12話
更新が遅いですが頑張って書いてますのでよろしくお願いします。
「や、やっと出られた」
散々迷った挙句に、依頼主に道案内もしてもらい、やっとのことで脱出することが出来た。
喜ばしいことだが、彼女が苦笑いしながらアタシを案内していたと想像したら、いたたまれなかった。
『ま、無事に出られたからな』と思い直し、禁忌の森を出て訓練場に帰ることにした。
途中、川縁で休憩する。
顔を洗い、歩き疲れた足を水に浸けると冷たく、川底の小石が足の裏に押し当たるときのくすぐったい感じが気持ちいい。
アタシはポケットの中の箱を取り出し、タバコを咥え、火をつけようと指先に教えてもらったとおりに意識する。
「いたぞぉー! キャラハンの娘だ」
「うわぁ!」
慌ててしまって、貴重なタバコの一本を川に落としてしまった。
川の流れに沿ってプカプカと流れていくタバコを、ため息をつきながら眺めているしかなかった。
遠くから、男達、数名がぞろぞろと集まってきた。
名残惜しいが仕方ない。
靴を履いて待っていると、裁縫屋の大将がアタシに近寄って来て、いきなり抱きしめた。
「く、くるしぃ」
「あ、あぁすまんすまん」
「い、一体何なんだよ。 大将!」
「何だじゃない、急に3日間も居なくなって心配したんだぞ!」
「えぇ! 3日も経ってたのか」
「親父さんに言われて、俺達も協力して捜索してたんだ」
「ご、ごめんなさい」
心配させたことに、悪いとは思いながら、父親や他者から心配されていたことに、少しうれしかった。
その後、父親と合流。
殴られることも覚悟したが一言「ごめんな」とだけ言われた。
それは、どの事で謝られたのか、アタシにはわからなかった。
殴った事なのか、それとも娘の話を聞かなかった事なのか、その両方なのか……。
モヤモヤとした物が心を渦巻くが家に着き、扉を開ける。
「ただいま…… ぎゅぇ」
「チェスカちゃん、心配したんだから!」
継母がアタシに抱き着き、わんわんと涙を流していた。
心配したとか、あの時はそんなつもりじゃなかったとか言いながら、大粒の涙をぼろぼろと流していた。
今までの仕打ちを考えると、これほど気味が悪い事は無い。
だが、今回の事で改心したのかと考えれば、それほど悪い気はしなかった。
「あなた、お疲れ様。 ご飯は作りますから、部屋で少し休んでらして」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
「今日はいっぱい美味しいものを作るからね」
父親が部屋に行く。
継母とふたっりきりになる事に対して少し警戒するが、彼女は夕食までお腹がすくだろうと、柔らかいパンと暖かいスープを軽食として出してくれた。
いつもの様な刺々しい感じは無く、母親の様に接してくれる彼女にアタシはうれしかった。
遠回りはしたけどやっと家族に成れたんだ。
後はアタシがケイトを救い出すだけと意気込む。
夕食後に父親から3日間に何があったかを聞かれたが、薪割の後、モンスターに襲われて道に迷ったと嘘を話した。
とてもじゃないが、禁忌の森に行ってましたなんて言えるはずもない。
苦し紛れだが何とか信じてくれた。
薪割についてもしばらくは休んでもいいことになった。
これで依頼に使う時間が出来た。
あとはアタシ次第だ。
その夜、ベッドで休んでいるとポケットに固さを感じ、取り出すとあの悪魔からもらった魔石を眺める。
魔石が月に照らされ、キラキラと輝きを放つ。
(アタシなら大丈夫、絶対にケイトを助けることが出来る)
――そう信じ、眠りにつくことにした。
翌朝、日の出の前、家族が寝ている間にこっそり抜け出した。
書置きを残して、早朝のトレーニングに向かう。
今日は身体を鍛えるのではなく、魔法のトレーニングをすることにした。
魔法学基礎の本を読み進める。
文章と同時に書き込まれている解説を読んでいくと、魔法の基礎とはイメージとあった。
魔法を使うにおいて、魔力、イメージを基本とし、さらに魔法同士の複合によって、より高い威力の魔法を発動させることが可能であると書かれていた。
つまり、火の魔法に風の魔法が追加されることで、さらに強力な魔法が放て、さらに土魔法の形成の力が加わると、形を持った火の魔法が使える、ということだ。
「イメージねぇ……」
初めてスキル魔法を使った時、見たことも聞いた事もない物が発動した。
訳の分からない物がアタシの手を覆い、鉄の球を入れ、発射する。
手掛かりは頭の中の本だけ。
とりあえず魔導書とでも言うのだろうか?
その魔導書が、アタシのスキル魔法の鍵を握っているのは確かだった。
「さて、どうしたものか……」
とにかく、あの球体だ。
鉄なのか何なのかは全く分からないが、とりあえずはあの時、最初に見た頭の中にある本を探し出すところから始める。
深呼吸をし、精神を落ち着かせ、雑念を払い、集中する。
すると頭の中に魔導書が現れた。
頭の中でページを開き読んでいくが、文字が書いてあるのは最初の数十ページのみで、あとは白紙だった。
銃の記述の他に読み進めていくと、あの球体の正体『弾丸』についての記述を見つける。
材質、大きさの記述は見つかり、さっそく試してみることにしたが……。
「材質は鉛って、どうやんだよ」
つい此間まで魔法が使えなかったアタシが、そう簡単に使えるはずがなかった。
教えてもらおうにも、あの悪魔からの警告を考えると得策ではない。
土属性の魔法である錬金に関しては教科にもなく、どうやるのかもわからない。
行き詰まりを感じるが、目的の本を探し出せただけでも良しとしよう。
あとは独学しか方法はなく、その為にも村の図書室に行く必要があった。
この村の図書室は、妹が通っていた学校にしかない。
行きたくは無いがこれしか方法がないのだった。
「はぁ~、あんまり行きたくないんだけどな」
学校と行っても村の学校はそこまで大きくは無く、簡素な校舎だがアタシにとって、改めて前に立つと、あの時の苦い思い出が頭をよぎる。
魔法が使えないって事だけで嫌がらせを受け、出ていく事となった。
ただ一人、アタシに味方をしてくれた先生だけが文字を教えに来てくれたが、今はもういない。
(……先生)
「悩んでてもしょうがないかぁ」
アタシは誰にも見つからないように、校舎の離れにある図書室に向かう。
図書室の使用は、村の者であれば閲覧は自由なのだが、こうもこそこそしていれば、傍から見れば明らかに怪しい人物だった。
図書室に着くとゆっくりとドアを開け、そっと中に入る。
(誰もいないよな)
ゆっくりと歩きながら魔法学の本を探す。
土属性魔法の項目に錬金に関しての本を見つけたので、金属の錬成に関しての記述を読む。
つまり、石などを作りたい物の容量、形などが釣り合ったときに初めて上手くいくが、希少な金属に関しては多くの魔力を消費する。
ハッキリ言って素人には無理だったが、鉛、鉄に関しては、そこまで難しくないように感じる。
少量の銅までならいけそうな気がするが、もう一つの問題は造形だった。
(アタシって不器用だからなぁ……)