112話
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時は少し戻ってブロンディに助けられた少女はハーピーのアルエットによって無事に町へと送り届けられていた。
「あ、あのありがとうございます」と彼女はアルエットにお礼を言うが、彼女はめんどくさそうにどこか怒っている様だった。
「あんた、これからどうするのさ?」こんな怖い思いをしてどうするも、これから宿に帰ってここから出ていくつもりだった。
「べ、べつにどうするも……」言葉を言いかけた時、彼女の目は涙で溢れそうになっていた。
「あいつ…… 心配だから」と飛び立とうとした時、ふら付いて上手く飛べていなかった。
落ちる彼女を抱きかかえると、疲労に顔面が蒼白で魔力切れを起こしている症状が見て取れた。
ここまで乗せてくるのに魔力を使ったからだ。
わたしは彼女を抱え、ギルドに着くと彼女を壁を背に座らせ、職員を呼びに行く。
丁度、眼鏡をかけた女性に「すいません。 わたしを助けてくれたハーピーの方が」
事情を説明すると彼女は血相を変えてハーピーの所に駆けよっていた。
セシールと名乗る女性はわたしに声を掛け一緒について置くように指示され、救護室で寝かされているハーピーを見る事となった。
時よりうなされ、「ブロンディ」と何度も言っていた。わたしを助けてくれた彼女の事だ。この子は自分の身体よりも他人の事を考えていたのに、自分はどうだったのかを考えていた。
わたしは居てもたってもいれなくなり、気が付いたらギルドを駆け巡り、他の冒険者に助けを求めていた。
「お願いします。トロールの洞窟でわたしを助けてくれた人が……」何度も声を掛けても誰も見向きもしない。
むしろ「おいおい、お嬢さん、もう彼女は手遅れだよ。今頃、トロールの苗床になってる頃だぜ。 それよりも俺と……」 わたしは無我夢中で走った。誰かが助けてくれることを――
(違う、わたしが助けるんだ。その為にも!)その思いでギルドの周りで声を掛けるが誰も相手すらしてくれなかった。
「キャッ!?」 走るのに夢中になっていたわたしは人とぶつかって、目の前が揺れ、上手く立てなくなり、転ぶ瞬間、支えられるような感覚に見上げるとぶつかった彼女が支えてくれていた。
「ごめんなさい、大丈夫かしら?」身長が私より高く150セイルのわたしを優しく抱き支えていた。
肌の色と合わせた様な赤いラインが入った白い軽装の鎧。そして赤い腰布を付けた女性がそこに居た。まるでおとぎ話からそのまま出て来たような印象だ。
「貴女、急いでいたみたいだけどどうかしたの?」
わたしは一か八かこれまでの事を彼女に伝えた。
話している時には涙が溢れ、助けを求めた。
無茶なのはわかっていたけど、もうどうする事も出来ずにわらにもすがる思いだった。
「必ずお礼はします。お金は払うでも何なら身だ――」言いかけた所で彼女のひとさし指がそっとわたしの口をふさぐ。
「ちょっと、待っててくれるかしら?」彼女がそういうとギルドの中に入り、誰かと話した後なのか戻って来た彼女は快く了承してくれた。
「じゃあ、今から案内します」わたしは嬉しくて涙をぬぐい彼女に急いで出発する意図え、場所を伝える。
「ありがとう、場所はわかったわ。 後は私に任せてくれないかしら?」そう言って優しい笑顔を見せる。
一瞬、何を言ってるのかわからなかった。
あの危険な場所に女性が一人で行くなんてそれこそエサを渡しに行く様な物だ。
慌てて止めに入ると「大丈夫、私、強いわよ」と冒険者の証をチラリと見せてくれた。
それは滅多に見る事の出来ない上級の冒険者が持つことが許されるようなとてもクリアで真っ赤な色だった。
迅兎速と彼女が詠唱すると、透明感のある美しい光のウサギが現れ、彼女の周りを跳ねたと思えば、足に吸い込まれる様に憑依すると彼女は大きく跳躍し、シルバーブロンドの髪がなびかせ、そのままあっという間に風の様に走って行った。