113話
トロールの巣穴に落ちた底から土埃が舞い上がる。
全身を打撲による痛み。服やポンチョもトロールに破られてボロボロ、破けた服の隙間から大小さまざまな打撲の後の内出血が見え、欠損した左腕と右足。
(今は何とか出血は止まっているが……)ひとまずトロールの群れから離れる事が出来たのは幸いだった。
(だれ?)ふと何かに呼ばれたような奇妙な感覚に襲われた。
一瞬、人の影が見え期待し、目を向けるとどうやら先客がいたらしい。
先客(遺骸)はどうやら魔法使いの様だった。
遺骸の側には、古代の魔法陣のような物が大きく床に刻まれていた。
残った腕と足でどうにか壁際までたどり着きももたれ掛かり、片手でタバコを吸う。
生理の痛みと左手の欠損による苦しみが彼女を追い詰めていた。
(体力を回復しなければ生き延びることはできない)と思い、亡骸からアイテムを物色する。
ホコリっぽいバッグの中をあさってみると赤い液体が入った瓶を見つけた。
(飲んでも大丈夫だよな……)回復の薬とは書いてあり、古くても封は斬られていなかったので少し飲む。少しではあるが傷が癒え、体力が戻るのを感じるが眠気が来た。
「ちょっと疲れたな……」少しでも体力を回復させる為に少し眠ることにする。
この荒れ果てた亡骸からここにはトロールが来る事は無いと思い仮眠する。
「寝たのか?」亡骸の魔法使いは最後に何かを行おとしていた。
偶然にもブロンディの血液が魔法陣に付着し、魔法陣から光る目の黒い霧のような塊が現れ、彼女の身体の中に吸収される様に入った。
――夢の中、何かがアタシを呼ぶ声が聞こえ、
それは耳元でなければすぐそばでもなく――
(あんた、何者なんだよ? さっきからアタシを呼んでたのってアンタか?)
目を開けるとそこには黒い靄の姿をしたモンスターがぽつんと一匹いるだけだった。
ここが夢だと解ったのは先ほど斬られた足、腕共に健在な事だからだ。
切られた筈の手を握ったりしていると「やぁブロンディ。 チェスカって呼んだ方がよかったかな?」と声を掛けられた。
「アタシは……」
「まぁ、どっちでもいいさ。僕は自分で言うのも何だけど出来損ないの悪魔だ」
「出来損ない?」悪魔は自分の事を説明しだした。
悪魔はその能力や魔法を主体に色々な姿しているが自分は見つける事が出来ず、未だにこの姿のままだったと説明する。
「これ詠んでいいかな?」悪魔が持っていたのはアタシの頭の中にある魔術書だった。
知らない奴に読まれるのも嫌なので「いやだね」と拒否するが「えぇ~ケチ、そんなんだから」と子供みたいな返され方をした。
「世の中には2種類しかない。探求と、ただの覗き魔だ。お前の行動は覗き魔そのものだな。」
「覗き魔は少なくとも興味があるってことだよ。それとも、誰も自分に興味を持ってほしくないの?それはそれで寂しい話だ。少なくとも僕は君の魔法に対して敬意を払ってるし、了承をちゃんと得ようとしているから、的外れだね」
言い任されて、根負けしたアタシは読む事を許すしかなかった。
「やったね」と彼女の頭の中の魔術書を許可を得て喜んだ悪魔は魔導書を読んで「おぉ!?これはこれは」と傍から見たら何だか恥ずかしかった。
そんなこんなで読み終わると「やっと見つけた」といい何の事と思っていたら悪魔から提案を持ちかけれた。
「ねぇあたし達、合体しない?」