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20話


「さて、今日の仕事は――」



各メイドには予定表があり、そこには町への買い物が書き記され、買物のメモと金貨の入った袋がアタシの名前の欄に掛けられていた。



「買物いいなぁ~」


「カトゥラは重い物持てないだろ?」


「じゃあ、おみやげを要求します」


「パシリってか先輩――!」



まぁ、多少の寄り道やサボり大丈夫だろう。

帰りに小さな先輩のお願いでも聞こうかと考える。



「チェスカさん、寄り道はしないようにしてくださいね」


「うぉっ! メイド長」


「それとカトゥラ、あなたも先輩なんだから――クゥッ」


「どうしたのアンチリア!?」


「何もありません。 2人とも仕事に向かいなさい」


「は、はい……」


カトゥラは心配しているようだが本人に急かされ仕事に向かっていった。

アタシも屋敷を出て買い物に向かう。

あの時、メイド長は平然としているが、痛みを堪えていることは明らかだった。

一瞬、昨夜の事を思い出す。

あの時、アタシの肘打ちが相手の腹部に打ち込んだことは確かで……

アタシにナイフを向けてきた人物がメイド長なのかは分からない

(まさかな……)




町に着くと市場は活気に溢れ、そこら中、にぎやかな声が響く。

何軒か出店を回り、食材を買っていき荷車に積まれていく。



「これで完了っと」



まったく、これだけの量を馬無しで運ばせるなんて新人いびり以外考えられない。

これもトレーニングと思い荷車を引き屋敷へと帰路を急ぐことにする。



「君、そこの金髪のメイドさん」



振り向くと若い男が声をかけてきた。

声の掛け方からいかにもチャラいと体現したかのような奴。

冒険者だろうか? こういう男は無視するに限る。

アタシは仕事中で相手にしている暇は無い。



「俺、この町が初めてでさ、道具屋の場所を教えてくれない? 良かったら連れって行ってくれてもいいんだけど」


「悪いけど仕事中でそれどころじゃないんでね。 道具屋はその先を曲がった所だよ」



アタシは男に場所を伝え、さっさとこの場から立ち去ることにした。

冒険者の相手は前回の事で懲りていた身としては余計なことを喋らずに立ち去るに越したことはなかった。



「そんな、冷たいこと言わないでさぁ ちょっとぐらい一緒に遊ぼうよ」



男がアタシの隣に来て肩に腕を乗せてきた。

冒険者のほとんどがこんな感じなんなのだろうか?

馴れ馴れしさがうっとうしいと思う所だ。



「もう一度言うけど、仕事中なんだ。 冒険者かなんだか知らないけど忙しいから――」



肩から手をどけて荷車を引き、この場を立ち去る。

流石にここまで断られたら、相手も分かったはずだと思う。





町での一件にうんざりしながら、(まぁ、こんなこともあるさ)と気を取り直し歩を進める。

屋敷まであと少しだし、少しぐらいサボってもなんて考えながら、荷車をわき道に止め、アタシはタバコを吸うことにした。

煙を吐く度に、煙に交じって嫌なことも少し吐き出せたような気がした。

落ち着いたところで小瓶に灰を入れ、アタシは荷車へと戻り、仕事に戻ることにした。



「やぁまたあったね。 メイドさん…… いや、チェスカちゃん」


「何でアタシの名――」



次の瞬間、ゴスッと音と共に頭部に鋭い痛みが走る。

地面に倒れ、激痛と混乱が合わさり、思考が追い付かなくなり、アタシの目の前が暗く閉ざされた……






「おい…… とけよ……」


「だい…… だって…… ばれ…… しないって」



声が聞こえる。

胸の辺りがむず痒いのと頭がズキズキと痛む。

『あれ? アタシ、何があったんだっけ』と思い返すと最後に記憶してたのが町で見た冒険者がアタシの前に――



「!?」



目を開けると知らない男がアタシの上に乗り、胸を触っているのが見えた。

痛みと恐怖から叫び声をあげる。

男の顔は怒りに満ち、胸から手を離し、大きく振りかぶる。


「静かにしろ!」



男のごつごつとした大きな手が頬を打ち、破裂した様な音が身体を通して響く。

男は襟元に両手を入れ、果物の皮を剥くように服の胸の部分を引きちぎられた。

千切られたメイド服から胸元が見え、必死に腕で隠すが、気が付いた時には再び、頬を打たれた。二発目のビンタに恐怖と羞恥心からそれ以上、アタシは声を出すことが出来なくなった。



「おい、売り物なんだぞ!」


「大丈夫だって! こうした方がおとなしくなったじゃねーか」


「口調からは想像できねぇ こいつ、いいもん持ってんなぁ」


「勝手にしろ、次は俺の番だからな」


「わかったから、向こうに行ってろ」


「へいへい」


もう一人が去り、馬乗りになった男と二人だけになる。

アタシは新鮮な肉を見つけた野犬の様な目をした男の舌なめずりをただ見つめる事しかできず。

ブロンドの髪や胸だけではなく全身を弄られる。

不快感と恐怖が混在し、逃れようにも抵抗の気力が消えていくのを感じる。

継母の時と同じで、アタシさえ我慢すれば全てが丸く収まる。

力のないアタシは、この獣がその食事が終るのを待つだけしかなかった。


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