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115話

「ハッ!?い、今のは……」周りを見てももう誰もそこにはいなかった。「一体何だったんだ?」目が覚め、アタシは不思議な感覚がまだ抜けていなかった。

(え!?)タバコを吸おうとした時、切られた左手がある事を認識して驚く。でもそれだけじゃない。切られ、貪り食われた右足も復活していた。


「あれ?死体が無い」ミイラの様な死体が無くなり、代わりに湿った床と死んだばかりの死体が目の前にあった。一瞬、自分の未来の姿に見え、慌てて死体を探り、腰のあたりに鞘のような感触。アタシはナイフを見つけ、取り外す。

「ないよりはマシか……」とナイフを持つ。魔法を使いたいが重い生理痛で上手く魔法が使えない。あの時に助けた女性から貰った薬も寝ている間に効果がもうない。

 さっきから何度か不発があったから、この女性特有のこれ(生理)が関係している事は明らかだった。

 でもここまで重たいのは初めてで、しかも魔法を使用する際の対処法なんて知らない。

 少しでも逃げる為に急いでそばにあった男性の死体から靴を拝借し準備を整える。アタシは一か八かタバコを思いっきり吸いこむ。鎮痛作用があるから少しは逃げる事も出来ると考えた。

 煙草を吸い終えると同時にトロールが部屋に入ってくる。

「グゲゲゲゲェ」とニタニタとボロボロの剣やこん棒をもってニヤニヤしている。(狙うはあの剣を持ったやつ!)襲い来るトロール達の攻撃はさっきと違い軌道が見え避けると、すかさずボディーブローを打つと身体が浮かび、トロールの肋骨がきしみ折れる音が拳から伝わる。力を失い倒れるトロールの口から紫の血液が流れ、動かなくなった。


「どうやら、現実なんだな」棍棒を振り上げ、アタシの襲い掛かり、ナイフで応戦。棍棒をよけ、首筋を切り裂く。ドロリと血液が首を伝い、身体が崩れる。アタシは休み事無く、続けてトロールの対処に集中する。一瞬でも気を抜くと生理の痛みどころでは無い。トロールは怒り狂い複数がこうげきを仕掛けるが素早く避け、的確に拳を叩き込み顎や腕の骨を砕く。

「ギャギャァァァァ」とトロールが剣を振り下ろした時、アタシの左手が剣を受け止める。

(切られた!?)と思われたが出血はせずそのまま剣が手の平で止められていた。

 バキンッと剣が砕かれる音と共にバリバリと咀嚼音が聞こえ、手の平を見ると口が剣を食べていたのだった。獣のようなギザギザの歯がまるで悪魔のように見える。この際、使える物はなんでも使う。


 アタシはトロールの武器をこの口で噛みつかせ、押さえつけて首を切る。

 何度か繰り返していたが数が多い。「ったく。泣けるぜくそっ!」と悪態をつく。

 蹴りを入れ、ナイフを突き立てるとバキィンとナイフが砕ける。「クソッ中折れかよ!」ナイフを捨てリボルバーを出し、弾丸を取り出すが。あれほどあった弾丸が一つもなかった。左手がガリガリと振動が伝わり見ると嫌な予感が的中した瞬間だ。アタシは口に中に残った弾丸を取り出そうとしたけど、唸り声を上げて威嚇された。

 ジリジリと這い寄るトロール。その時、左手から何かが吐き出す。それは銃に吸い込まれ、装填される。「え、弾丸!?」とますます訳がわからない。でもありがたく「使わせてもらう!」

 トリガーを引き、弾丸はトロールの脳天に直撃し動きが止まり地面に倒れ込む。

 トロールはそれでも反撃の手を休めない。「生理痛よりよか遥かにお前らの方がマシだ!」と愚痴を吐きながらトロールを仕留めて行く。弾丸を意識すると口から吐き出された弾丸を素早く装填。トリガーを引きながら撃鉄を叩く数と発射の数が会わなかった。


「ここまでか……」


 トロールは幸いにも弱いが体力的な事も考え、逃げようとした時、2メイルの大きなトロールが現れる。

 アタシは銃を構える。トロールの攻撃は大振り。避ける事は出来るが砕けた地面の足場が悪く、決定打となる攻撃が出来ない。足を狙い攻撃するがスキルを使わない状態では命中率が低く防戦を強いられる。


(しまった!?)地面の割れ目に気を取られ、手下の小柄なトロールがアタシにつかみかかり、大型のトロールの拳が仲間に躊躇する事無くそのまま攻撃。アタシはトロールと一緒に吹き飛ばされる。拳と地面に叩き付けられ、バラバラのトロールの血や肉片が散らばる。

 アタシは立ち上がると鋭い痛みに顔をしかめると両腕の骨が飛び出し、あらぬ方向に曲がっているのに気が付くがその瞬間、魔力が消費され、腕の骨が再生し、腕の中の骨が軋みゴリゴリと音と共に元に戻る。


(戦闘続行って事かよ!?)アタシは左前に構え、全身に魔力を流す。特に魔力を足に集中させ、自身を弾丸とイメージし放たれた拳は弾丸の様にトロールの足の肉を裂き、骨まで達し、肉の一部がちぎれ飛んだ。トロールの叫び、倒れ込むがアタシの拳は足にめり込むが同時に、拳の骨が砕け、元は手だったかの判別が出来ないほど骨が突出していたが、すぐに回復した。手を振り、もう一度構え、小型のトロール達を始末する。

 剣にこん棒、ナイフによる攻撃はアタシに当ることなく、拳や蹴りは空気を切り裂いて当たれば骨を砕く。何度か繰り返すうちに、自分の拳が砕ける事も少なくなってきた。

 しかし、ここまでの戦いは初めてで息が荒く、汗が流れ、腹部の痛みも増して来た。

(こんな時に!)自分の身体の周期に邪魔される事にわずらわしさを感じる。

 なんとか、タバコの鎮痛作用で持ってはいるが長くはもたない事は理解していた。

 せめて、大型のトロールさえどうにかする事が出来ればと考えていた。


「グォォォォォ」巨大な叫び声が洞窟に響き揺れる。子分かこどもかは知らないが仲間を殺され、怒りをアタシに向け露わにする大型のトロールに「喜べよ。 アタシの本当を見せてやる」と魔法を発動し、放つ弾丸は銃身がブレたのか、空を切る。

 そのまま2発、3発と撃つも外すが4発目でかろうじてトロールの口をかすめ、5発目を外すと6発目は左頬の肉や歯茎はえぐれ、血飛沫が上がるが止まる様子も無く、こん棒がアタシの身体を吹き飛ばす。

 土煙と瓦礫の中、全身に激痛が走り、特に首は折れ曲がり、背中が見える。身体を起こすと首に激痛が走り、叫びそうになる。魔力が自動的に治す骨のきしむ音が脳に直接流れ、不快になる。


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