110話
銃声が鳴り響く。
「グルぅぅぅオおぉぉぉン!」
「ぐはぁっ!」
気が付いた時には口から大量の血を流したトロールがアタシを投げ飛ばす瞬間。
地面を転がり、このまま起きるのも嫌になりそうだ。
(痛みは…… 生きている証拠) 袖で顔を拭い、身体のどこも痛みがいっぱいで溢れ、それを気力で押さえ、何とか立ち上がる。
流石のトロールも、口の中に6発もぶち込まれれば、ただでは済まないが、それでもトロールは立ち上がり、洞窟の壁が震える様な雄たけびを上げる。
銃弾に歯を砕かれ、口腔にダメージを与えても効果は無い。
自分の弱さに呆れかえるほどだった。
「しつこい奴は嫌われ…… るんだぞっとぉぉぉ!」
出血がジワジワとアタシの体力を奪う。
貰った薬の効果も薄れてきて、身体の痛みも戦いのダメージでなのかすらも、わからなくなってきた。
(チッ また一発撃てなかったのかよ。 魔力の制御がさっきから上手くいかない!)
弾倉には6発撃ち尽くしたはずなのに弾丸が残っていた。
さっきから魔法の不調が何度か見られ、その理由は分からずアタシは困惑する。
(まったく、泣けるぜ……)
巨体が大きな斧『バトルアックス』を持ち、そんなことはお構い無く、狙いを定め、アタシを両断する為に迫る。
「グォッン!」
両手で振り下ろされる斧は動きは単純で痛む身体でもなんとか避ける事が出来た。
(しまった!?) 不安定な地面に足を取られ、その大きな手でまるで羽虫を落とすように叩かれ、飛ばされた衝撃と全身を打ち付ける。
「うっ くはぁっ ハァ…… ハァッ……」
うっすらと目を開けると、ゆっくりと近づく巨体がアタシの方に向かってくるのが見えた。
地面に散らばる弾丸に手を伸ばし、急いで銃に込めるが手が震えて上手くいかない。
一瞬、トロールに目が行くと相手も無傷ではなく、血を吐く様子が見られ、傷は負っているのが確認できて少し安堵した。
その隙にアタシは弾を込め、立ち上がり銃を構えた瞬間、頭痛と倦怠感、身体の火照りと嘔気がアタシを襲う、それは薬の効果が切れた事を意味していた。
(い、今倒れるわけには……)
「ひぃっ来ないで!」
「グルゥゥゥオォォォォォ」
(生き残りか!? 助けないと!)
逃げ遅れた娘が大型のトロールに見つかり、アタシは咄嗟にトロールに弾丸を撃つ。
しかし弾丸はトロールから外れて空を切る。
慌ててトリガーを引くが弾丸が発射されることは無く。
助けを求める娘の表情に焦り、魔力のコントロールが上手くいかない。
「いややぁぁぁぁギュエッ」
掴まれた娘は首から肩にかけて食いちぎられ、流れ出る血と虚ろな瞳が助ける事の出来なかったアタシを恨めしく見ている気がした。
相手はアタシ達人間なんて苗床か食料としてしか見ていない。
これ見よがしに足から口に飲み込まれていく娘は首のところで嚙み切られ、彼女の目にアタシが映り込む。
恐怖は身体を支配し、多量に嘔吐する。
「ぐるるぅぅぅおぉぉ」
「ゲェ。 グゲェグゲッ」
「ひっ!」
勝利を確信したトロールの一声にぞろぞろと小型のトロールがアタシの周りに集まり、服を引きちぎろうと引っ張る。
そう簡単に服は破る事は出来ないが時間の問題でいずれは破られる。
抵抗する力も身体の痛みと数の前と独特な腐敗臭が鼻腔から不快感で力が上手く入らない。
「グゲェゲェ」
「放せ!――」
我先にとアタシの身体を嬲る姿はエサに群がるハウンドウルフのようで
ただ己の性の吐き出しを目的とした行為に吐き気がする。
あの時と同じように必死に両手で身体を隠すが、興奮したのかさっきとは比べ物にならない力で腕を押さえつけられ、胸元から服を破く音が聞こえる。
このままトロール達に身体を欲の捌け口として利用され、起こる事を想像し、抗う為に泣き叫ぶがむなしくも洞窟に響くだけだった。
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