殺したいほどに憎いはずなのに……
男達が退散して見えなくなると、安心したのか疲れが全身に重く圧し掛かる。
(アタシが何をしたってんだよ……)
その場にしゃがみ込んでタバコに火を点け吸い込み、煙を吐き出すと目に煙が入り、痛みと共に涙が出る。
さっきの出来事が反芻され、怒りや恐怖に声が溢れ出し、地面に拳を打ち付け、血が滲み。アタシの声が空しく響いていた。
アタシが思った以上に帰宅が遅くなっており、夕焼けの道を痛む体で荷車を押してなんとか屋敷まで帰ってきた。
身体の痛みとスキル魔法の疲労で身体がキシギシとまるで油を挿していない滑車のような感覚が襲い、厨房の裏に着いた安心感からか、地面に座り込む。
買い物に時間が掛かって男達に襲われ、メイドの服は破れてボロボロ。
全く良い事なんてない、最低な1日……
(メイド長は大激怒するだろうなぁ)
(もう一歩も動けない……)
意識が朦朧となりながら、ポケットの中からタバコを取り出し咥えるが、疲労で火を出すことが中々できなかった。
誰かが、アタシの名前を呼んで近づいてくるのが見える。
小さいけど笑顔が素敵な癖毛の子がアタシの近くで何か言っているが良く聞こえなかった。
「今―― 来る――ら」
身体が地面に倒れ、空が見える。
綺麗な星がグルグルと回り、着いたり消えたりしている。
段々気分が悪くなり、蹲って胃液が吐き出され、不快感が増す。
急に身体が動いて 「一体、買い物にいつまで――!」と聞こえ。
メイド長の顔が見える。
精一杯の力で「ごめんなさい」と言ったところで目の前が暗転した。
(メイド長に聞こえたかな……)




